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しなのんちのいくる
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  1. 評価:4.000 4.0

    消えた風景を

    爆笑するような種類の面白さではなく、懐かしさに心暖まる、という感じのエッセイ漫画。
    若い読者が読んでもいいが、描かれている時代(昭和)からすると、本来の対象年齢はかなり高い(ドンピシャなのは四十代後半くらいか)。
    イメージとしては「ちびまる子ちゃん」に通じるものがあるが、男性読者は、本作の方が共感ポイントは多いかもしれない。

    すごいな、と思うのは、風景の再現度だ。
    これには、二重の意味がある。

    ひとつは、昭和という時代の風景の再現。
    当たり前だが、昭和の風景というのは、今はもう、消えたものだ。
    家屋や町並みや生活用品という意味合いでの風景もそうだし、人間の姿という意味でもそうだ。
    それを、漫画作品のフォーマットの中に的確な精度で落とし込むのは、なかなか出来ることではない。

    もうひとつは、「あの頃の僕ら」という風景の再現度である。
    誰にでも子ども時代はあるし、誰にでも思い出はあるが、特別なイベントではなく、「あの頃」の普通の日々について語ることで、それを作品として成立させるなんてね、無理よ。
    それを可能にするには、普通の日々を普通ではない角度から見つめられる目がなければならない。
    それが遠い過去のものとなれば、単なる記憶力とは別の、子ども時代の記憶を自ら再構築する才覚がなければならない。

    長閑でノスタルジックなエッセイ漫画として、失われた風景を描出することに成功した良作だと思う。

    by roka
    • 2
全ての内容:★★★★☆ 1 - 1件目/全1件

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