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作品レビュー
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21 - 30件目/全144件

  1. 評価:4.000 4.0

    設定を積み上げる

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    一生に一度だけ殺_人を許可される権利を保障するという、「一生一殺法」が定められた、という設定の話。

    こういう突飛な設定の作品は往々にして「設定倒れ」に終わることが多いが、なかなか面白かった。

    まず、設定を「一発ネタ」として放り出すのではなく、きちんと整えようとしている、穴をなくそうと腐心しているのがわかり、好感を持った。
    例えば、殺_人の認可は「その殺_人によって救われる人生・人命があること」が前提であり(そのため「殺益」と呼ばれる)、役所に申請して行政の判断で受理される必要があるとか、
    申請者本人が身体的または心理的理由により自ら執行が困難な場合は、執行委員会が代行するとか、
    執行の事実は累計執行数が公表されるのみで、申請者と対象者の個人情報は保護されるとか、
    インターネット上で法の濫用を促すと厳罰に処されるとか、
    申請者と対象者が親族の場合は申請者は遺産を相続できないとか、
    申請者も対象者も12歳未満は除外されるとか、
    かなり丹念に設定を積み上げている。

    まあどんなに繕っても「あり得ない」設定であることに変わりはなく、どういったって無理があるのだが、作品としてそれをカバーするための努力、破綻させない努力は立派である。

    また、この手の作品は、設定をどう利用するか、どれだけ広げられるか、その設定から読者が想定し得る展開をどれだけ超えられるかがキーポイントになるが、その点も、話の転がし方はなかなか芸が細かく、バリエーションに富んでいて、退屈せずに読めたのは嬉しかった。

    • 4
  2. 評価:4.000 4.0

    なりきれない悪霊

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    事故死して幽霊となったいじめられっ子が、自らの「幽霊の才能」を活かし、悪人を脅かしまくる、という話。
    生粋のホラーではなく、ギャグに振り切るでもなく、ほのぼのとしたテイストの漫画である。

    主人公は人を脅かす度にRPGのようにレベルが上がり、「ラップ音」「髪伸ばし」「巨大化」などのスキルを身につけてゆく。
    この「幽霊のスキル」という発想はなかなか面白く、作品にいいリズムを与えていると思った。

    また、生きている間は決して満ち足りたとは言いがたい生活を送っていた主人公が、幽霊となってからイキイキしている様子も、心地よく読めた。
    どす黒い復讐心に燃えたり、悪意に染まってゆくわけではなく、人間らしい弱さと優しさを持ったままであり続ける彼女の好感度が、作品を支えている。

    いじめを扱った漫画に陰惨な復讐譚が多く見られる中、本作は、とても優しい作品である。
    痛みを知る人間は、なかなか悪人にも悪霊にもなりきれない、それが現実に近いのではなかろうか。
    そのぶん、悪く言えば甘さやぬるさはあるのだが、人格破綻者レベルのいじめっ子すら憎みきれない主人公の、ある種の弱さや甘さが、私はわりに好きであった。

    • 3
  3. 評価:4.000 4.0

    貞ちゃんの心象風景

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    例えば「番町皿屋敷」というクラシックな怪談がある。
    井戸からお菊ちゃんが出てきて「いちま~い、にま~い」と皿を数えるアレである。
    これは当然、怪談の古典、悪く言えば時代遅れだ。
    「いや、井戸とかねえし」というのが現代だからだ。
    「皿割っちゃった?メルカリで買えばよくね?」というのが現代だからだ。

    「リング」はもう、このあたりから凄くて、「井戸」という古典の怖いモチーフを踏襲しつつ、貞ちゃんは井戸から出てきてしかもテレビから出てくる、という二段構えであって、「いや、井戸とかねえし」という現代人の安全圏を取り払った。

    しかし、そこからまた、時代は進んだ。
    「呪いのビデオ」なんて言われても、もはやVHSなんか誰も見ない。
    かといって「呪いのBlue-ray」とかだと、イマイチ怖くない。
    実のところ、貞ちゃんもいつの間にか「時代遅れ」になったのだ。

    本作は、終末世界を行く二人の少女と貞子のロードムービー的な漫画なのだれけれど、人類がほとんど滅びてもう呪う相手がいない、という世界は、何だか現代における貞ちゃんの心象風景みたいに感じられた。

    無邪気な二人と、どこまでいっても悪霊でしかない貞子の、決して大団円を迎えるはずのない、可愛らしくもどこかもの悲しい道行き。
    結末はわかっていたはずなのに、それでも少しだけ、胸が軋んだ。

    そんなふうに作品を閉じかけておいて、ラストのラスト、貞子をもって「いや、私ってホラーの人なのよ」と唐突に主張させるような幕切れが、実に素晴らしい。

    現代において改変され増殖され消費され続ける貞ちゃんの物語の中で、唯一、本作はちょっと、腑に落ちた。

    • 6
  4. 評価:4.000 4.0

    魅力的な活劇と、その違和感

    小気味よく、スピーディーで、絶えずスリリングな展開力、ハイレベルな画力の安定感、そこに、阿片の蔓延する大戦中の満州という舞台装置のいい意味でのいかがわしさが加わって、時代物の活劇としての魅力は抜群である。

    ちょっと都合よすぎる部分は散見されるし、そもそも「いや、阿片でそんなふうにラリることはないだろう」という根本的な部分での突っ込みどころもあるが、それらも些事に過ぎないと思わせてしまうくらい、作品に美しさと勢いがあり、とにかく一気に読ませる力にみなぎっている。
    いやー、面白かった。

    ただ、どうにも違和感としてつきまとうのは、好感度抜群の主人公一味がやっていることは、結局、芥子を栽培しまくって高純度の阿片を取り出して売りさばいてヤク中を増やしまくって富を得る、っていうことなんだよな、と。
    ところが、この悪逆非道をやっている当の本人たちは、いたって爽やかなのである。
    無邪気、と形容しても構わないくらいに。
    たとえて言うなら「ダイの大冒険」の主人公パーティ並の爽やかさだ。
    それでいいのか?

    正直、ここは、難しい。
    どんなに無茶苦茶な所業であれ、それが「主人公サイド」の行為であれば物語として徹底的に肯定する、というのも、ひとつの表現としてはアリだと私は思う。
    ただ、やたらダークにしろと言いたいわけではないのだが、この主人公サイドの「軽さ」は、どうにも気になった。
    読んでいる最中は基本的に、もう100%主人公たちを応援してワクワクしているのだけれど、ふと我に返って、「でも、こいつらのやってることって…」と考えると、どこか冷めてしまっている自分も感じた。

    難しいね。
    みんな阿片でラリっていない頭で考えてほしい。

    • 29
  5. 評価:4.000 4.0

    見事なバランス

    「誰よりも早く死体を見つける男」である主人公が、「誰よりも早く犯人に辿り着く男」の相棒となる刑事モノ。
    面白かった。

    「死臭が見える」という設定がなかなか上手く機能していて、「便利だけれど無敵ってほどじゃない」特殊能力として、作品のバランスをきちんと保っていた。

    主人公たちの過去の掘り下げ、個々の事件のエピソードの練られ具合、ダークな路線でありながら重すぎず、適度にポップでありながら読み応えはある、という感じで、ビールか何かのCMみたいな形容をしたくなる、そういう意味でもバランス感覚に優れた、なかなかウェルメイドな作品だった。

    全然ジャンルの違う作品との比較でアレなのだが、「闇金ウシジマくんだとちょっと重すぎるんだよね」という感じの読者には、結構刺さるんじゃないかと思う。
    絵柄の美麗さも相まって。

    • 3
  6. 評価:4.000 4.0

    可愛さという毒

    愛とは何か、なんてことは、難しすぎて私にはわからない。
    ただ言えることは、誰かが愛と呼ぶものを、我々がどう感じどう許容するかは、かなりの部分、いい加減な印象によって左右される、ということだ。
    可愛い皮を被ってはいるが、それを証明するような、実に意地の悪い漫画である。

    要するに、この漫画の主人公が(ある部分で)無邪気で、(ある部分で)純粋な美少女ではなく、ある程度無邪気で、ある程度純粋な、気持ちの悪い少年だったらどうなのか、ということだ。
    犬木加奈子の「不気田くん」(知らない人は検索して下さい)みたいな主人公だったらどうなのか、ということだ。
    賭けてもいいが、この漫画の主人公に決定的な違和感を抱きつつも、何だかんだで温かい目で見つめていた読者の大半が、「てめえ、そんなの愛じゃねえんだよ」と不気田くんを叩き、「許せない」と糾弾するだろう。

    いや、私はそうならない自信があるよ。
    なぜなら不気田くんが大好きだからである。

    まあ、それはいい。

    それはいいのだが、人の愛(ないし人が愛と呼ぶもの)の基準なんてひどく曖昧で、危ういものだ、ということが私は言いたい。
    であるから、誰かに対して愛だの愛じゃないだの、簡単に言っちゃいけないわけ。
    でも、さすがにこれは…となるでしょう、この漫画を読むと。
    そういう漫画。
    可愛さという単純だけれど強烈な毒でもって、愛の定義に揺さぶりをかける漫画。

    彼女が愛と呼ぶものを、あなたも愛と呼びますか、と。

    まあ、愛はときに凶暴で、人なんて簡単に殺_す。
    私は、そう思うけどね。

    • 3
  7. 評価:4.000 4.0

    非凡なセンスと、それ以外の何か

    ほとんどセンスだけで成立しているような漫画だと思う。
    実際、そのセンス自体は非凡であり、一応ホラー漫画っぽい体裁をとりつつも、ホラーの決まり事、お約束、そういうものをサラッと裏切りながら、というか、むしろホラー漫画の定型というものを逆手にとって、次から次へと連作的に話を紡いでゆくその様は、ホラー漫画という枠を飛び越えて、真っ当な「芸」として成立している。
    この才能は実に何というか、現代的で、感嘆した。

    ただ、「センスだけで成立している」というのは100%の褒め言葉であるかというとそうでもなくて、裏を返せば、小手先で作品を転がしている、というような印象も受けた。
    このあたりは、賛否、というか、好き嫌いがあると思う。
    「センスだけで何があかんねん」と言われれば、私はそれに対するまともな抗弁を持たない。
    しかし、三十年以上ホラーとベッタリで生きてきた経験上、ことホラーというジャンルにおいては、作り手のある種の偏執、いくぶん綺麗に言えば、恐怖や怪異に対する愛着や愛情みたいなものが、露骨に作品に出る。
    ホラー漫画における「センス以外の何か」とは、そういう部分だと私は思うし、私がホラー漫画に求めているのは、むしろその「何か」であるような気がしないでもない。

    • 3
  8. 評価:4.000 4.0

    設定の巧妙さ

    孔明が現代日本にタイムスリップする、というシチュエーションコメディ。

    設定一発の作品だが、巧みなのは、場違いな孔明、という設定それ自体ではなく、孔明に売れない歌手のプロデュースをさせる、というポジショニングの方だと思う。
    この発想が絶妙である。
    実際、作品として、歴史上の人物が現代に、というのはさして目新しくもないが、その人物に「何をさせるのか」というのはなかなか難しく、その点、本作は成功していると思った。

    プロデュースの戦略も、実際の孔明のエピソードを上手く絡めていて、作者の孔明愛、三國志愛が感じられる。
    私は三國志に明るくないが、詳しい読者は、さらに楽しめるのではないかと思う。

    • 6
  9. 評価:4.000 4.0

    安心感のあるホラー

    心霊が題材であるので、一応、ホラー漫画に分類していいかと思うのだが、怖がらせることではなく、安心させることに主眼を置いている、と言って差し支えないくらい、安定的な作品である。

    ちょっと語弊があるかもしれないが、この安心感は「水戸黄門」なんかのそれに近い。
    ある種、パターンというか、善良な人間は最終的にはそれほど酷い目には遭わないだろう、という安全圏から作品を眺めることが出来るわけである。
    それがいいかどうかは別として。

    真っ当に怖がらせるホラー、笑わせにきているホラー、心温まるホラー、まあ、色々なホラーがあってよかろうと思う。
    本作、ほっとするホラーとしては、そのクオリティーは保証する。
    ただまあ、それが個人的な趣向に合うかというと、残念ながら、そうではないのだれど。

    • 5
  10. 評価:4.000 4.0

    硬派な力作

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    妻が亡くなり、自らも癌に侵されて余命半年を宣告された男のもとに、14年前に失踪した娘が他殺体で発見されたという知らせが届く。
    殺_人の時効まで、あと半年…というストーリー。

    実に硬派な漫画で、大規模なトリックとか、猟奇的な動機どか、そういうのはなく、あくまで現実的な枠の中で、一人の男が執念を持って素人捜査をやり遂げる様を、丹念に描いた力作である。

    最初は冷たかった警察サイドが、主人公の必死さに打たれて力を貸してくれる描写や、主人公がかつて心を通わせることが出来なかった娘の本心が、捜査の中で明らかになる過程も、胸が熱くなる。

    ちょっとモノローグが多すぎるような気もするが、まあ、よしとしよう。
    いささか都合のいい展開も、主人公の執念を思えば、神が味方してくれたということで、よしとしよう。

    ただ、ラストは主人公、死ななきゃ駄目だろう。
    私は別に、何でもかんでも登場人物の死を願うような猟奇的な人間ではないが、どういったって、主人公の死をもってしか閉じられない作品というのはあって、本作なんかは、その典型だと思うのだが。

    • 2
全ての内容:★★★★☆ 21 - 30件目/全144件

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