5.0
少年ホラー漫画という発明
ホラーと相性がいいのは基本的に少女漫画であって、少年漫画ではないと思う。
いくぶん偏見込みで言えば、おどろおどろしい情念や執着みたいなものは、やはり、女性のほうがよく似合う。
「幽霊」と聞いてパッと思い浮かべる絵というのは、多くの人が、女性なのではなかろうか。
そういうことである。
単純に、絵の問題をとっても、「少年漫画の絵」でホラー、というのは難しい。
鳥山明や尾田栄一郎や青山剛昌の絵で描かれたホラーなんて、何かピンとこない。
ちなみに、荒木飛呂彦はピンときすぎて困る。
だから、この漫画は異色であり、傑作であると思う。
はっきり言って、「ぬ~べ~」なんか(というのは失礼だが)より怖いホラー漫画や面白いホラー漫画は、腐るほどある。
しかし、ホラー漫画というジャンルを、少年漫画のフォーマットにこれほど見事に落とし込んだ作品というのは、他になかったのではないか。
あくまで「少年漫画の絵」であり、極めて典型的な、そして健全な、少年漫画としてのヒーロー像があり、バトルがあり、ギャグがあり、ラブコメがあり、しかし、ギリギリのところでホラー漫画でもあるという、その奇異でとっちらかったバランスは、非常に素晴らしい。
夢中になれた少年時代の感謝を込めて、星をひとつ足した。
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