3.0
志半ばで
人間の嘘を暴ける発見装置(嘘を吐くと生死に関わるレベルの頭痛に襲われる)を用いて、ネット配信のリアリティー番組みたいなのをやる、という話。
先に言っておくが、私は、人の嘘に対してはわりと甘い人間だと思う。
人間は、嘘を吐くものだし、誤解を恐れずに言えば、嘘というのは人間らしさのひとつでしかない、くらいに思っている。
よく芸能人が嘘を吐いてネット上で袋叩きにされるが、私にはさっぱり理解できない。
「いや、みんな嘘吐かないの?」と、不思議でしょうがない。
別に皮肉っているわけではなく、本当に、理解できないのだ。
私はそういう人間なので、嘘吐きが公開処刑されるようなこの漫画の安直な展開には、「こりゃねえわ」と思って、読むのをやめかけた。
しかし、嘘発見装置の仕組みのくだりで、ちょっと「あれ?」と思った。
やけに真面目に作ってんな、と。
で、もう少し、と思って読み進めて、見方が変わった。
これは、嘘吐きを断罪してスカッとしてやろう、という漫画ではなかった。
もっと志の高い漫画だった。
作者が描きたかったテーマは、ちょっと雑に言えば、大衆の愚かさや怖さ、ということになると思う。
また、根本の設定は決してリアルなものではないが、番組に対するネット上の反応や、あからさまに実在の芸能人・知識人・政治家をモデルにした登場人物たちの造形は、あまりにリアルで舌を巻いた。
特に、原発問題を巡る彼らのやりとりは「本当にあった」討論番組の風景にしか見えず、どんだけ研究してんだよ、と思った。
時代に乗っかった軽々しい作品の印象とは裏腹に、作者はとても真面目な人なのではないかと思う。
しかし、残念ながら、唐突な打ち切り。
続きのエピソード、読んでみたかった。
志半ばで倒れたことは、残念という他にない。
それこそ、大衆に、受け入れられなかったのかもしれない。
だとすれば、この漫画の打ち切りをもって、作者の描きたかったテーマが表現されたことになる。
皮肉な話だ。
- 5