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作品レビュー
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31 - 40件目/全144件

  1. 評価:4.000 4.0

    道具は人間次第

    世にも奇妙な物語」路線の作品だが、個々のエピソードの完成度が高い。
    話の展開の「ひとひねり」が丁寧に作られていると感じた。
    ちょっとしたことなのだが、特にこのような連作短編形式の漫画は、そのちょっとした差が、大きな違いを生むのだろう。

    また、単に奇妙な世界を描くのではなく、「道具」を作品の真ん中に置くことで、「道具の価値や意義は結局、使う人間次第だ」という一貫したテーマが、綺麗に作品に乗っている。
    「道具は使っても、道具に使われてはいけない」という教訓は、次から次へと便利すぎる道具が産み出される現代社会において、結果的にだが、辛口の警鐘にもなっている気がする。

    • 15
  2. 評価:4.000 4.0

    虚実の振れ幅

    自らが「都市伝説」になる、という妄念に憑りつかれた男の話。
    私がどうかしているのかもしれないが、主人公の気持ちは、何となくわかる。
    私も都市伝説になりたーい。

    ただまあ、主人公の狂気のリアリティーにはそれほど説得力がなく、はっきり言って、客観的に見れば嘘臭いことこの上ない話なのだが、何となく勢いで押しきられてしまった感がある。
    そういう意味では、力のある表現だったのだろう。

    これは原作がそうなのだろうが、現実と妄想が虚実ないまぜになった作品世界を、とても上手に構築していると感じた。
    読み終えて、いったいどこまでが現実だったのだろう、と考え出すと、その振れ幅は0から100まであるような気さえしてきて、それがちょっと、怖かった。
    「現実か妄想か」みたいな作品はそれほど珍しくはないけれど、ここまで異様な振れ幅を持った作品というのは、あまりない気がする。

    ラストの返し技もなかなか上手く決まっていて、短くて良質なものを読んだな、という気分に浸れた。

    • 14
  3. 評価:4.000 4.0

    ジャンル変貌の妙技

    スタートで「こういう話かな」と思っていたのを、いい意味で、かなり裏切られた。
    「フロム・ダスク・ティル・ドーン」というジャンル崩壊映画があるが、それをちょっと思い出した。
    この手の作品は、ジャンルの切り替えが上手く決まらないと「何やねん」という悲惨な出来になるが、なかなかバシッと決まっていたと思う。

    また、基本的にはリアリティーもクソもない話だが、主人公のキモい男の「最底辺だけは嫌だ」という信条は、その是非はともかく、現代の価値観としてなかなかリアリティーがあったし、何より、漫画の主人公の価値観として新しさを感じた。
    個人的には、「僕たちがやりました」のトビオの「普通でいい」という価値観と双璧である。

    そして、この魅力もクソもない主人公でどうすんだよと思いきや、人間に対する観察眼の鋭さや、常人離れした嗅覚という設定を巧みに生かして、意外とカッコよく見せた手腕は、見事と言う他にない。

    惜しむらくは、まあ、表紙がひどい。

    • 14
  4. 評価:4.000 4.0

    今どきの私たちは

    今までSNSを題材にした漫画はいくつか読んだが、全てつまらなかった。
    この漫画だけ、例外になった。
    今どきの日常の切り取り方が、丁寧で、ささやかだけどリアルで、好感を持った。

    電子機器が私たちの恋愛に与えた影響なんて、言い出せばきりがなくて、例えば、デートの約束、ケータイで楽勝。
    昔は、中学生の頃なんて、相手の家に電話して、お父さんが出て、震えたりしたものだ。
    文明万歳。
    あー、手軽な現代。

    けれど、そういう手軽さの裏で。

    二度と会えなくなったはずの誰か、例えば昔の恋人が、今、どこにいて、何をしているのか。
    そもそも生きているのか。
    かつての私たちには、それを知る術は、なかった。
    一番よく知っていたはずの誰かが、不意に、自分の人生から消滅する。
    別れる、ってのは、そういうことだった。
    一昔前までは、だ。
    今や、時代は変わった。
    知ろうと思えば、知れてしまうことが、結構ある。
    二度と会えなくなったはずの誰かの姿は、意外と手軽に液晶の向こうにあったりする。

    はたして、手軽になったのか、ややこしくなったのか、その両方なのか。
    その混沌とした電子の波の中を、今どきの私たちは、今日も漂う。
    ときどき、恋とかしながら。
    二度と会えないあの人の名前を、ググったりしながら。

    • 12
  5. 評価:4.000 4.0

    多彩な怖さ

    今の時代に読むと古風な絵柄だが、迫力があり、引き込まれた。

    自殺を試みた少女の前に突如現れたヒーローとの逃避行、という「いかにも少女漫画」的な設定ではあるが、微妙なところでラブロマンスに走らなかった点に好感を持った。
    そのおかげもあり、甘すぎず、それでいて希望を与え得る話にもなっていて、特に少年少女を対象とした漫画ということを考慮すると、私は好きであった。

    ……というレビューを表題作のみ読んで書いたのだが、「黒い天使」を読んで全く印象が変わった。
    代理ミュンヒハウゼン症候群については一応知っていたので、「ふんふん」と読んでいたが、完全にやられた。
    めちゃくちゃ怖い。
    初めての方は、是非「黒い天使」を読んでほしい。

    • 12
  6. 評価:4.000 4.0

    切れた糸

    ネタバレ レビューを表示する

    おぞましい世界観は非常に丁寧に作り込まれていた。
    不穏でおどろおどろしい土着的な日本の「村」の舞台を、ダークファンタジーのフォーマットに綺麗に落とし込んでいると感じた。
    それだけに、終盤の失速と唐突な閉幕はひどく残念だ。
    伏線も回収されぬまま、いくつもの謎を残したまま。
    作品は途端に力を失い、地面に崩れ落ちてしまった。
    まるで、糸の切れた操り人形のように。

    • 13
  7. 評価:4.000 4.0

    毒をもって毒を制す

    学校にはびこる様々な問題を、一見普通の教頭にしか見えない主人公が、ギリギリの(というか完全にアウトの)手段で解決していくストーリー。

    基本的にはシリアスな路線だが、教頭のキャラのギャップが強烈に過ぎ、見方によってはギャグ、という結構きわどいところを攻めていて、なかなか面白い。
    だいたい、「地獄の教頭」って。
    「地獄の門」とか「地獄の黙示録」とかならあれだけど、「地獄の教頭」って。
    それはもう、「地獄先生ぬ~べ~」のノリに近いだろう。

    一説によると、学校の教師が一番やりたくないポジションが「教頭」らしい。
    それくらい、微妙で、わりに合わない役職なのだろう。
    そんなポジションを敢えて主役にもってきたところにも、本作の面白味があると思う。

    • 11
  8. 評価:4.000 4.0

    感情のリアリティー

    個人的には、絵は全く気にならなかった。
    そもそも絵の上手い・下手を論じられる立場に私はいないが、その漫画に「合う絵・合わない絵」は感じることがある。
    この作品の場合、少なくとも「合わない絵」ではない気がした。

    私があまり読まない種類の漫画だが、結構強烈に引き込まれた。
    ストーリーのリアリティーは別にして、主人公の抱える不安や自己嫌悪や、「ここではない世界」に対する漠然とした切望や、木島に対する微妙な感情や、それを「打算」と言い切る潔さや悲しさは、とてもリアルに感じた。

    岡崎京子の漫画でワニを飼う話があったと思うけど、カメに餌をやる本作の主人公が「岡崎」なのは、オマージュなのかな。

    あと、タイトルが素晴らしい。

    • 11
  9. 評価:4.000 4.0

    原作との相性

    ネタバレ レビューを表示する

    この原作者とこの漫画家のコンビは、「昨日公園」と同じだが、相性はばっちりだと思った。
    原作小説の持つノスタルジックな雰囲気を、上手く再現できていると感じる。

    大人が振り返る子ども時代の痛みや悲しみを抒情的に綴っている点は「昨日公園」に通じるが、「昨日公園」がヒューマンな手触りだったのに対して、本作のテイストはホラー寄りである。
    子ども時代の「あれは何だったんだろう」的な追憶の恐怖表現はなかなか鮮やかで、このあたり、原作者の面目躍如かと思われる。
    もちろん、繰り返し、それを漫画のフォーマットに落とし込んだ作画も素晴らしい。

    ただし、オチの部分は、正直イマイチかと思う。
    過去の恐怖体験が現在を侵食する、というのは悪くないが、狂気の所在を主人公自身に回収するのは、サプライズこそあったものの、ちょっと強引に過ぎたような気もする。

    • 10
  10. 評価:4.000 4.0

    それはきっと、取り戻せない

    夫婦生活の有無がクローズアップされているけれど、それは、この漫画が提示している問題の一部でしかない気がする。
    これは結局、「ある時期」を過ぎた大人が、どう生きていこうか、あるいは、夫婦として、どう暮らしていこうか、という話だと思った。

    「幸せかもしれないけれど、何か満たされない」という微妙な渇き。
    ないものねだりのようでもあり、でも、笑い飛ばすこともできない、「こんなのじゃないんだ」という違和感。
    そんな、大人の感情の機微みたいなものが、なかなか巧みに表現されていた。
    まあ、わかる。
    私だけではなくて、多分、多くの大人の読者が、まあ、わかる、と感じたのではなかろうか。
    「自分の人生は本当にこれでいいのだろうか」というような不穏で切ない大人の感傷みたいなものは、ある程度の年月を生きてきた大人であれば、程度の差こそあれ、持つものだと思う。

    ただ、主人公の女性に対して決定的に賛成できないのは、「あの頃」あったものを「取り戻したい」という願望である。

    それはきっと、取り戻せない。

    というか、取り戻せないからこそ、価値のあるものだったのだし、全ての価値あるものは、本来、そういうことなのではなかろうか。

    どんなに悲しくても惨めでも、取り戻したりは出来ないから、だからまた、二人で、新しい何かを作ろうね、と。
    あの頃と同じ遊び方はもう出来ないけれど、あの頃は出来なかったような遊び方を、いつまでも一緒に探そうね、と。
    私は、夫婦って、そういうものだと思うのだけれど。

    • 10
全ての内容:★★★★☆ 31 - 40件目/全144件

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