4.0
崩れゆく私たち
原作の利なのだろうが、現実的な枠をきちんと守った中でのサスペンスフルな語り口には安定感があり、ハラハラしながら読み進めた。
交錯する時系列の演出も、上手く決まっていたと思う。
夢や憧れといったポジティブな地点から始まったはずの日常が、いつの間にかほつれ、ほころび、崩れてゆく。
その様には、ゾクゾクした。
何が怖いって、本質的には、誰が「悪い」というわけでもない、ということだ。
登場人物の誰もが少しずつ悪を抱えているが、それは結局、私たちの誰もが大抵は内包しているレベルのものだ。
それでも、日々は転がり落ちてゆく。
高級住宅街の坂道を自転車で下ってゆくように。
私たちの日常が崩れゆくときというのは、そんなものなのかもしれない。
あー怖い。
ただ、ラストだけは、ちょっとパンチが弱い気もした。
しかし、日常の破綻、という本作の色合いを考えると、これでちょうどいいのかもしれない。
- 3