3.0
第一話だけなんとなく読んでみたら
端正な線の絵なのに、見事なまでにドロッドロ。視点の違いで読者のミスリードを誘う見事な展開。登場人物たちが自分に都合よく世界を見ているだけなのだが、さもそれが真実であるかのような語り口が素晴らしい。一気にそれがオセロのようにひっくり返される瞬間がクライマックスなのだが、そこに至るまでの居心地悪さが、アガサクリスティの小説みたいだ。ただ、視点持ち回り制の中で父親の視点だけが無いから、それが残念。どうしようもない父親を創り出した古い家の構図は、そのまま主人公の弟と母親の関係に当てはめられる。弟は男の子だからという理由だけで甘やかして育てた結果、どうしようもないクズ息子に育っている。そして父親も全く同じように育てたられたと容易に想像がつく。しかし、家で自分のことを何一つやらない、妻を労わることもしない、実の母親に罵倒される娘を庇いもしない、弟ばかり贔屓して叱ることもしない、そんな男が、学校で子どもを導く教師?ちょっとリアリティに欠けるかな。普通ならとっくに離婚されてるだろうし、学校でも嫌われてると思う。そこらへん、掘り下げて欲しかった。あと、クズの弟の内面も。口先だけの自己愛男だということはわかったのだが、女の話だけにしないで、コイツの断罪もして欲しかった。将来、クソ親父と全く同じになるのか、そこまで見せて欲しいな。コイツのクズ加減は、「姉ちゃんの性格はよくわかってる。承認欲求が強いから、自分こそが母さんの世話をしたいはずだ」と全部自分に都合よく確信して押し付けようとしたところにある。いや、こいつホント、母親も姉のことも微塵も心配してないよね。金にもだらしないようだし、弟の嫁はすぐに逃げ出した方がいいぞ。
第二話以降はあまり興味を惹かれなかったので読むのをやめた。既婚男に騙されて付き合ってた女が法に訴えようとしてる導入部…なんか萎えました。
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