5.0
抗えない人生。
懐かしく読みました。
欧彦は担任の笹尾との情事で身も心も開発され
段々と危ない世界にハマって行きます。
娼年は抜け出すことは出来るのか。
同級生の彼女との接点が唯一
欧彦を現実の世界に繋ぎ止めておける存在なんだけど
彼女も蜘蛛の巣にかかった様に次第に堕ちて行く。
でも、純粋さ故に唯一の救いです。
ヤクザの並木もバイセクシャルでいいですね。
危ない男だけど笹尾のことは昔から手に追えない様です。
欧彦の同級生である小暮が並木に抱かれ
どうしようもなく狂って行く。
みんな性で繋がっていてまともな人間が見当たらない。
そもそもまともとは何なのか。
普通って?
みんな何かしら抱えていて狂ってます。
私は加夜子が好きです。
政治家の私生児として生まれ
自身で人生の選択を許されず籠の鳥の様に儚げ。
好きな人がいながら、諦めなきゃいけないことを知っていて自分の与えられた人生に逆らわない。
ある時、ヤクザの息子との縁談が持ち上がります。
自分は駒だと、パイプラインだと泣き叫びますが抗えないことを承知している。
生まれとはこういうものだと読み手も思い知るのです。
しかしながら、夫になる人物も同じく
自身で人生の選択が許されず、ヤクザになるしかない抗えない人生を孤独を紛らわしながら生きて来たのでした。
太陽の下を歩けない人生。色々なものを諦めなければならない虚無感。
加夜子もまた日光アレルギーという性質上
太陽の下を歩けない。
似た者同士のふたりが抗えない人生を共に歩むことに気付きがある。
高口先生はこういう展開、本当に上手いなぁと思えるのです。
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