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未曾有の危機下で
ある日突然、「正解のボタンを押せば何も起きないが、不正解のボタンを押せば全国民が死ぬ」というボタンを悪魔に渡された男の話。
元ネタは多分、映画にもなった「運命のボタン」だろう。
押せば100万ドルもらえるが、この世界のどこかであなたの知らない誰が死ぬ、というアレである。
読み始めた頃は、どちらが正解なのかを知恵を絞って解き明かそうとするストーリーになるのかと思ったら、違った。
国民投票が行われただけで、謎解き的なくだりは全くなく、主人公は結局、ヤマ勘で選んだだけである。
話の落としどころとしては、悪魔の狙いが、危機下において人間の醜い本性を暴き出し、悪魔に変える、的なことだった、と。
それはネタとしては悪くないのだけれど、それ以外の見どころが乏しすぎる。
未曾有の危機下において、個人が、国家・社会が、世界が、どう動くのか。
そのリアリティーを描くことは、容易ではない(何しろ未曾有なわけですから)。
しかし、こういう大風呂敷を広げるなら、そこに挑まないと、というか、それ以外に焦点はないと言っても差し支えないストーリーだろう。
その掘り下げ、広がり、あまりに稚拙で雑だ、という印象は拭えなかった。
だいたい、白黒どっちのボタンにしますか、他に何の情報もないですけど、という状況で、国民投票って。
そんな阿呆な。
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