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5.0
これがBL漫画であることの意味の深さよ。
久々に胸を撃ち抜かれました。ファーストシーンは寺田克也氏のタッチを思わせる曲線の、美しい唇のアップ。劇画調の青年誌漫画のように初っ端から流血暴力シーンが続きますが、これは厳然としたBL漫画です。例えばヤンキー抗争や格闘技漫画などのほとんどが、男性の闘争本能を満たすために「暴力」を描くので、そこには血の匂いや男性の体臭が立ち昇ってくるような惨たらしさやリアリティがあります。しかし、この漫画の暴力シーンは、「絵」を、姿を描くために、その卓抜した画力を費やしている暴力シーンなのです。次々と輩をフルボッコにする椿君の姿は、異常なまでにドライでスタイリッシュです。ストーリーそのものも、カットの切り替えや構図、過不足ないセリフ運びのおかげで、日本の漫画のよく言えば王道、悪く言えば何度も見たことのある使い古された設定なのに、何故かとても新しいと感じます。初登場の椿君は、片目を隠したむさ苦しい昭和の番長スタイルですが、皆さんどうか騙されたと思って、ココはしばらく我慢して読み進めてください！確かに前歯も臼歯も全部ギザギザでサメだし、瞳孔は爬虫類だし、「これSF物？遺伝子操作されちゃったの？」的な外見ですけど、ちゃんとビフォーがアフターになるんです…髪型を変えた途端（これまた漫画のよくあるアレだが）いきなり、何でもないシーンでも無駄にフェロモン放出してやがるセクシーモンスターにバージョンアップするんです…。そんな椿君なのに、中身が恋愛や性に対して「圧倒的無垢」なところがまたこの漫画の肝ですね。椿君が微妙ーな夢を見た後の解説が秀逸で、その言葉の選び方に思わず膝を打ちました。現実の少年だったら確かにこんな風にごく自然にモヤモヤし、シンプルに「これ何だろう？」でしょう。ましてや、そうそう安易に同性同士の性行為に繋げたりはしないはずです。BL＝少年同士の恋愛というのならば、その根本を改めて問いただしてくれるというか、過激な性描写がメインのBLに慣れてしまった自分、「そういうもん」がBLの全てだと認識していた自分が恥ずかしくなるような、誠に良い漫画に巡りあえました。BLだけではなくノンジャンルでオススメしたい！それにしても、椿&兜ほどのお似合いのBLカップルは「セルジュ&ジルベール」または「竜一&二葉」以来だと思います。2人のカラー表紙はどれもため息が出る程美しく、そしてどうにも切ないです。
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