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作品レビュー
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81 - 90件目/全92件

  1. 評価:4.000 4.0

    悲しい欲望

    世の中にはそれはもう、ありとあらゆる種類の性的嗜好がある。
    私自身は性的には多分ノーマルで、面白くも何ともない人間だが、達成するのが極めて困難な性的嗜好を持って生まれなくて、本当によかったと思いながら生きている。
    だって、例えばだが、相手が未成年じゃないと興奮しないとか、相手を殺さないと満足できないとか、そんな運命のもとに生まれてしまったら、いくら何でも人生がハードモードすぎる。
    あーよかった。

    さて、この漫画の主人公は、自分が殺_されることに対して性的興奮を覚える「オートアサシノフィリア」という嗜好を持っている。
    これはもう、性的嗜好としては最大級に悲劇的なそれであり、ある意味、究極でもある。
    何しろ、その欲求が真に満たされるチャンスは、ただの一度しかないからだ。
    我々は、死んだら終わりですから。

    主人公は、それを達成すべく、私のような一般ピーポーの理解を遥かに超えて、あり得ないレベルの労力を費やし、努力を重ねる。
    それは、単純なものさしではかってしまえば、「異常」の一言で切って捨てられる種類の執着だ。
    だが私は、主人公を軽蔑することも、嫌悪することも、上手く出来なかった。

    誇張抜きで、私は性的嗜好を「運命」だと思っている。
    それは、生活や性格を変えることよりもずっと難しい、というか、ほとんど修正不可能なものだと思う。
    現代の社会生活と相容れない種類の性的欲求は、逃れることも抗うこともかなわない、残酷な足枷だ。
    私は「たまたま」そのような足枷を持たずに生まれ育ったに過ぎない。

    私が主人公に対して感じたのは、違和感や不快感ではなく、自らの欲望に殉じようという潔さと、そんなふうにしか生きられない悲しみだった。

    それだけに、終盤の展開はちょっと残念だった。
    はたから見たらどんなに異様でも不毛でも、主人公を死なせてやりたかった。
    また、女子高生の多重人格という設定は、ちょっとぶっ飛びすぎていて、いささか冷めてしまった。

    • 7
  2. 評価:2.000 2.0

    設定の面白さ、底の浅さ

    一言で表すなら、「もったいない」漫画だと思った。

    「消したい感情を消せる」能力、という設定は面白いと思った。
    ネガティブな感情、例えば恐怖だとか怒りだとか嫉妬だとか、そんなもの、感じている最中は誰だっていい気はしない。
    だが、ネガティブな感情やコンプレックスが人間のモチベーションになり得るのはよくある話だ。
    だいたい、負の感情だって欠くことの出来ない私たちの一部なのであって、その一部分だけを都合よく消去しようとすれば、人間はあっさり破綻するだろう。
    そのあたりを、どう広げて、掘り下げて、ストーリーに仕立てるのか、というのが、私のこの漫画に対する期待だった。

    しかし、まあーその掘り下げが浅いの何の。
    「恐怖を失ったら、車に轢かれた」
    「怒りを失ったら、にやにやした何か気持ち悪い人になった」
    「嫉妬を失ったら、アイドルをやる気がなくなった挙げ句、狂信的なファンにバットで殴られた」
    おいおい。
    いくら何でも浅すぎる。

    余談だか、昔ジャンプに「マインドアサシン」という漫画があった。
    主人公は医者で、相手が「消したい記憶」を消せる、という能力を持つ。
    設定がちょっと似ているが、はっきり言って、「マインドアサシン」の方が百倍面白いので、興味のある方は、是非どうぞ。

    • 80
  3. 評価:5.000 5.0

    これが愛じゃなくて、何なのだ

    実際の「福井火葬場心中事件」を基にした、いい意味で、極めて現代的な漫画。
    心が震える傑作である。

    認知症、老老介護、児童虐待、という現代社会のヘビーな諸問題を題材にしており、ある意味では悲壮な物語であるけれど、シンプルでポップな絵柄が、絶妙なバランスを生んでいる。
    これは、漫画だから出来る素晴らしい表現のひとつだと思う。

    興味深かったのは、この漫画で描かれる、日本の古い共同体の姿である。
    閉鎖的な限界集落で、八つ墓村的というか、今の時代、こんな共同体に魅力を感じる人間はまずいないし、私自身、否定的なイメージをずっと持っていた。
    しかし、主人公の妻が犯した罪を、地域の住民皆が協力して隠し通そうとする姿には、胸が熱くなった。
    悪く言えば、そういう隠蔽体質というのは、日本の古い共同体のネガティブな側面そのものなのだけれど、それを真逆から描いてみせたような抜群の切り返しには、思わず唸った。

    生き方を選ぶということは、ある意味で、死に方を選ぶことと等価であると私は思う。
    これは、老夫婦が死に方を選択する物語であり、そして、究極のラブストーリーでもある。
    結末は、悲しくて悲しくて、でも、これ以外もこれ以上もきっとないんだ、と思って、涙が溢れた。
    だって、これが愛じゃなくて、何なのだ。

    • 13
  4. 評価:4.000 4.0

    未来なき強み、死に場所を探して

    わずかな余命を宣告された孤独な老人が、ふとしたきっかけから家族の温かみを知るが、その家族が殺され…というところから始まる復讐劇。
    あまりに悲惨な設定に胸が痛むが、だからこそ、老人の凄惨な復讐を全面的に肯定できた面もある。

    また、「引っ張りすぎだろ」という漫画が巷に溢れる中、極めてコンパクトな尺に収めてある点も、個人的には評価ポイントだった。

    主人公はいたって普通の老人である。
    が、復讐というのは多かれ少なかれ、その後の自分の人生をも犠牲にするものだ。
    その意味では、老い先短い人間ほど、復讐に全てを賭けられる、と言えるかもしれない。

    「先のことなど考えない」は若者の専売特許であるように聞こえるが、状況的に考えれば、むしろそれは老人の強みであって、「未来なんかもうねえよ」というのは、ある意味、最強の開き直りである。

    この高齢社会にあって、漫画の読者層だって一定数は高齢化していくわけで、昔に比べて漫画というメディアの対象年齢が広がったことを考えるにつけても、今後、「未来なき強み」を持った老人を主人公に据えた漫画は、増えていくかもしれない。
    「少年」である読者が主人公の「少年」の活躍に胸を躍らせるように、「老人」の読者が主人公の「老人」の生きざまに胸を熱くする時代は、もうすぐそこに迫っているのかもしれない。
    あるいは、その時代はもう、始まっているのか。
    そのうち、「老人漫画」なんてジャンルが出来ちゃったりしてね。

    本作は、あり得ないくらい不幸な物語だが、皮肉なことに、一人の老人が「これ以外にない」というくらいの死に場所を見出だす物語でもある。
    どう死ぬかを見出だすことは、多分、どう生きるかを見出だすことと同じくらい、難しい。
    結末には、確かな救いがあった。
    私には、始めから、老人がどこにもない死に場所を探しているように見えたから。

    • 41
  5. 評価:2.000 2.0

    タイトルが…

    内容はもう、「因・果・応・報!起・承・転・結!」と呪文でも唱えればそれで終わり、というような代物で、特筆すべき点もないが、大きな破綻もない。
    ただ、それをダラダラ引っ張らず、2話完結でサクッと読めるのは評価点。

    しかしまあ、タイトルはもう少し何とかならなかったのか。
    確かに本編に大したサプライズはないけれど、それにしたって、タイトルの段階で完全にネタバレしているのもどうかと思う。
    最後まで読んで、「ああ、やっぱりね」と感じるのと、「いや、知ってたし」と思うのでは、やはり、だいぶ違う気がする。

    • 8
  6. 評価:3.000 3.0

    現代版「まんが日本昔ばなし」

    SNSを題材にした「転落モノ」の漫画は最近よくあるが、わりに楽しく読めた。

    寒々しいのは、この漫画に出てくる全員が醜い、ということだ。
    インスタで幸せをアピールする妻、ツイッターで愚痴る夫、そして、その両者を見世物として嘲笑う妻の友人たち。
    全員醜悪。
    北野武の「アウトレイジ」という映画は「全員悪人」がキャッチコピーだったが、全員悪人の方が、まだマシである。

    ①幸福を他人の尺度を借りてはかろうとすると、ろくなことはない。
    ②お互いをコントロールしようとするような夫婦は、幸せにはなれない。
    というわかりやすい教訓談であり、変な言い方だが、現代版「まんが日本昔ばなし」みたいな話だと思った。

    他人を極端にコントロールしたがる人間が私は怖いし、出来るだけ関わりたくない。
    だが、そういう種類の人間は一定の割合で必ず存在するし、出会ってしまったら、速やかに逃げるしかない。
    恐ろしいのは、この漫画の夫婦は離婚「しない」だろう、ということだ(少なくとも、しばらくは)。
    妻は、子犬を手のひらで転がしていたつもりが、いつの間にか、悪魔の手のひらの上で踊っていたのだ。
    そして、踊り続けるのだ。
    まあ、結婚する相手をコントロールしようなどとすると、バチがあたるぞ、ということで。

    • 526
  7. 評価:3.000 3.0

    ラストが…

    一気に読んでしまった。
    読ませるパワーはかなり強いと思う。

    あくまで「大人」のための恋愛漫画。
    自分はそこまでひねくれているつもりもないが、さすがに十代のキラキラした恋愛漫画には、「いや、勘弁して下さい」となってしまう。
    きっと眩し過ぎるのだ、私が汚れてしまったが故に。

    その点、この漫画は、恋愛にまつわる「綺麗事」を徹底的に排除したような作品で、かといって殺伐とすることもなく、気持ちよく読めた。
    そういうバランスというのは、難しいし、貴重である。

    それだけに、ラストは残念だ。
    何というか、「大人」として恋愛することにしっかり向き合う漫画だと思っていたのだけれど、ラストはそれを裏切られたような気がしてしまった。
    もっとも、この漫画は、「おぼつかない恋愛と揺るぎない友情」を描いてもいるわけで、そういう意味では、相応しいラストなのかもしれないのだけれど…。

    • 14
  8. 評価:4.000 4.0

    「子ども」の功罪

    三億円事件の真相には諸説あるが、「過激派を一掃するための国家規模の陰謀」というのは、さすがにやりすぎの感が強く、説得力には欠ける、と個人的には思う。
    まあ、それはいい。

    基本は少年少女の逃亡劇で、個々のキャラクターにそれぞれカラーが出ていて、ハラハラしながら楽しめた。
    時系列を操作するのはこの作者の得意技なのか、「クダンノゴトシ」でもそうだったが、交錯する現在と過去が、よりいっそうスリルを高めていると感じた。

    陰謀渦巻く三億円事件という「大きな」ストーリー。
    その主人公には、普通にいけば、老練な刑事や探偵が相応しいように思えるが、敢えて「小さな」主人公を設定している。
    それによって、多少の無理は出てしまっているが、少年漫画的な盛り上がりを獲得しているとも思う。

    ただ、個人的にどうにもひっかかるのが、二点。
    ひとつは、夏美の関口に対する母性の覚醒。
    高校一年だろ。
    いくらなんでも無理がある。
    もうひとつは、ラストの大和の選択。
    そこで、死のうとするか?
    倫理的に、とかではなく、物語的に、どうにも腑に落ちなかった。
    この二点は、どちらも「子ども」をメインの登場人物にした弊害だと思う。
    夏美の件はもちろん、大和の件も、例えば主人公が「熱心に事件を追うが、どこか死に場所を探しているようにも見える、悲しげな目をした刑事」だったら…まあ、それじゃ全然違う話になっちゃうんだけど。

    • 3
  9. 評価:4.000 4.0

    彼女が「普通」に生きるまで

    「ヒル」という存在の設定は面白かった。
    ただ、「ヒル」がゴロゴロいたり、仲間を形成していたり、という設定には、ちょっと冷めた。
    「なさそうだけど、あるかも」という際どいラインを完全にオーバーして、「いや、ないだろ」に行ってしまった。
    もっとも、他にも「ヒル」がいることにしないと、どう話を展開させるかは難しいけれど。

    「ヒル」という存在は、深読みしようとすれば、居場所のない若者とか、社会的なマイノリティーとか、色んなメタファーがよぎるけれど、この漫画は、シンプルに、一人の女の子が「普通に生きる」覚悟を決める話でもある。
    「僕たちがやりました」もそうだけれど、「普通に生きる」ことの難しさというのは、現代のひとつのテーマなのかもしれない。

    特殊な方法で生き抜く、客観的にはかなり不気味な存在を扱いながら、主人公の成長物語としては非常に爽やかであり、その微妙なバランスは悪くなかった。

    酷評されているラストだが、物語は断ち切られ、それでも日々は続いてゆく、というような印象で、個人的には好きであった。

    • 51
  10. 評価:5.000 5.0

    時代性と普遍性

    ネット配信を利用した愉快犯による劇場型の犯行、という極めて現代的な舞台装置だが、核のところにあったのは、時代性などとは無縁の、人間の普遍的な強さや美しさみたいなものだった。
    時代に乗っかって始まり、時代に左右されない核心にたどり着く。
    その返し技があまりに綺麗に決まりすぎていて、ちょっとムカつくほど感心した。

    • 12
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