4.0
解釈がわかれるラスト
衝撃のラスト、
将太の前で飛び降りた女の子は白田さんなのか
ななこちゃんなのか…
意図的にどちらともとれるように描いていると思うので読み手の解釈に委ねているのかなと思いました。
髪型は白田さんだし彼女の家の前に現れた。
白田?と呼びかけて否定しなかった(だが肯定もしてない)
しかし話し方や表情なんかはななこちゃんっぽいような。
ななこちゃんは母親に少しでも自分を見てほしくて兄のように振る舞っていたので
自分ではない誰かのように振る舞うという点で重なる点はある。
体を売っているようだが経済面でその必要がありそうなのはななこちゃんか?
しかし白田さんも親との不和があるのでどこかで道をそれてしまったのか…
成長しただろ?と胸を触らせますが
将太は白田さんとななこちゃんの両方の胸を触ったことがある。
やはり意図的にどちらか断定できない描き方をしている。
〈この日をずっと待ってた気がする
恐怖の大王はお前だったんだ〉
〈両親もいて 家もあって
誰もオレを殺そうとしてない〉
この日待ち望んでいたのは99年7の月にまた会う約束を持ちかけたななこちゃんでは?
両親もいて家もあるは(将太もだが)白田さんにあてはまる要素
誰もオレを殺そうとしてないは
かつて父親に殺されそうになった将太に当てはまる要素
幼い頃に家庭の不和に悩み、それによってつながった子どもたち、
世界がメツボーしてしまえばいいのにと願った3人。
しかし将太だけが一緒にいた地から離れ、
どうやら新しい家庭のなかでそれなり幸せに暮らしていて、世界のメツボーを望んだのももはや思い出のひとつになってしまっている。
恐らく白田さんとななこちゃんはそこから抜け出せなかったのだろう。
思い出にとらわれ、ささやかな希望として胸にあった世界のメツボー、
でも将太は未来を見据えて生きている。
自分を取り残して幸せになっている将太へ見せつける思いや
希望を喪失し、明るい未来も見いだせない絶望感。
子ども時代を終わらせる…というような象徴的なラストだったかなと思った。
読後なんだかズシンとくる作品だった。
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