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作品レビュー
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11 - 20件目/全144件

  1. 評価:4.000 4.0

    レビューの是非

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    何も知らずに読みたかった。
    が、私は頭から「娘、または娘と夫の両方が死んでいるのでは」と疑いながら読み進めた。
    夫死亡説は離婚届のくだりでどうやらなさそうだったので、そうなると、娘一択。
    そういう目線で読んでいれば、必然的に、消費されない朝食とか、溶けていくだけのクリームソーダとか、主人公を奇異の目で見る周囲の様子とか、伏線は目につく。
    結果、よく出来ているな、という一定の感心はしたけれど、サプライズは得られなかった。

    娘の死に気づいたのは、私が鋭いからではなく、他のレビューによってである。
    さすがに、ネタバレありのレビューの中身は読まなかったが、レビューのタイトルなどで皆が「6話が」「6話が」と書いていれば、どうしても目に入るし、「嗚呼、これは6話でどんでん返しがある漫画なのね」という先入観は、どうしても出来てしまう。

    漫画、というか、作品におけるサプライズには、大きく二種類ある。

    ひとつは、作品に「どんでん返しがある」という前提で見ても、成立するサプライズだ。
    推理小説もサスペンス映画も、基本のサプライズというのは、こっちだ。
    読者や観客は、作品が自分たちを騙そうとしているな、という前提で見るし、あとは読者・観客の想定をどう裏切れるか、という勝負になるわけだ。

    もうひとつは、「そもそもどんでん返しがある作品だと思っていなかった」という種類のサプライズだ。
    推理モノやサスペンスとは違って、「えっ、そういう話だと思っていなかった」というサプライズである。

    本作は完全に、後者だ。

    そして重要なのは、後者の場合、「どんでん返しがある」ということ自体がネタバレなのだ、ということだ。
    問題はそのどんでん返しの内容ではない。
    どんでん返しがあると知ってしまった瞬間、サプライズのかなりの部分が失われるのである。

    今まで結構な数のレビューを書いてきて、他のレビューに恨み言を言うようなことはほとんどなかったのだけれど、今回はちょっと、残念だった。

    まあ、本作の場合、そのどんでん返しは「オチ」ではなく、言わばスタートのようなものなので、今後が楽しみなことに変わりはないのだが。

    • 60
  2. 評価:4.000 4.0

    罪と許しと無償のサムシング

    まず、元受刑者の造形がいい。
    この漫画は、不運にも犯罪者になってしまった善人と、その社会復帰を支える保護司の人情物語、ではない。
    元受刑者は、極悪人ではないにせよ、読者が全面的に同情できるような悲劇のヒーローでもない。
    微妙だ。
    気の毒ではあるが、正直、「そんなザマやから犯罪者になんねん」と言いたくなる面もあり、その微妙さが、罪と、それを許すことの難しさや複雑さを、私たちに問いかける。

    また、この漫画で、保護司は無償なのだと知り、愕然とした。
    はっきり言って、私なんか、百万回生まれ変わっても、そんな仕事を無償ではやらない。
    そんな大切な仕事がボランティアに依存しているとは、知識もない中での感情論で申し訳ないが、国家のシステムとしてトチ狂っているとしか思えない。

    ただ、主人公の「無償なのにやる、ではなく、無償だからやる」のだ、という主張には、ハッとした。
    読んだところまで(13話)ではまだ明らかになっていないが、この主人公自身もおそらく、何かの罪を抱えているのではなかろうか。
    それが、社会的に裁かれる罪かどうかは別にして。

    「無償なのに」ではなく、「無償だから」。
    そういう生き方も、あるいは、償い方も、あるのだろう。
    繰り返し、私は百万回生まれ変わっても、そんな生き方は出来そうにないのだけれど。

    • 57
  3. 評価:4.000 4.0

    カルトを巡るあれこれ

    この世で最も嫌いなもののひとつがカルト宗教である。
    だからもう、主人公がそれに立ち向かうという設定だけで、私は全力で応援してしまう。
    妻をカルト教団から取り戻すなんてもう、感情移入の度合いが激しくなりすぎてヤバい。

    本作の主人公は、一見すると何かイマイチやる気のない感じが、逆にリアリティーがあってよかった。
    たぎるほどの正義感とか、燃え盛る妻への愛とか、そういうものをストレートには描いておらず、かなり抑制した描き方をしながら、その根っこには譲れないものがちゃんとあるのだ、ということが伝わる。
    私はそういう表現というのが好きだし、特に「大人」に向けての作品は、そうであるべきだとつくづく思う。

    カルト教団の造形も、まあ、いくぶん漫画的な誇張というか、「いくら何でもそりゃないだろ」というところはあるにせよ、その薄気味悪さ、躍動的な嫌悪感を撒き散らす様は、なかなか面白かった。

    余談だが、最近「カルト・オブ・ザ・ラム」という「カルト教団の教祖になる」というゲームをやって、これがたいそう面白かった。
    カルト宗教大嫌い、なのに、カルト教団の教祖になるゲームは嬉々として遊べる。
    人間の(私の)こういう柔軟性というかいい加減さというか、実に興味深いし、恐ろしい。
    「自分だけは大丈夫」なんて思わずに、肝に銘じて生きていかないとね。
    いや、マジな話。

    • 54
  4. 評価:4.000 4.0

    彼女が「普通」に生きるまで

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    「ヒル」という存在の設定は面白かった。
    ただ、「ヒル」がゴロゴロいたり、仲間を形成していたり、という設定には、ちょっと冷めた。
    「なさそうだけど、あるかも」という際どいラインを完全にオーバーして、「いや、ないだろ」に行ってしまった。
    もっとも、他にも「ヒル」がいることにしないと、どう話を展開させるかは難しいけれど。

    「ヒル」という存在は、深読みしようとすれば、居場所のない若者とか、社会的なマイノリティーとか、色んなメタファーがよぎるけれど、この漫画は、シンプルに、一人の女の子が「普通に生きる」覚悟を決める話でもある。
    「僕たちがやりました」もそうだけれど、「普通に生きる」ことの難しさというのは、現代のひとつのテーマなのかもしれない。

    特殊な方法で生き抜く、客観的にはかなり不気味な存在を扱いながら、主人公の成長物語としては非常に爽やかであり、その微妙なバランスは悪くなかった。

    酷評されているラストだが、物語は断ち切られ、それでも日々は続いてゆく、というような印象で、個人的には好きであった。

    • 50
  5. 評価:4.000 4.0

    未来なき強み、死に場所を探して

    ネタバレ レビューを表示する

    わずかな余命を宣告された孤独な老人が、ふとしたきっかけから家族の温かみを知るが、その家族が殺され…というところから始まる復讐劇。
    あまりに悲惨な設定に胸が痛むが、だからこそ、老人の凄惨な復讐を全面的に肯定できた面もある。

    また、「引っ張りすぎだろ」という漫画が巷に溢れる中、極めてコンパクトな尺に収めてある点も、個人的には評価ポイントだった。

    主人公はいたって普通の老人である。
    が、復讐というのは多かれ少なかれ、その後の自分の人生をも犠牲にするものだ。
    その意味では、老い先短い人間ほど、復讐に全てを賭けられる、と言えるかもしれない。

    「先のことなど考えない」は若者の専売特許であるように聞こえるが、状況的に考えれば、むしろそれは老人の強みであって、「未来なんかもうねえよ」というのは、ある意味、最強の開き直りである。

    この高齢社会にあって、漫画の読者層だって一定数は高齢化していくわけで、昔に比べて漫画というメディアの対象年齢が広がったことを考えるにつけても、今後、「未来なき強み」を持った老人を主人公に据えた漫画は、増えていくかもしれない。
    「少年」である読者が主人公の「少年」の活躍に胸を躍らせるように、「老人」の読者が主人公の「老人」の生きざまに胸を熱くする時代は、もうすぐそこに迫っているのかもしれない。
    あるいは、その時代はもう、始まっているのか。
    そのうち、「老人漫画」なんてジャンルが出来ちゃったりしてね。

    本作は、あり得ないくらい不幸な物語だが、皮肉なことに、一人の老人が「これ以外にない」というくらいの死に場所を見出だす物語でもある。
    どう死ぬかを見出だすことは、多分、どう生きるかを見出だすことと同じくらい、難しい。
    結末には、確かな救いがあった。
    私には、始めから、老人がどこにもない死に場所を探しているように見えたから。

    • 41
  6. 評価:4.000 4.0

    酒への愛情

    個人的には「恋する二日酔い」があまりに素晴らしすぎて、こっちはそこまで夢中になれなかった。
    ただ、作者の酒への愛情は、とてもよく伝わってきた。

    酒は、付き合い方を間違えると人生が破綻する足がかりになってしまうけれど、上手に付き合えば、人生を豊かにしてくれる可能性は、間違いなくある。

    「恋する二日酔い」が「酒が特別になる人生の瞬間」を綴った漫画であったとすれば、この作品は、徹底して「ごくありふれた日常の中にある酒の魅力」を描いている。
    特別な時でもなく、特別な相手とでもなく、特別な場所でもなく(チェーン店だもんね)、ただ、仕事帰りに飲む一杯の酒が、どれほど日々を潤してくれることか。
    それに慣れてしまうことなく、深く味わいながら生きることが出来たなら、その酒はきっと、豊かな酒だろう。

    こんなふうに酒に対する愛情を表現できるのは、素敵なことだと思った。

    • 39
  7. 評価:4.000 4.0

    希望

    最初に白状するが、私は、現代の日本の多くの宗教に対しては、かなりの嫌悪感を抱いている。
    それは、多分に偏見に基づく。
    だから、ちょっと申し訳ないとも思う。
    けれどこの嫌悪感は、いくつかの決定的な経験と、それにまつわる私の強い怒りから、長い年月に渡って形成されたものであり、今ではほとんど生理的なレベルに達していて、もう一生変えられないと思う。

    以前、妻がこんなことを言っていた。
    「もし、宗教を強く信じる親のもとに自分が生まれていたら、と考えると、それがこの世で一番怖いことかもしれない」と。

    妻は、二つの意味で言ったのだと思う。
    ひとつは、自分の人生が、宗教によって制約・束縛される恐怖。
    これは、要するに「やりたいことがやれない」というレベルの話だ。
    もうひとつは、自分の人生の自由が、宗教によって制約されている異常(だと私は思う)さにすら気づけないかもしれない、という恐怖。
    こっちの方が、より、怖い。

    私は、妻に言った。
    もし、そういう家庭に生まれても、あなたはきっと、気づけたと思うよ、逃げ出せたと思うよ、と。
    俺もその自信あるよ、と。

    嘘ではなかった。
    でも、本当に、そうだろうか?

    この漫画の作者のような家庭に育った人間が宗教から抜け出すには、文字どおり、かなりの年月に渡る自分の人生を「無駄にする」覚悟がなければ、無理だ。
    どうであれ、それまでの人生が「間違っていた」のだ、と認めることは、決して易しくない。
    人間は誰だって、積み上げたものを否定したくない。

    だから、この漫画の作者の決断には、本当に胸が熱くなった。
    こういう種類の人生から抜け出した人の証言に、初めて出会った。
    そして、希望を抱いた。
    この世には、自分が望んだわけでもない宗教の囲いの中に生まれ、そこから抜け出せずに一生を終える人が、いくらでもいる(それが不幸であるかは難しいけれど…)。
    でも、自由の風を感じて、それに憧れて、信じて、勇気を持って踏み出す人も、きっと、いるのだ、と。
    そのことについて、作者に、ありがとう、と言いたい。
    その勇気を、意志を、そして、何よりも彼女がつかんだ自由を、私は、心の底から祝福したい。

    • 32
  8. 評価:4.000 4.0

    エピソードの楽しさ

    ちょっと映画「ディパーテッド」を彷彿とさせるような設定で、面白かった。

    私は、この漫画の「ひとつひとつの事件のエピソード」を、毎回とても楽しく読んだ。
    逆に言うと、この漫画の「大きなストーリー展開」には、あまり興味が持てなかった。
    だから、残念ながら、結末にもそれほど胸を打たれず、「終わってしまったか」という感情だけが残った。

    ただ、それだけ個々のエピソードの完成度が高い、ということは、間違いない。

    • 31
  9. 評価:4.000 4.0

    魅力的な活劇と、その違和感

    小気味よく、スピーディーで、絶えずスリリングな展開力、ハイレベルな画力の安定感、そこに、阿片の蔓延する大戦中の満州という舞台装置のいい意味でのいかがわしさが加わって、時代物の活劇としての魅力は抜群である。

    ちょっと都合よすぎる部分は散見されるし、そもそも「いや、阿片でそんなふうにラリることはないだろう」という根本的な部分での突っ込みどころもあるが、それらも些事に過ぎないと思わせてしまうくらい、作品に美しさと勢いがあり、とにかく一気に読ませる力にみなぎっている。
    いやー、面白かった。

    ただ、どうにも違和感としてつきまとうのは、好感度抜群の主人公一味がやっていることは、結局、芥子を栽培しまくって高純度の阿片を取り出して売りさばいてヤク中を増やしまくって富を得る、っていうことなんだよな、と。
    ところが、この悪逆非道をやっている当の本人たちは、いたって爽やかなのである。
    無邪気、と形容しても構わないくらいに。
    たとえて言うなら「ダイの大冒険」の主人公パーティ並の爽やかさだ。
    それでいいのか?

    正直、ここは、難しい。
    どんなに無茶苦茶な所業であれ、それが「主人公サイド」の行為であれば物語として徹底的に肯定する、というのも、ひとつの表現としてはアリだと私は思う。
    ただ、やたらダークにしろと言いたいわけではないのだが、この主人公サイドの「軽さ」は、どうにも気になった。
    読んでいる最中は基本的に、もう100%主人公たちを応援してワクワクしているのだけれど、ふと我に返って、「でも、こいつらのやってることって…」と考えると、どこか冷めてしまっている自分も感じた。

    難しいね。
    みんな阿片でラリっていない頭で考えてほしい。

    • 29
  10. 評価:4.000 4.0

    良質な「大人のための」ホラーアンソロジー

    「極上」とまで言えるかは微妙だが、良質な「大人のための」ホラーアンソロジーである。

    いい意味で、子どもにはわからない、人生の酸いも甘いもというか、ある程度の経験を重ねてきた大人にこそ刺さるタイプの話ばかりである。
    ゾッとする、というよりは、切なさが身に染みる、という話が多いのも、大人向けかな、と思う。

    各話、粒揃いだが、私は田村由美による話が一番気に入った。

    余談になるけれど、「大人のための」とは書いたものの、こういう作品を子どもが読むことを「子どもにはわからないよね」と切って捨てるのも、違うな、と思う。
    昔、確かウルトラマンの制作者サイドの誰かが言っていたと思うのだが、子ども向けだといって、「子どもにもわかる」ことだけで作るのは、違うのだ、と。
    確かに子どものときには「わからない」のだけれど、それが一種の「引っかかり」として心に残り、大人になったときに、「あれはこういうことだったのか」と花開く、子ども向けの作品には、そういう側面があるべきだ、と。
    私はそれに全面的に賛同するし、子どもの頃に読んだホラー漫画の中に、そんな作品が確かにあったよな、とも思う。
    そういう意味で、子どもにも読む価値はあるんじゃないかな、と思う次第である。

    • 26
全ての内容:★★★★☆ 11 - 20件目/全144件

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