4.0
少年漫画としての正しさ
「自殺は殺_人の最悪の形である。なぜなら、後悔の余地を少しも残さないからである」と言った人がいる。
私はそれに賛同するし、基本的には自殺に反対である。
日本には「死者を悪く言うべきではない」という暗黙のルールがある。
だが、悲劇的な自殺、特に若者の自殺を本当に減らそうと思うならば、それを見直すべきだ。
いじめられて自殺を選ぶ人間が出る度に、皆が同情して、悲劇の主人公として祭り上げるような社会において、若者が「自殺はいけないよな」と思うだろうか。
もちろん、自殺に追いやるようないじめをする人間は悪い。
だが、自殺に関しては、何であれ、自殺した人間が一番悪い。
本当にそうなのか、ではなく、そういうことにした方がいい、と私は思う。
少なくとも、少年少女に対しては、そういうアナウンスをすべきだと思う。
だが実際、「いじめ→自殺→近しい人間による復讐」という漫画は多くあるが、「いや、そもそも自殺がいかんよ」という漫画は、なかなかない。
本作はその点、好感が持てた。
前提的に、自殺を過ちとして描いている。
その上で、一種のファンタジーとして、自殺した人間にチャンスを与える。
人生をやり直すチャンス、ではなく、自分の死によって不幸になる人間を救うチャンス、である。
この設定が、甘すぎず、絶望的すぎず、なかなかいい。
自分の死が何をもたらしたのか、生きている間に気づかなかったことは何なのか、そして、生きていればどんな可能性があったのか。
それを描くことで、「死ぬべきではなかった」という明確な後悔を描いている。
本来あり得ない「自殺したことの後悔」を、ファンタジーが可能にしている。
こんな世界でも自殺してはいけなかったのか、という主人公の叫びには、胸をえぐられる。
しかし、それでもやはり、死ぬべきではなかった、と。
死者の口を通じて送られたそのメッセージは、少年漫画として、とても正しいと私は思う。
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