目には目を、歯には歯を……。『善悪の屑』『外道の歌』のダークな魅力

目には目を、歯には歯を……。『善悪の屑』『外道の歌』のダークな魅力

更新日:2016/09/14 10:00

世の中には、聞くだけで胸糞悪くなるような陰惨な事件が存在します。

強姦殺人、リンチ殺人、いじめ自殺……。こういった事件は容疑者の逮捕で一応の解決となりますが、罪状が軽かったり、刑罰に問えない事情があったりして、悠々と娑婆で生活を再開する犯人たちがいることも事実です。

被害者はけっきょく泣き寝入りじゃないか。

被害者や被害者遺族が受けた悲しみがわかっているのか。

加害者も、被害者と同じ苦しみを味わうべきだ。

十分な裁きを受けていない犯罪者たちに、相応かそれ以上の「罰」を与える……。そんな「目には目を、歯には歯を」の精神を貫き通す、「復讐屋」と呼ばれる二人組の男たちが立ち上がります。

今回は、漫画雑誌『ヤングキング』に連載され話題を集めたこの問題作「善悪の屑」 (渡邊ダイスケ/少年画報社) と、同誌で現在連載中の第2部「外道の歌」 (渡邊ダイスケ、永田諒/少年画報社) の暗い魅力を、たっぷりじっくり、ご紹介したいと思います。

まずは書誌情報から始めましょう。

善悪の屑」 (渡邊ダイスケ/少年画報社) は少年画報社の青年向け漫画雑誌『ヤングキング』で、2014年10号から2016年7号まで連載された作品で、コミックスは全5巻です。続篇となる「外道の歌」 (渡邊ダイスケ、永田諒/少年画報社) は今も連載中で、現在1巻が発売されています(2016年8月)。

ではさっそくあらすじと内容紹介……といきたいところですが、一つだけ注意を。

ここから先は、相当にどぎつい描写や説明が多くなることが避けられませんので、心して読んでください。

「復讐屋」のふたり

ありふれた古書店
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

街中にある、一見どこにでもありそうな古本屋「カモメ古書店」。そこへ、一人の女性が訪ねてきます。

女性「あの…この本おいくらですか?」

店主「いくら出せるの?」

こんなごく普通の会話が交わされますが、女性は「…お給料の3ヶ月分…で」と謎めいた答え方をします。それで彼女の目的を悟った店主は、店の奥へと引き入れます。

店には坊主頭にサングラスの男
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

……どう見ても古書店主とは思えない風貌の男ですが、奥ではもっと店員には見えない男が寝転がっていました。

奥にはセミロングで関西弁を使う男
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

女性は二人に、「昔お世話になった刑事さんに教えられて」ここへ来たことと前置きして、「依頼内容」を話し始めます。

7年前、シングルマザーで、1歳半になる息子を育てていた彼女は、ある日、自宅で宅配便を装った男に襲われます。男は泣き叫ぶ彼女の息子を4階から落として殺害、その後女性の腹を刺したうえで強姦と、暴虐の限りを尽くします。

復讐心をあらわにする母親
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

男は当時未成年で大した罪に問われず、自由の身となった今も安穏とした生活を送っているそうです。紛うことなきクズです。

事情を聞いた二人、主人公の鴨ノ目武(かものめ たけし、通称カモ)と島田虎信(しまだ とらのぶ、通称トラ)は、復讐代行業、すなわち「復讐屋」として、女性の復讐依頼を受けます。

言うまでもなく、「カモメ古書店」は表向きの稼業で、彼らの本業は「復讐屋」です。冒頭のやり取りは復讐屋として依頼を受けるときのルールなのでした。

クズ野郎は許さない
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

無感情で冷酷なカモに対して、感情的で義侠心のあるトラのコンビ。内容がとにかく重く陰鬱であるため、時折みられるこの二人の掛け合いがちょっとした癒しにもなっています。

そしてこの作品は基本的に1話から3話程度で完結する形式でストーリーが進行していきます。

目には目を、歯には歯を……?

さて、いよいよ復讐編です。「善悪の屑」 (渡邊ダイスケ/少年画報社) も「外道の歌」 (渡邊ダイスケ、永田諒/少年画報社) もキモはカモとトラによる「復讐方法」にあります。レビューサイトの感想や評価で「スカッとする」という言葉が並ぶように、ターゲットには極めて凄絶な拷問が待っています。

犯人の男をとらえ、器材がずらりと並ぶ怪しげな倉庫に連れてきた二人。両目にガムテープを張り、全裸にして椅子に縛り付け、依頼人が見守る中、カモによる拷問が始まります。

本当に過激な表現が続くので、端的に書いていきます。まず、声帯の一部を切り取り、泣き叫べなくします。その後、陰嚢をナイフで切除し、「三国志に出てくる武将・夏候惇は、敵から放たれた矢で片目を失うが、親からもらった目を捨てるわけにはいかないと自分の目玉を喰らった」という逸話を語り、陰嚢を男の口に押し込んで喰わせます。

罰を加えるカモ
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

男はググググとうめいて抵抗しますが、カモは無理矢理咀嚼させます。相手がクズ野郎とはいえ、思わず目を背けたくなります。

さらに罰を与えようとするカモでしたが、依頼人の女性が制止し、男と会話させてくれとお願いをします。男はかすれ声で「後悔してる」と言い、拷問は終了します。

二人の共通理解
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

お前とはウマが合わないな、と言いつつも、「悪人は絶対許さない」という点で結びついている二人。彼らの出会いも気になるところです。

トラが帰り、前向きに生きていこうと考えを改めた依頼人と別れ、残されたカモと犯人の男。男は反省の言葉を繰り返し述べ、カモはそれに答えるように両目のガムテープを剥がします。

そして、こう言い放ちます。

復讐はまだ終わらない
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

そう、カモの復讐はまだ終わらないのです。

カモは男をロープで橋にくくりつけ、逆さにして突き落とします。人間は長時間逆さに吊るされると、重力の関係で、まず目玉が落ち、そのあと内臓が鼻や口から飛び出てくるというウンチクを述べながら。

「無抵抗の赤ん坊殺すようなクズを生かして帰すワケねぇだろバカ野郎」

男が最期に聞いた言葉はこれでした。

拷問内容は、依頼人の意向に沿うように二人で決めますが、最終的にはカモの裁量次第となります。先ほどから「目には目を、歯には歯を」と書いてはいますが、基本、被害者あるいは被害者家族の受けた苦痛以上に痛めつけます。また、理由は後述しますが、カモは特に子どもに手を下した犯罪者には容赦がありません。

元ネタは「実際に起きた事件」?

復讐代行としての考え
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

どんなに加害者を殺してやりたいと思っても、実行できる人間はほとんどいない。だからこそ、代行として、自分たちがやればいい。すでに一線を越えているから。犯罪者側にも立ってしまっているカモの考えはそういうところにあるようです。復讐という名目をかぶった殺人鬼なのですから。

「同じくらい苦しませて殺してください」
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

この漫画の特徴として、描写が非常に生々しいことが挙げられます。上のコマの依頼人の顔もそうですが、事件が事件だけに、誰もかれも苦しみにゆがんでいます。その苦しみに比例するように、拷問もまた残酷になります。

真っ赤に燃える火箸を……
善悪の屑
(c) 渡邊ダイスケ/少年画報社

……このコマだけでターゲットに何がされたかわかるかと思うので、説明は省きます。

(また、このコマはインターネットの広告バナーに使用されたので、見たことある方も多いかもしれません。)

ちなみに、犯人はこの後コンクリート詰めにされる結末が待っています。

ここまで読むとお分かりかもしれませんが、復讐方法も少々予測が難しく、続巻では、人間避雷針にされるという、ちょっとシュールな殺され方をする悪人もいます。

拷問でちょっと霞んでしまいがちですが、依頼される事件や犯人像の胸糞悪さも相当なものがあります。

教師も一緒になって行われていたいじめによる自殺、女子高校生を拉致監禁したうえ数日間集団暴行を繰り返し殺害後山に遺棄した男、家族・親族のマインドをコントロールし互いを殺し合わせていた老婆、食事中の一家全員が殺傷された事件……。

あまりに残虐な暴行を受け続けたために、終始オムツをしていないと尿漏れしてしまうという犯罪被害者(女性)も現れます。

これらの事件概要を読んでちょっとピンときた方がいらっしゃるかもしれません。実はこの漫画で扱われる事件は、言及はされていませんが、実際に起きた事件がモチーフとなっていると言われています。具体的な事件名はここでは書きませんが、読むだけで不快になること請け合いなので、調べる際には相当の覚悟を持って臨んでください。

カモの過去とライバル登場

さて、こうなってくると気になるのは、カモが「復讐屋」の仕事を始めるに至った動機であります。それには亡くなった妻子がかかわっているのですが、詳細が語られるのは「外道の歌」 (渡邊ダイスケ、永田諒/少年画報社) です。

カモの妻の美咲と娘の里奈
外道の歌
(c) 渡邊ダイスケ・永田諒/少年画報社

「カモメ古書店」には「日曜日」という名のネコがいます。命名者はカモの娘・里奈で、当時カモは妻の美咲とともに三人でささやかだけれど幸せな生活を送っていました。

しかし、悲劇は突然やってきます。

帰ってきた我が家には……
外道の歌
(c) 渡邊ダイスケ・永田諒/少年画報社

四年前のある日、カモが帰宅すると、たくさんの警察関係者と、変わり果てた姿の妻子が。

美咲と里奈は、押し入った男から激しい暴行を受け、殺されたのでした。

自分の身を投げ出して娘を守ろうとした妻
外道の歌
(c) 渡邊ダイスケ・永田諒/少年画報社

次々と襲いくる悔恨の念で廃人同然となったカモのもとに、刑事をやっている叔父がやってきます。カモの状態を見るに見かねた叔父は、容疑者の情報を流します。その情報をもとに、深夜自宅から出てきた男をナイフで刺殺。カモが復讐の鬼と化した瞬間でした。

その後、カモは復讐代行業を始めるようになります。

叔父に、なぜそんなことをするのか、本当に戻って来られなくなるぞと問われ、こう答えます。

復讐に奔走する
外道の歌
(c) 渡邊ダイスケ・永田諒/少年画報社

「誰もやろうとしないから。他の誰にもできないことだから」

叔父はそれから、苦しい思いをしている被害者遺族や関係者をカモにあてて、カモの仕事を黙認・援助するようになります。「こんな怪しい古本屋の店主がいたらすぐ捕まるのではないか?」という疑問も、叔父が揉み消していると考えれば納得がいくわけです。

ネタバレになってしまうため細かくは書けませんが、「復讐屋」には他にも協力者が現れます。面白いことに、『外道の歌』では、被害者の救済・復讐の支援という点では一致しているものの、やり方は全く違うライバル業者が登場します。それが「朝食会(ブレックファストクラブ」です。

「朝食会」の登場
外道の歌
(c) 渡邊ダイスケ・永田諒/少年画報社

手前のスーツの女は加世子、後ろのシャツイン男は鶴巻といいます。過去に「復讐屋」から拷問を受け、社会復帰困難な状態にある依頼人から依頼を受けた二人は、カモとトラに接触を図ります……。

外道の歌」 (渡邊ダイスケ、永田諒/少年画報社) はどんな話となっていくのか気になるところですが、続刊はまだ出ていないため、紹介はここまでとします。

いかがでしたか? まとめると、『善悪の屑』『外道の歌』の最大の魅力は、復讐を代行してくれる人間の存在と、その残忍な復讐方法にあります。それは、陰惨きわまりない事件に対して人々が加害者に持つ暗い欲望が変化したものです。

もちろんたいへんグロテスクです。が、犯罪者が苦しむ姿が見たい、という方はぜひ手を伸ばしてみてください。

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作者

にしのともき

にしのともき

1992年生まれ、長野県出身のフリーライター。活字を読むことが生きがいの中毒患者。小説、漫画、映画すべて楽しみ尽くしたいと手当たり次第むさぼる日々。好きな漫画は『寄生獣』。だいたい自宅か神保町にいます。

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