3.0
ミギーの引用
ヒグマの描写はあくまで現実的な中での迫力があって、なかなかスリリングだった。
ただ、打ち切りっぽいラストには、ちょっとフラストレーションが残った。
もっと何かを伝えられる漫画になり得たと思うだけに。
最後、ヒロインがヒグマを始末するときに涙を流すことには賛否あるみたいだが、私は、ヒロインの気持ちがわかる。
私が半ば異常な動物好きであることとも無関係ではないだろうが、人間から見たらどんなに「残虐」なヒグマでも、私は自分の手で葬り去ることになったなら、悲しくてたまらないと思う。
私は撃つ。
自分が可愛いからだ。
ただ、撃つけれど、「ざまあ見ろ、この化け物が!」というふうには、なれないと思う。
「ごめんな」としか、言えないと思う。
そういう自分を偽善的だと思う。
しかし、変えられない。
あるB級パニックホラー映画の中で、サミュエル・L・ジャクソンが言っていた。
「自然は確かに過酷だが、人間の残酷さには勝てない」と。
あるいは、私の最も好きな漫画のひとつの中で、ミギーが言っていた。
ある日道で出会った生き物が死んで悲しいのは、人間が暇な動物だからだ、と。
ミギーは続けた。
心に暇のある生物、何と素晴らしい、と。
考えてみれば、私がヒグマに対して抱いた思いというのは、「寄生獣」で新一が後藤に対して抱いた思いと、全く同じだ。
というか、新一が、私の思いを完璧に代弁してくれて、ミギーがそれをフォローしてくれたのだ。
あの漫画は、やっぱり凄いね。
私は、いくら偽善的であろうとも、歪であろうとも、その暇は、失いたくないと思うのだが。
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