5.0
良い話です。
これは、寓話だと思う。
これはただ、
一組の夫婦の長い年月の愛の移り変わりを短縮的に見せた、寓話。
妻のその美しい容姿を愛する夫。
美貌が損なわれ始め、
愛は薄れゆき、
浮気に走る夫、
そしてそれを怨み、嫉妬し、また愛を乞う故に若さと美貌を追い求めてしまう妻、
男と女のどうしようもない性。
そういう性を全て曝け出し、呪い憎み、全ての膿を出し切って、
その醜さすらも愛し、認めた時にこそ、
人の愛情は報われる。
愛される事を一切求めずに、
愛している喜びと、相手もまた、愛してくれている奇跡に幸福を感じられる魂が、
何よりも美しいのですよ、
と伝える寓話。
整形の失敗の話や、その治り方などは、寓話なので、そこを作り込む必要など、このお話にはない。
現代を舞台にしてるだけ。
多分舞台は何処だっていいのでしょう。
作者の表現したい事を効率良く見せる為に必要だったから、現代なだけ。
きっと、読んだ後、
ホッとした様な…
喜ばしい様な…
爽やかな様な…
炭酸が喉を通り過ぎた後の様な…
色んな物が複雑に混じる、そんな気持ちになるお話です。
このお話には他に「チガヤ編」と言うあよの生き別れの妹のお話がある様です。
もう一人メグリという妹もいる様なので、
後2編はあるのかと思います。
どちらも楽しみです。
あよは声を失い、
チガヤは視力を失った様なので、
メグリは聴力を失うのかもしれないな〜とちょっと予想などもしつつ、
この「醜さと夫婦」という材料で、どんな3種の寓話を聴かせてもらえるのか、
ベットに入った子供の様な気持ちで読みたいと思います。
本当に一見の価値ありの良作でした。
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