5.0
本作は、毎回きれいなカラー表紙があるのが素敵ですね。以前は黒い花を咥えていた沙織さんが、今回は
白い花を手にしている。本作はこういった時間の推移による変化の対比表現が細やかです。
以前は、咥えていた黒い花が次の回の表紙で武頼の肩の上にのっていましたが、今回は沙織さんの白い花がどうなるのが気になります。
私は電子で買いつつ、単行本も購入させて頂いているのですが(笑)単行本の表紙には毎回花が登場し、その存在、対比も意味深です。
例えば5巻と6巻。
5巻は純と武頼のツーショット。二人の周りには青(紫)のアネモネがあります。6巻は純と真山くんのツーショット。こちらは純がピンクのチューリップを手にしています。
青のアネモネの花言葉は「あなたを信じて待つ」。
ピンクのチューリップの花言葉は「愛の芽生え」。
注目したいのは、純が青のアネモネには触れていないという点。どこか弱々しく、花びらが散ってしまっているのもあります。一方ピンクのチューリップは活き活きと咲き、純が茎を両手で掴んでいます。この描写から、純が武頼への「あなたを信じて待つ」という気持ちを手離して、真山くんへの「愛の芽生え」を手にしたという風に読み取れます。(7巻ではどんな花が採用されるのか楽しみです。)
武頼自身の変化はありつつも、純が一番欲しい質問の答えについて、武頼は第32話(1)にて「子供 迷っているし 悩んでいる」「でもほんとに ちゃんと考えているんだ」と父親に告げていますが、この答えは第1話(4)の「…何も考えてないわけじゃないよ」や第21話(1)「子供をつくるかどうかの答えをまだ出せなくて」から実質的にほとんど変わっていない現状。「あなたを信じて待つ」のアネモネが、しおれてしまっても仕方がないのかもしれません。
一方真山くんは、自立のために一人暮らしを決め、人に弱さを見せて頼るという力も身に付け、ものすごい速度で成長しています。
第30話(1)で真山くんが睨み付けて、それを意に介さない武頼、というシーンがありましたが、「泰然とした大人の武頼」と「感情的で未熟な真山くん」という対比にも見えますし、「ライバルの脅威に気付かない鈍い武頼」と「ライバルとの差をきちんと認識して、ハイペースで成長する真山くん」という対比にも見えます。
細やかな演出も毎回楽しみです。
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