曲者揃い
時は大正時代。恋に憧れる女学生の瑠璃が帰宅すると、両親と弟が血の海になった居間で倒れていた。死に際に父が残した言葉は「鬼月子爵…騙され…」だった。
会社社長であった父親が残した借金のカタに、遊郭に身売りされそうなところを九条伯爵に助けられる。
そして、九条の妹:沙世子と瓜二つの瑠璃に、死んだ妹になりすまして鬼月子爵に嫁ぎ、仇討ちをすることを持ちかけられる。
軍需成金の鬼月子爵家は、名門の箔をつけるため経済的に困窮していた九条伯爵家と政略結婚をする約定を交わしていたのだ。
「戦場の鬼」「死神」の異名を持つ陸軍少佐である鬼月雪嶺は妾腹の出自で、父親と正妻の息子である3人の兄が相次いで死亡していた。
加えて、3兄の許嫁を娶るものの、わずか1週間で死去。これらの不審死に、誰もが雪嶺が犯人だと噂していた。
そんな中、瑠璃は世間の噂とは異なり優しい思いやりを見せる雪嶺に戸惑いを隠せない。夜明けにひとり目覚めた瑠璃を襲った者が放った言葉で、先妻の死に疑念を抱くようになる。
初めての洋装で社交界デビューした瑠璃が目にしたのは、美丈夫で有能、裕福な華族である雪嶺を取り巻く女性達の姿。一方、雪嶺も愛らしく無防備な表情を見せる新妻に心を奪われていく。
よくある政略結婚と復讐劇の設定ではあるが、絵が綺麗で、続きが読みたくなる。登場人物が曲者揃いで、今後の展開が楽しみだ。
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4.0