5.0
後宮版源氏物語〜若紫の帖
9歳で後宮に入り、後宮妃ランキングが133番ゆえに、皇帝陛下から完全に忘れ去られている月・雨麗。家族から離れ、宮女に囲まれて一人明珠宮に棲んでいます。そこに、いつの頃からか現れるようになった不思議な青年、董星。雨麗9歳、13歳、16歳と幾つかの季節を経ながら、少しずつ二人の距離が縮まっていきます。そこに皇帝死去の報せが入り、雨麗は後宮を辞するかどうか選択を迫られて…。
とにかく登場人物が美男美女ばかり。雨麗は妖艶というより、可愛い感じに成長します。董星は、誰が見てもイケメンの美丈夫。時代が行き来する場面が多いので、ちょっと混乱する向きはありますが、ちまっとして可愛い雨麗、やや若めの董星なら昔の回想場面です。話が進むにつれて、董星がなぜ明珠宮に現れるのか、雨麗はどんな選択をしようとしているのかが明らかになっていきます。
宮廷衣裳、桃の花満開の桃翠圓など人物以外の描写もとても美しいのですが、やはり二人の絡みにはかないません!中盤以降は、ラブいシーンもぐっと増えるし、ボケとツッコミもそれなりに楽しめるし、何より照れた董星サンの表情がたまらんのです。
何か大きな事件が起こって運命に翻弄される…というタイプのお話ではなく、雨麗と董星二人の気持ちを、時間をかけて丁寧に描いたという印象です。「天に恋う」でも実現できなかった、こんな後宮物語があったらいいなあという女子の夢が、ぎっしり詰まっています。雨麗を紫の上、董星を光源氏に置き換え、よそ見をしない後宮版源氏物語として、ぜひぜひオススメです。
- 8