3.0
志は買うけれど
原作からかなり改変がある。
明智のルックスなんかはまあ置いておくにせよ、「乱歩が描いた唯一の女賊」というのがひとつのアイデンティティーであるはずの「黒蜥蜴」は何と「男」だし、原作の「黒蜥蜴」には登場しない遠藤平吉(怪人二十面相だよこれ)が、多重人格の犯罪アドバイザーみたいな役割、つまり「羊たちの沈黙」のレクター博士みたいなポジションで登場する。
おいおい、ずいぶん攻めてきてるな、という印象である。
本作は、乱歩の原作の忠実な再現、などハナから志してはいない。
むしろ、現代的な文脈の中で、乱歩の作品を解体し、再構築しよう、というのが主眼なのだと思う。
正直、原作のある作品である以上、それだけで否定されても文句は言えないくらいのことをやってしまっているのだが、個人的に、その心意気は買いたいと思った。
しかしまあ、その「再構築」に相応しいだけの突出した魅力が表出しているかと言えばそれは甚だ疑問で、作品に漂うことになったのは微妙なBLっぽさだけのような気もする。
志の高さは評価したいものの、乱歩という圧倒的な原作を破壊してまで何かをなし得たのかというと、残念ながら、否、という他にない。
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