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作品レビュー
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21 - 30件目/全406件

  1. 評価:5.000 5.0

    こっちの台詞

    「女の園の星」が面白すぎて、こっちに飛んできた。

    あまりに素晴らしい才能というのは、もう、私なんかがいちいち言葉にするのも馬鹿らしくなってくるのだが、本作もまさにそういうことで、とにかく黙って「うしろの二階堂」だけでも読んで下さい。
    よろしくお願いします。

    フィクションを作る才能にも色々あると思うのだけれど、この人のそれは「構築する」というようなタイプの才能ではなくて、日常を「切り取る」ということに特化した才能ではないかと思う。
    例えば、優れた写真というのは、結局、目の前にあるものをどう切り取るか、ということになるかと思うのだが、そういう種類の感覚がずば抜けている。

    「女の園の星」のレビューでも同じことを書いたけれど、読んだ後で、自分が生きている日々に対する見方が少し、変わるような、日常をもう少し慈しみながら生きてみようかな、と思えるような、本当に素晴らしい漫画である。

    何だよ、「夢中さ、きみに。」って。
    それはこっちの台詞だっつーの。

    • 64
  2. 評価:1.000 1.0

    マニラの夕日が響かない

    今から五十年くらい前には、ロボトミー手術は精神科において普通に行われていた。
    脳に深刻なダメージを与える危険性が後にわかり、禁止された。

    こんな話がある。
    ある有能なスポーツライターの男が、妹夫婦と口論になって家具を壊して逮捕され、精神病質と診断されて、ロボトミー手術を受ける。
    結果、男は記事が書けなくなり、後遺症に悩まされる人生を送る。
    あるとき、世界的に名高いマニラの夕日を見て、自分の心に何の感動も湧かないことに愕然とした男は、自分がもはや人間ではないと絶望し、ロボトミー手術の問題点を知らしめるために、自分を手術した精神科医を殺そうとして、結果的に、その妻と母親を殺害する。

    私の知る中で、最も絶望的で悲劇的なエピソードのひとつである。
    何も、感じない。
    これほど恐ろしいことが他にあるだろうか。
    誇張抜きで、男は死_刑に処されるよりも残酷な運命を辿ったと思う。
    それをもたらしたのが、ロボトミー手術だ。

    私は、漫画に倫理も道徳も求めていない。
    闇金ウシジマくんをヒーローと考えるような人間である。
    しかし、仮にも「医療」の名のもとに、相手がどんな人間であれ、一方的に「クズ」と断じてロボトミー手術で人格を壊して解決を図るような主人公は、見ていて胸が悪くなった。

    これが「超能力」なら、まだ許せたかもしれない。
    SF漫画の悪役の行為なら、流せただろう。
    だが、ロボトミー手術は、多くの犠牲の上に禁じられた、医療の歴史における人類最悪の過ちのひとつだ。
    それをいとも軽々しく行使する人間を主人公とするような作品は、私はどうしても受け入れられなかった。

    • 67
  3. 評価:1.000 1.0

    勝手にしやがれ

    恋に落ちるのは簡単だが、愛を続けてゆくには努力が要る、と思う。

    その努力が出来ない、したくない、というならば別れるべきだ。
    別れないなら努力をすべきだ。
    どちらかだ。
    結婚は維持する、でも努力はしたくない、いい大人が、阿呆か。
    成績を上げたい、でも勉強はしたくない、という子どもと同じ、というか、それ以下だ。
    腐った根性で家庭にいながら子どもを育てているぶんだけ、大人の方が罪は重い。

    そんな、無責任を超越したような阿呆だから、「離婚してもいいですか?」なんてふざけたことを言う。
    勝手にしやがれってんだ。
    「はい、いいですよー」って誰に言ってほしいんだ。
    それすら誰かに決めてほしいのか。
    自分の人生の全て、誰かのせいにしたいのか。
    まったく、タイトルからして最低だと思う。
    だったら読まなきゃいいじゃないかって?
    そのとおりだ、私が間違っていた。

    だいたい、どういう読者にどういう感情を起こさせることを意図した漫画なのか。
    「あーわかる、うちの夫もこんな感じ、ほんと、離婚したいよねー」という読者の反応を期待しているのか?
    それを考えると、つくづく気持ちが悪い。
    虫酸が走る。
    漫画を読んでこれほど気分が悪くなったことは、多分ない。

    エッセイ風の描き方だが、どうもフィクションらしい。
    だったらなおさらタチが悪い。
    これがエッセイなら愚かなだけだが、フィクションなら、そこに愚かな読者を釣ろうとするあざとさが加わるからだ。
    そんな商売は、ほとんど邪悪と言ってもいいと思う。

    やだやだ。
    もう忘れよう、この漫画のことは。

    • 66
  4. 評価:5.000 5.0

    玉に傷

    少年漫画として、ほとんど完璧だと思う。
    異様な休載の多さを考慮しなければ、私には非の打ち所が見つけられない。
    それを「玉に傷だよね」と笑って許せるかどうか。
    私は、余裕で許してしまう。
    作者がどんなに不誠実でも怠惰でも傲慢でも(本当にそうかは別だけどね)、生まれてくる漫画が、あまりにも素晴らしいから。

    • 66
  5. 評価:5.000 5.0

    アイデア一本からの飛躍

    「人生が記録されたDVDがある」という、「世にも奇妙な物語」的なアイデア一発から、よくここまで広げたな、と感心する。
    下手をすれば、一発屋的な打ち上げ花火で終わるか、同じようなパターンの焼き直しに終始する可能性もあったはず。
    たったひとつの食材を、ねじ曲げず、腐らせず、ゾッとするほど後味の悪いスリラーから、心暖まるヒューマン・ストーリーまで、多彩に料理してみせた、その手腕に拍手を送りたい。

    • 61
  6. 評価:4.000 4.0

    罪と許しと無償のサムシング

    まず、元受刑者の造形がいい。
    この漫画は、不運にも犯罪者になってしまった善人と、その社会復帰を支える保護司の人情物語、ではない。
    元受刑者は、極悪人ではないにせよ、読者が全面的に同情できるような悲劇のヒーローでもない。
    微妙だ。
    気の毒ではあるが、正直、「そんなザマやから犯罪者になんねん」と言いたくなる面もあり、その微妙さが、罪と、それを許すことの難しさや複雑さを、私たちに問いかける。

    また、この漫画で、保護司は無償なのだと知り、愕然とした。
    はっきり言って、私なんか、百万回生まれ変わっても、そんな仕事を無償ではやらない。
    そんな大切な仕事がボランティアに依存しているとは、知識もない中での感情論で申し訳ないが、国家のシステムとしてトチ狂っているとしか思えない。

    ただ、主人公の「無償なのにやる、ではなく、無償だからやる」のだ、という主張には、ハッとした。
    読んだところまで(13話)ではまだ明らかになっていないが、この主人公自身もおそらく、何かの罪を抱えているのではなかろうか。
    それが、社会的に裁かれる罪かどうかは別にして。

    「無償なのに」ではなく、「無償だから」。
    そういう生き方も、あるいは、償い方も、あるのだろう。
    繰り返し、私は百万回生まれ変わっても、そんな生き方は出来そうにないのだけれど。

    • 57
  7. 評価:3.000 3.0

    その復讐はもはやギャグ 

    いじめが原因で命を落とした兄、それをきっかけに崩壊した家族。
    その復讐を果たすため、優等生だった兄になりすまして高校に入った不良の弟の壮絶なリベンジが…などと書くともっともらしいが、いや、兄が死んだのばれてないんかーい。
    とか、全国模試で上位にいるような優等生の兄が、不良の巣窟みたいな高校に通ってたんかーい。
    とか、もう、設定段階からゆるゆるである。

    復讐の舞台となる高校も、フリーザみたいな不良のボス(こいつがなぜか敬語でしゃべるものだから、余計にフリーザを彷彿とさせる)がいて、やれ親衛隊だの、やれナンバーズだのと、今どきRPGでもやらないんじゃないかという設定具合で、シリアスな復讐物語、という作品の方向性は完全に死んでいる。
    これをギャグでやっているならハイセンスだが、大真面目だから、寒い。

    個人的な加点ポイントは、絵だ。
    賛否あるだろうが、「雑なデッサンをカラーにした」という感じのザラッとした絵柄は、なかなか魅力的に映った。
    逆に言えば、この絵を受けつけない読者にとっては、本作を読む価値は皆無に近いと思う。

    ただ、主人公の復讐劇が、基本的に暴力を行使するものである以上、殴るシーンに全く迫力がないのは、いささか致命的に思われた。

    • 56
  8. 評価:4.000 4.0

    カルトを巡るあれこれ

    この世で最も嫌いなもののひとつがカルト宗教である。
    だからもう、主人公がそれに立ち向かうという設定だけで、私は全力で応援してしまう。
    妻をカルト教団から取り戻すなんてもう、感情移入の度合いが激しくなりすぎてヤバい。

    本作の主人公は、一見すると何かイマイチやる気のない感じが、逆にリアリティーがあってよかった。
    たぎるほどの正義感とか、燃え盛る妻への愛とか、そういうものをストレートには描いておらず、かなり抑制した描き方をしながら、その根っこには譲れないものがちゃんとあるのだ、ということが伝わる。
    私はそういう表現というのが好きだし、特に「大人」に向けての作品は、そうであるべきだとつくづく思う。

    カルト教団の造形も、まあ、いくぶん漫画的な誇張というか、「いくら何でもそりゃないだろ」というところはあるにせよ、その薄気味悪さ、躍動的な嫌悪感を撒き散らす様は、なかなか面白かった。

    余談だが、最近「カルト・オブ・ザ・ラム」という「カルト教団の教祖になる」というゲームをやって、これがたいそう面白かった。
    カルト宗教大嫌い、なのに、カルト教団の教祖になるゲームは嬉々として遊べる。
    人間の(私の)こういう柔軟性というかいい加減さというか、実に興味深いし、恐ろしい。
    「自分だけは大丈夫」なんて思わずに、肝に銘じて生きていかないとね。
    いや、マジな話。

    • 54
  9. 評価:5.000 5.0

    切なさの純度

    めちゃくちゃ面白い。
    「凪」でも感じたけど、この作者は、人間のちょっとした、でも、すごくクリアで、大切で、絶対に無視できない感情みたいなものを、とんでもないくらいリアルに描く。
    その感情が溢れる瞬間を、びびるくらい正確に切り取る。
    凄い。
    どういう才能なんだ。
    いや、ちょっと、言葉に出来ないくらい、本当に凄い。

    それでも、読んでいて浮かぶ気持ちに言葉を与えるならば、平凡だけど、「切ない」ということになると思う。
    ただ、その切なさの純度が、半端じゃない。
    「悲しくて、切ない」とか、「甘く、切ない」とか、「切なくて、やりきれない」とかじゃなく、100%、切ない。
    だからその切なさは、突き抜けて、もう、ただ爽やかだ。

    読んでよかったなあ。
    何だか、足りないものも余計なものも何もなくて、全てが満たされたような気分になった。
    ちょうど、人生の特別な場面で、完璧なビールの一杯を飲み干したときみたいに。

    • 48
  10. 評価:5.000 5.0

    見事なスピンオフ

    学生時代、オリジナルの大ファンだった。

    明智警視や剣持警部を主人公にしたスピンオフなら誰でも思いつきそうなものだが、まさか「犯人」を主役にしたコメディとは、目からウロコである。
    その発想がまずよし。

    オリジナルの「金田一少年の事件簿」は、一部を除いて「復讐」という大義名分を掲げた犯人が大半だったこともあり、基本的には、堂々と、凛として、金田一と対峙した人物が多かった。
    それは、漫画のキャラクターとしては格好がつくが、どこか人間らしさを欠いてもいた。
    犯人だって、ビビるし、テンパるし、捕まって「後悔はないわ」なんて、そんなことないんだ、本当は。
    そういう意味では、このコメディの中で描かれた犯人の姿こそが、「リアル」な犯人像である、と言えるかもしれない。

    徹底的に「下らない」体裁をとりつつも、意外にも「犯人」という存在の本質に迫る、見事なスピンオフ。

    • 48
ネタバレ無し:全ての評価 21 - 30件目/全406件

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