5.0
祭りの前の怖さ
今のところ、だが。
幽霊も吸血鬼も出てこない。
狂った、というほど異常な人間も見当たらない。
何より、まだ、何も起きていない。
なのに、怖い。
平坦にすら見える日常が、怖い。
そこに、どうにも破綻の予感がして仕方がない。
何かとんでもなく不幸なことが、いずれ起こるに違いない、という予感的な怖さ。
不穏、という言葉が一番近いのか。
でも、それでも足りない。
これは、漫画でしか描けない種類の怖さである気がする。
この作者は、「漂流ネットカフェ」や「ハピネス」のような、現実の枠を超えたストーリーよりも、日常を舞台にする方が、本領発揮となるのではないかと感じた。
余談だが、群馬県出身の私にとっては、登場人物たちの群馬弁はすっと入ってくるし、郷愁を誘われるものであった。
ちょっと得をした気分である。
だが、その郷愁すら、うすら寒い恐怖を連れてくる。
何てことだ。
この怖さは、素晴らしい。
これからきっと、何かが起こるのだろう。
そうなったときにも、どうか素晴らしい漫画であってほしい。
「祭りは準備をしているときが一番楽しい」などというが、それを超える祭りがこの先にあることを願ってやまない。
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