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作品レビュー
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101 - 110件目/全498件

  1. 評価:5.000 5.0

    「これ系」の最高傑作

    ちょっと雑なカテゴリー化になるが、
    1.短編形式のオムニバスであり、
    2.登場人物が現実の枠を超えた奇妙な出来事を経験する、
    というタイプの漫画を、「世にも奇妙な物語系」と勝手に呼ぶことにする。

    古くは「笑うせえるすまん」とか「Y氏の隣人」、懐かしいジャンプのホラー枠で言えば「アウターゾーン」、個人的に好きな「走馬灯株式会社」なんかがこれに分類されるかと思う。
    何が言いたいって、掃いて捨てるほどあるそのような作品群の中で、過去に数々の名作も生まれてきたこのジャンルの中で、本作が最高傑作なのではないか、ということだ。

    この「世にも奇妙な物語系」には、話の「定型」が決まっているタイプが結構あって、例えば「笑うせえるすまん」であれば、喪黒福造に出会って「ドーン」とやられるのが「定型」だし、「走馬灯株式会社」であれば「自分の今までの人生を記録したDVDを見る」というのが「定型」になっている。
    本作の場合、「アンテン様」という神様に願い事をすることが「定型」なのだが、まずこの「定型」が、作品の装置として素晴らしい。
    設定自体はいたってシンプルで、「ひとつ得れば、ひとつ失う」という人生の鉄則みたいな感じなのだが、そこから生まれる制約や矛盾、得るものと失うもののバランスといったところから、哲学的な深みを感じさせつつ、しかもポップに物語を紡ぐ様は、芸術的ですらある。

    そして、明確な「定型」がありながらも、話のバリエーションの振れ幅は尋常ではなく、背筋が寒くなるようなホラーから、抒情的なハートフルストーリーまで、どこを切り取っても完成度が高く、隙がない。
    舞台設定も、現代から、戦後から、江戸時代あたりから、と多岐に渡るが、これは、アンテン様が「神」であればこそ可能な設定の自由度であり、また、アンテン様が長きに渡り、人間の本質を見つめ続けてきた、という重みも感じさせる。

    アンテン様、という「神様」のあり方は、何だかとても魅力的で、しっくりきた。
    私は基本的には無神論者だし、多くの日本人は本質的にそうだと思うが、こういう「神様」がすっと入ってくる読者は多いかと思われる。
    そういう意味では、実に日本的な作品でもある。

    私は、「私とワルツを」でボロボロ泣いてしまった。
    大人になってから、漫画でこれほど泣いたことは多分ない。

    • 16
  2. 評価:5.000 5.0

    眩しすぎたせい

    最初は、物語がどこに向かおうとしているのかがまるで見えなくて、漫画の登場人物たちと同様、私自身、民子に振り回されるばかりで、とっちらかったような印象を受けた。
    こりゃ、最後まで読むことはないかな、と。
    しかし、読み進めるうちに、強引なくらいのパワーに引き込まれて、抜け出せなくなった。
    終盤はもう、涙が止まらなかった。
    でも、どういう涙なのか、よくわからなかった。

    私は、どんな人間も、何かしらの地獄を抱えて生きているのではないかと思っている。
    はたから見たら、恵まれたイージーモードの人生を送っているように見える人でも、誰もが敬う人格者でも、はたして同じ人類なのかと疑いたくなるくらい嫌な奴でも、それは変わらないのではないかと思っている。

    民子は、人々が抱えた地獄の一番深いところの闇を、照らすような人物だった。
    刹那に、強烈に。
    そこには善とか悪とかいう観念はなくて、多分、民子自身の意志とか感情とかもあまり問題ではなくて、ただ、自分の命を燃やして何かを照らすような生き方しか出来ない。
    そうすることでしか、自分自身の地獄を照らせない。
    私は、民子にそういう印象を持った。
    そんな人物に、いかなる漫画の中であれ、出会ったことがなかった。

    閃光は、一瞬だ。
    それは、悲しむべきことかもしれない。
    けれど、例えば花火が一時間光りっぱなしなら、あるいは、蛍が十年生きるなら、あれほど私たちの胸を打つだろうか。

    私が流した涙は、あるいは、民子が刹那に放った光が、あまりに眩しすぎたせいなのかもしれなかった。

    • 16
  3. 評価:5.000 5.0

    コーヒー・ライフ・ゴーズ・オン

    缶コーヒーを中心アイテムに据えた短編集。

    素晴らしいと思った。
    読み終えてしまうのがただただ惜しくて、最後の二話をしばらくとっておいた。
    漫画で、どんな短編集が読みたいか、と言われたら、私は、こんなの、と答えるだろう。

    私たちの日常を、人生の一場面を、まさしく「切り取った」漫画だと思った。
    全然「泣かせにきている」タイプの漫画ではないのだけれど、その切り取り方があまりに正確で、また誠実で、そのことに多分、ちょっと涙ぐんだりした。

    どのエピソードにも、明確な「オチ」と呼べるようなものがない。
    この漫画は、勇気を持って、オチらしいオチを拒絶しているように思った。
    全てのエピソードが、「終わり」ではなく、「続き」を感じさせる。
    そこにあるのは、漫画として綺麗に片づけられた「おしまい」の様式ではなく、これからも続いてゆくしかない、誰かの、そして私たちの、人生の形なのだと思う。

    ハッピーエンドもバッドエンドもなく、私たちの人生は続く。
    多分明日も、同じ缶コーヒーを飲んだりしながら。

    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張れよ」
    そんな「メッセージ」を、この漫画は一言も発していない。
    そういう意味では、とても控えめで、寡黙な作品だ。
    それなのに、読者の側には、その感情が残るのだ。
    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張るか」と。
    まあ、私は、コーヒーが飲めないんだけれども。

    • 16
  4. 評価:5.000 5.0

    完全無欠の細部

    14年前の事件の凶悪犯が出所し、小さな集落を訪れたことから、そこで暮らす人々の人生の歯車が狂い始める、というストーリー。
    あまりに素晴らしいサスペンスで、全く目が離せない。

    テンポよく、スリリングで、しかも極めて安定感のある展開、みなぎる緊迫感と立ち込める不穏さ、丁寧で奥深いキャラクターの造形、サスペンス漫画として何もかもが見事だが、強烈なリアリティーを力強く支えているのは、圧倒的なレベルのディテールだ。

    例えば、凶悪犯の「名前」の件。
    登場時、14年前とは、名字が変わっている。
    これを「偽名」だと主人公サイドは見抜くわけだが、読者サイドとしては、「そんなに簡単に名前を変えられるのか?」という小さな引っかかりは残る。
    本筋とそこまで関係なさそうだし、まあいいか、と私なんかは思うのだが、この漫画は、そういう細部をツメにツメる。
    「小さな引っかかり」をおろそかにせず、徹底的に拾い上げて、しかもそのディテールをいつの間にか本筋に繋げる。
    この上手さを何と言えばいいのか。
    私などの言葉では伝わらない。
    もう、読んでもらうしかない。

    些細なことと言えば些細なことだが、結局のところ、作品の完成度を左右するのは、そういう些細なことの集積なのではなかろうか。
    特に、伏線がものをいうサスペンスでは、なおさらである。
    その点、この漫画の気合いと緻密さは凄まじい。
    「神は細部に宿る」とは、こういう作品のためにある言葉だろう。

    完全無欠のディテールに支えられた、唯一無二の傑作。
    サスペンス漫画ファンは、必読である。

    • 15
  5. 評価:4.000 4.0

    それでも、人生は続く

    夫が死んだ。
    ずっと男に寄りかかってきた人生だから、どうしたらいいかわからない。
    そんな主人公は、現代的な価値観から言うと「駄目な女」かもしれないが、私は好感を持った。
    その理由は明確で、自分がどういう人間であるかを、自覚しているからだ。
    弱さとか愚かさというものは、それを自覚した時点で、もう半分くらいは救われているんじゃないかと思う。
    主人公が前に進めたのも、自分がどういうふうに生きてきたか、という事実から逃げなかったことが、出発点だったのではないかと私は思った。

    誰かを愛せることは、素晴らしい。
    でも、残酷なことに、「生きてゆくこと」は、それとはまた別の問題なのだ。
    多分。

    一人の女性が専門的なスキルを身につけることで自立してゆく、という非常に現代的な漫画だけれど、古い価値観を攻撃するようなタッチではなく、「愛は消えたり奪われたりすることもあるけれど、それでも、人生は続くのよ」と優しく諭すような漫画だと思った。
    その優しさが、私はわりに好きであった。

    • 16
  6. 評価:3.000 3.0

    裏社会モノについて

    「ウシジマ君」のヒット以来、こういう「裏社会もの」の漫画は一気に増えた印象があるが、その大体が「ウシジマ君」に遠く及ばないのは、作品の中で「哲学」を提示できていないからではないかと思う。
    陰惨な裏社会の世界観を描くことは、ある程度の技術があれば、多分できる。
    だってそんなもの、現実にあるんだから。
    本作も、そうだった。
    けれど、その中で漫画のキャラクターが生き抜く様を魅力的に見せるのは容易ではない。
    現実の世界観のインパクトに、漫画のキャラクターの魅力が負けてしまっては、漫画の意味なんかない気がする。
    そうならないためには、半端ではなく恐ろしい現実に立ち向かうだけの強い哲学がなければいけない。
    が、難しいよな、そんなの。
    あらためて、「ウシジマ君」はすごいと思った。

    • 17
  7. 評価:1.000 1.0

    これは漫画だから

    漫画なので、やはり、「絵」と無関係には評価できない。
    絵の上手い・下手を語れる立場に私はいないが、どう考えても作品に「合う絵・合わない絵」は、ある。
    そういう意味で、申し訳ないが、致命的だと思う。
    この絵柄のおかげでホラー味がちょうどいい具合に緩和されて…なんてフォローはする気にならない。
    例えば、青山剛昌の絵で「スラムダンク」は成立しない。
    鳥山明の絵で「闇金ウシジマ君」は成立しない。
    荒木飛呂彦の絵で「名探偵コナン」は…嗚呼…ちょっと読みたい。

    • 19
  8. 評価:4.000 4.0

    甘くて優しいどんでん返し

    ネタバレ レビューを表示する

    ある日、幼馴染みに「殺された」主人公が、幽霊となって幼馴染みの凶行を止めようとするのだが…というストーリー。

    「犯人」は第一話からわかってしまっている(ように見える)わけで、読者の側としては、ミステリ部分の焦点を「なぜ」に合わせて読むわけだが、それを終盤に一気に覆す返し技は、なかなか上手に決まっていたと思う。

    面白かったのは、それぞれのキャラクターが、登場したときとはずいぶん違う印象に変わっていく点だ。
    それ自体は別に作品において普通のことだが、「登場人物全員」がそうである、という漫画は、なかなかないように思う。
    そう決めて描かなければ、こうはならない。
    登場人物全員に、裏がある。
    しかし、その「裏」というのは、自分のダークサイドみたいなものを隠している、というよりは、誰しもが表に出せない弱さや強さを抱いて生きている、という提示であって、露悪的ではなく、むしろ優しさを感じるものであった。

    主要な登場人物たちは皆、誰かを傷つけた過去を悔い、再び誰かを傷つけてしまうことを恐れて生きている。
    正直、このあたりの描き方は、ちょっとナイーブに過ぎるような気もした。
    また、「佐原も実知も生きていた」「親の意向で死んだということにされていた」という展開には、さすがに「おいおい」と思ったし、いくら何でもハッピーエンドありきに過ぎるんじゃないか、という気もした。
    最初に書いた終盤の展開も、サスペンスとしてスパッと切れ味のあるどんでん返しというよりは、甘くて優しいどんでん返しである。
    ただ、そういう全て、登場人物に対する作者の愛情のように感じて、私は、好意的に受け止めたいと思った。

    • 15
  9. 評価:5.000 5.0

    アイドルとしての岸辺露伴

    私のアイドル、岸辺露伴を主人公に据えたスピンオフ。

    ジョジョの第4部は、ジャンルとしては「サスペンスホラー」に分類されるそうだが、この短編集は、本編以上にサスペンスホラーのテイストを強く感じさせる。
    荒木飛呂彦の、ホラーに対する思い入れ、そして、岸辺露伴に対する思い入れがシャープに炸裂しており、同時に、シリアスだけどコミカル、というジョジョ(特に4部)のトーンが懐かしくもある。

    ジョジョファン、第4部ファン、岸辺露伴ファン、には必読と言って然るべき良作である。
    その全てに該当する私は、大変楽しく読めた。
    何しろもう、岸辺露伴がそこにいるというだけで、大満足であった。

    • 14
  10. 評価:5.000 5.0

    自然に、自由に

    まさに心が震える傑作短編集。
    切なく微かな震えから、ぐらんぐらんに揺さぶる激しい震えまで、バリエーションも実に豊かである。

    漫画の、あるいは、物語の、定型。
    どうもがいても、どんなに工夫を凝らしても、いつの間にかそこに収まってしまう、というような、定型。
    私たちはどれほどオリジナルであろうとしても、結局、何かに似てしまう。
    別にそれが悪いことでもない。
    しかし、この漫画は、そういう定型から、あまりに自然に自由だと思った。
    定型を拒否するでも斜に構えるでも奇をてらうでもなく、ただ、自然に、私の知るあらゆる定型から逸脱していた。
    きっとこういうのを本物の才能と呼ぶのだろう。
    素晴らしい作品だった。

    • 14
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