4.0
人の優しさが心に沁みる
大変な境遇にありながらも、
人の心を失わずに生きてきた人達が
この時代にもきっと居たのだろうなと
そんな事を考えながら読みました。
始めはチンチクリンで世間知らずな子供だった主人公が禿を助け出す場面では、すっかり頼り甲斐ある姐さんの風情になっていたり、軽度知的障害のある朋輩を我が身を挺して船乗り達から守ったりと、成長していく姿がとても逞しく、その世界観に引き込まれます。また、おかァさんと慕う夫人の旦那さんが実は太客で、遊郭にねじ込んで来るシーンでは、見世の看板の名に恥じない立派な態度に、胸がすく思いがしました。
何度も何度も傷付いて、地獄の責め苦のような日々を過ごしながらも、それでも、いつの世も人間が生き続けられるのは、そんな中にも存在する少しの真実、人の真心や優しさがあるからなんだろうなあと感じました。
束の間の平和、なんて事のない日常の会話シーンが好きです。きっとまた読むと思います。
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