5.0
心の闇に迫る
絵柄はちょっと古めで癖があり、綺麗だったり可愛かったりしないので慣れるまで時間が掛かるかもしれないです。
内容は児童虐待をメインに取り巻く環境や様々な人について描かれていて、登場人物の言動にリアリティーがあります。
大人であるが故の汚さや醜さ、1人で生きていけないが故に抵抗しきれない子供の悲痛な感情がしっかりと表現されていました。
他の作品のように綺麗事だけで終わらせず、その先にある苦痛や諦め、葛藤、心の叫びがあり、胸に響きます。
当方も義務教育終了まで虐待・苛めにあってツラい思いをしてきたのですが、この作品には当時伝えたかった思いや言えなかった言葉がたくさん詰まっていてとても共感できました。
何よりも心に響いたのは、当時私が伝えたくても上手く言葉に出来ず言えなかった事を、恵子ちゃんが口に出していたところです。
この作品の救いはそんな心の叫びまでちゃんと描いているところではないでしょうか。
当時の辛さを呼び起こされながら読み進めていくと、自分が伝えたかった言葉が並んでいて、少しだけ胸がスッと軽くなる感覚を覚えました。
この作品は本当に色んな人に読んでもらいたいです。
そして考えてほしい。
しっかりと子供に向き合ってほしい。
子供だからって何も考えていないわけではないことを知ってほしいです。
1人で生きてはいけない事をしっかりと理解しているからこそ親から離れられないのであって、1人でも生きていけるのならいつだって逃げ出したいのです。
大人になったら大人の考え方しか出来なくなるのは悲しい事なのかもしれません。
勿論、しがらみもたくさんあると思います。
仕方ない事だってあると思います。
でも、子供だって色んな事を諦めながら生きているんです。
それが大人にとってどれだけちっぽけで些細な事だとしても。
この作品を通して、そういう思いが少しでも伝わればいいなと思いました。
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