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作品レビュー
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341 - 350件目/全498件

  1. 評価:5.000 5.0

    原作への愛情

    今まで、「原作あり」の漫画には、ほとんど星五つをつけてこなかった。
    当たり前だが、漫画は、絵と、話だ。
    その「話」の部分がオリジナルでない作品に対して、最上級の評価をするというのは、正直どうなんだ、と思っていたからである。
    しかし、これは文句なしに例外だ。
    素晴らしい。

    京極堂シリーズの小説は、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」までは学生時代に読んだけれど、それ以降は、何しろ長すぎて、私の読むスタミナが落ちたこともあり、完全に脱落していた。
    未読の「鉄鼠」を漫画でクリアしてしまおう、という魂胆で読んだのだが、大当たりだった。
    小説版が喚起するイメージとあまりにぴったり合致したキャラクターたちがそこにいて、京極夏彦の小説を漫画化するならこれ以上は望めないだろう、という再現度の高い世界観がそこにはあった。

    それにしても、こんなの、よく漫画にしようと思ったな。
    「姑獲鳥」くらいならともかく、この「鉄鼠」は、難解な禅の世界、複雑極まりない仏教の宗派とその歴史がベースにあり、とても漫画として成立させられそうなストーリーではない。
    だいたい、次から次へ出てくる大量の坊主たちを、わかりやすく完璧に描き分けるだけでも大したものだ。

    正直、「原作あり」の漫画の中には、売れる題材を「利用」しているだけだわな、と感じられてしまうものもある。
    もちろん、商売だから、そういう面があって然るべきなのだけれど、原作のファンとしては、そんな思惑が透けて見えるような作品には、寂しさも感じる。
    だが、私が「鉄鼠」から感じたものは、全く違った。
    半端ではない原作への理解度の深さと、絶対にこの小説を再現してみせるのだという圧倒的な意志力が、紙面から立ち上っているようだった。

    この漫画を成立させたのは、当然、技術的な面もあるけれど、一番大きいのは、原作に対する漫画家の強烈な愛情、それ以外にはないと思う。
    その愛情の深さに、私は感動した。
    原作にとってこれほど幸福な漫画化の例を、私は他に知らない。

    • 17
  2. 評価:4.000 4.0

    未来なき強み、死に場所を探して

    ネタバレ レビューを表示する

    わずかな余命を宣告された孤独な老人が、ふとしたきっかけから家族の温かみを知るが、その家族が殺され…というところから始まる復讐劇。
    あまりに悲惨な設定に胸が痛むが、だからこそ、老人の凄惨な復讐を全面的に肯定できた面もある。

    また、「引っ張りすぎだろ」という漫画が巷に溢れる中、極めてコンパクトな尺に収めてある点も、個人的には評価ポイントだった。

    主人公はいたって普通の老人である。
    が、復讐というのは多かれ少なかれ、その後の自分の人生をも犠牲にするものだ。
    その意味では、老い先短い人間ほど、復讐に全てを賭けられる、と言えるかもしれない。

    「先のことなど考えない」は若者の専売特許であるように聞こえるが、状況的に考えれば、むしろそれは老人の強みであって、「未来なんかもうねえよ」というのは、ある意味、最強の開き直りである。

    この高齢社会にあって、漫画の読者層だって一定数は高齢化していくわけで、昔に比べて漫画というメディアの対象年齢が広がったことを考えるにつけても、今後、「未来なき強み」を持った老人を主人公に据えた漫画は、増えていくかもしれない。
    「少年」である読者が主人公の「少年」の活躍に胸を躍らせるように、「老人」の読者が主人公の「老人」の生きざまに胸を熱くする時代は、もうすぐそこに迫っているのかもしれない。
    あるいは、その時代はもう、始まっているのか。
    そのうち、「老人漫画」なんてジャンルが出来ちゃったりしてね。

    本作は、あり得ないくらい不幸な物語だが、皮肉なことに、一人の老人が「これ以外にない」というくらいの死に場所を見出だす物語でもある。
    どう死ぬかを見出だすことは、多分、どう生きるかを見出だすことと同じくらい、難しい。
    結末には、確かな救いがあった。
    私には、始めから、老人がどこにもない死に場所を探しているように見えたから。

    • 41
  3. 評価:4.000 4.0

    相棒は自分

    タイムスリップした先で過去の自分を相棒にする、という設定は斬新に感じた。
    「自分のことだからこそわかる」という仕組みを上手に利用した展開もあり、なかなか巧みだと思った。

    ストーリーは、過去の自分の冤罪を晴らすため、真犯人を追う、というのが基本線。
    異様な犯行、テンポのいいミスリード、二転三転する真相と、サイコサスペンスの映画のようで、気になる破綻もなく、かなり引き込まれた。

    ちょっと気になったのは台詞回しで、いくら漫画とはいえ、「そんなこと言うかいな」という部分がかなりあった。

    ただ、ストーリーが魅力的だったのは確かで、これだけのサスペンスをオリジナルで組み立てられる技量は、大したものだと思った。

    • 2
  4. 評価:4.000 4.0

    少女&推理

    普段、少女漫画を読まない。
    が、結構引き込まれて、一気に読んでしまった。

    おそらく、少女漫画の読者層にも、推理漫画の読者層にも受け入れられる、そういう意味では、とてもバランスのとれた作品。

    私のようなすれた人間は、正直、登場人物たちが眩しすぎてちょっと気後れしたし、物語の核心のところにはもう少しひりついたリアルなものがあってほしかったのだけれど、それは、この漫画に求めることとしては、間違っている気もする。

    • 1
  5. 評価:2.000 2.0

    自由と責任と金田一少年

    夫がろくな人間ではない、ということには何の異論もない。
    世の中にこういう夫婦が多くあって、苦しみながら何とか生活している妻が多くいることにも異論はない。
    その痛みが生半可なものではないことにも、本当に、異論はない。
    ただ、申し訳ないが、自分の不幸を他人のせいにする大人が、私はどうしても好きになれない。

    現代の日本社会には問題もたくさんあるが、素晴らしいこともいっぱいあって、そのひとつは、基本的には互いの自由意志に基づいて結婚ができる、ということだ。
    自分の生きたい相手と一生を共にする自由がある、ということだ。
    これほど素敵なことが他にあるか、と私は思う。
    少なくとも、江戸時代はこうはいかなかったのだ。

    それほど素晴らしい自由であるから、当然、そこには責任がつきまとう。
    結果的にどんな相手だったのであれ、どんな経緯や偽りがあったのであれ、選んだのは、自分であるはずだ。
    仮に、結婚してみたらアル中でヤク中のバイオレンス野郎だった、という場合ですら、選んだのは、自分なのだ。
    その重大な責任を置いといて、「結婚したら変わってしまった」とか、安直に被害者ヅラするのが、私は嫌いだ。

    ある人が「この人と幸せになりたい、じゃなくて、この人とだったら不幸になってもいい、っていうのが、愛なんじゃないかしら」と言ったそうだ。
    それは、極端かもしれないが、ある部分、完璧に正しい気もする。
    酷い人間だから別れたい、ではなくて、酷い人間であってもこの人がいい、というのが夫婦なのではないか、と私は思う。
    いや、そうではない、というならば、その結婚はやはり、失敗という他にない。
    ただし、大人がどんなに失敗を悔いようが、その大人の姿を見て生きる子どもがそこにいるということは、肝に銘じておかなくてはならない。

    中学生のときに読んだ『金田一少年の事件簿』で、金田一君が「自分の不幸を他人のせいにするのは、ガキだって言ってんだよ!」と言っていた。
    そのときから、私はずっとそう信じてきたし、これからも信じていきたい。
    ありがとう、金田一少年。
    漫画って、いいなあ。

    • 42
  6. 評価:4.000 4.0

    リアリティーと霊感と

    最初は、主人公の「霊感持ち」という設定はどうなんだろう、と思った。
    こういうエッセイ系の漫画は、かなりの部分、リアリティーが勝負なわけで、真偽はともかく、読者が「ホンマかいな」と感じる可能性がある設定は、ちょっと不利なんじゃないか、と。
    しかし、特殊清掃の仕事のリアリティーを描くのと同じタッチで、心霊現象についても淡々と描かれており、不思議と違和感はなかった。

    霊感が本当にあるのかもしれないし、穿った見方をすれば、主人公が抱える妄想か、この仕事に伴う精神疾患の可能性だってある。
    それはわからないが、主人公にとっては「霊」が「現実」なのであって、それを含めて、特殊清掃という仕事のリアリティーとして提示する、という描き方は、これはこれでありかな、と思った。

    • 71
  7. 評価:4.000 4.0

    生きてゆく者たちのホラー

    正直、今どき「ホラー漫画」のネタなんて、あらかた出尽くしているんじゃないかと思う。
    そもそもホラーなんて、幽霊が怖がらせるか、化け物が怖がらせるか、異常な人間が怖がらせるか、ざっくり言えばその三択で、時代がこれだけ進んでしまえば、その中のバリエーションだって新鮮なものは減ってゆく。
    これはもう、仕方がない。
    私はホラーが大好きだから、このジャンルには頑張ってほしいのだけれど、難しいよな、とも思う。

    それでも作品として何とか刺激を生もうとするから、ホラーの表現は、どんどん過激になってゆく。
    これももう、仕方がない。
    しかし、「過激であること」で勝負しようとするホラーの多さに、ちょっと食傷気味ではないだろうか。
    ホラーファンは、特にだ。

    そんな時代の中にあって、本作は、とても爽やかで、優しいホラー漫画だと感じた。
    「いかに怖い死者を描くか」ではなくて、「死者に向き合う生者をどう描くか」という漫画だと思った。
    それは、誤解を恐れずに言えば、少年漫画の立ち位置として、とても正しいと思う。

    冷たく聞こえるかもしれないが、死者は、死んで、終わりだ。
    けれど生きている人間は、死を乗り越えていかなくてはならない。
    どんなに辛くても悲しくても、いつか死者たちに手を引かれる日が来るまでは、今日を、明日を、行進していかなくてはならない。

    オカルトホラーでありながら、これはあくまで生きてゆく者たちの物語なのだと、タイトルからそれを堂々と表明したこの漫画が提示した、ホラー漫画らしからぬ温かさや優しさが、私はわりに好きであった。

    • 452
  8. 評価:2.000 2.0

    タイトルが…

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    内容はもう、「因・果・応・報!起・承・転・結!」と呪文でも唱えればそれで終わり、というような代物で、特筆すべき点もないが、大きな破綻もない。
    ただ、それをダラダラ引っ張らず、2話完結でサクッと読めるのは評価点。

    しかしまあ、タイトルはもう少し何とかならなかったのか。
    確かに本編に大したサプライズはないけれど、それにしたって、タイトルの段階で完全にネタバレしているのもどうかと思う。
    最後まで読んで、「ああ、やっぱりね」と感じるのと、「いや、知ってたし」と思うのでは、やはり、だいぶ違う気がする。

    • 8
  9. 評価:3.000 3.0

    現代版「まんが日本昔ばなし」

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    SNSを題材にした「転落モノ」の漫画は最近よくあるが、わりに楽しく読めた。

    寒々しいのは、この漫画に出てくる全員が醜い、ということだ。
    インスタで幸せをアピールする妻、ツイッターで愚痴る夫、そして、その両者を見世物として嘲笑う妻の友人たち。
    全員醜悪。
    北野武の「アウトレイジ」という映画は「全員悪人」がキャッチコピーだったが、全員悪人の方が、まだマシである。

    ①幸福を他人の尺度を借りてはかろうとすると、ろくなことはない。
    ②お互いをコントロールしようとするような夫婦は、幸せにはなれない。
    というわかりやすい教訓談であり、変な言い方だが、現代版「まんが日本昔ばなし」みたいな話だと思った。

    他人を極端にコントロールしたがる人間が私は怖いし、出来るだけ関わりたくない。
    だが、そういう種類の人間は一定の割合で必ず存在するし、出会ってしまったら、速やかに逃げるしかない。
    恐ろしいのは、この漫画の夫婦は離婚「しない」だろう、ということだ(少なくとも、しばらくは)。
    妻は、子犬を手のひらで転がしていたつもりが、いつの間にか、悪魔の手のひらの上で踊っていたのだ。
    そして、踊り続けるのだ。
    まあ、結婚する相手をコントロールしようなどとすると、バチがあたるぞ、ということで。

    • 526
  10. 評価:3.000 3.0

    「都市伝説」ってのは

    イメージ的には「笑ゥせぇるすまん」とか「Y氏の隣人」とか「アウターゾーン」の現代版、という感じ。
    一話完結でサクッと読める。
    よくも悪くもライトなホラーで、この手軽さを魅力と感じるか、物足りないと感じるかは、読み手によると思う。

    そもそもだが、「都市伝説」というのは「現代発祥の、根拠不明の噂話」だから、厳密にはこの漫画の話は「都市伝説」でも何でもない。
    そういう意味では、タイトルに違和感がある。
    しかし、皆が知っている「既存の」都市伝説をモチーフにした漫画はたくさんある中で、新規のストーリーを「都市伝説」として語るその姿勢には、要らん深読みをすれば、「ここから新しい伝説を作ってやるわよ」という意気が感じられないこともない。

    もしかしたら、数十年後、この漫画の中の話が「都市伝説」として語り継がれているのかもしれません……信じるか信じないかは、あなた次第です。

    なんてね。

    • 4
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