5.0
中華BLの精華
中華BLの金字塔「魔道祖師」のドラマ版「陳情令」にドハマりし、同じ墨香銅臭先生の作品……というのでこの作品に手を出し、まんまとアニメ&原作小説読んでこれまたどっぷりハマった方、私の他にもめちゃめちゃ居られると思います。墨香先生の作品、ハズレがないんですよね。
こちらのコミカライズ版、もう絵の美しさは一目瞭然の折り紙付き、マンガと言うより絵巻物のようなアートスタイルは一見の価値ありですが、原作かアニメを履修していない方にはめちゃめちゃ分かりにくいです。
墨香銅臭作品に限らず、中華BLを原作とする縦コミカライズやアニメは、中国では「あくまで原作履修済のファンに向けたコンテンツ」なのだそうで(中国人腐女子ネキが言ってた)、基本的にニュービーに優しい造りではありません。ただし解れば間違いなく面白いので、天官の場合はアニメから入るのもいいかも。
特に墨香作品は展開が基本的に地獄な上、脇キャラも大変魅力的なので、90年代以前の耽美かつ重たーいBL小説が好きな人なら間違いなくぶっ刺さります。特にこのコミカライズは、マンガというより絵の美しさと文章で魅せるグラフィックノベルなので、BLは小説派だ!って人にはよりオススメです。百聞は一見にしかず!天官読んで三郎が嫌いになる人はおらん(断言)!
繰り返しますが、原作は地獄の展開(語弊無し)です。原作では一巻ごとに時系列が作中の現代→過去→現代→過去、と交互に語られていきますが、この過去編がキッツいの何の……!「魔道祖師」「陳情令」を観た人になら、義城編がずっと続いてるみたいと言えば分かるでしょうか。あんまりに過去編が辛すぎて、現代編の序盤に三郎が殿下を「兄さん」て呼ぶシーンだけでもう泣けるんよ……。
また、墨香先生のストーリーテリングがめちゃめちゃ巧みで、後になってから「序盤の○○、あの時のアレやったんか!」と脳汁出る伏線回収の数々はお見事の一言。どんでん返しも意外性があり、ミステリ的にも超良作です。舞台設定も構成も、日本の作品ではあまり見ないというか異国情緒全開なので、ちょっと変わったBLを楽しみたい方にもめっちゃオススメです。
まだコミカライズ版がそこまで進んでないと思いますが、美しすぎるアートスタイルで綴られる三郎の800年の絶望と希望の行方、楽しみに追いかけていきたいと思います。
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