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まさかの網浜成長物語になったのか?いやたいしたもんだよ。
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まさかの網浜成長物語になったのか?いやたいしたもんだよ。
第一話のサブ主人公がまたまた登場ですが、リーマン・ショック後の不況下の色合いが濃いこの作品においては、何とも景気のいい話……と、思いきやこれはちょっと……というどんでん返しがあります。
あらためて思うのが、「だし」の大切さですね。料理はだしが命です。
あまり関西弁の作品が少ない作者さんの印象でしたけど、この作品は関西のおばちゃんたちが主人公です。
家庭料理ではなく、お惣菜屋さんが舞台っていうのもユニークですね。(「豚のしょうが焼き」も社食が舞台でしたが、社食のメニューに関してはつまらんものという描き方がされています)。
何とも切ない感じが、90年代の短編作品を思い起こさせる内容でした。食材を通して、記憶の中にある家族と再び出会える瞬間。ひじきのように甘くほろ苦い作品です。
わたし自身も何でもかんでもごっちゃに煮てしまうのが楽でいいのですけど、きちんと食材の特徴をつかんで「炊き合わせ」にするとより美味しいものが出来そうですね。人間関係も同じかもしれません。相手の個性をきちんと見分けて、長所を伸ばしたり短所を逆に有益なものにすると家庭も職場もうまくいくと思います。
お惣菜がメインの物語で、この作品もそうなのですけど、「ソーイングブック」に連載していた頃の作品のように、洋服に関するお話をまぜこんでいるのがこの作者らしいです。メインはむしろファッションですね。おからも料理次第で、色々使えるんですよね。もらい物のおからを腐らせてしまったことに申し訳なくなるお話でした。
リストラと開店休業中の会社というのが、またこの時代らしいお話でした。でも乾いた雑巾はまた使えるし、悪くないよなぁって。世相が変わったからこそ、感想も異なってきます。
「心の病」は作品当時のかなりホットな話題だったと思いますが、家族の人情物語がこの人の作品の大きな柱だよなぁと感じる話です。90年代の短編に近いテイストですね。
専業主婦と働く女性という、ジェンダー観の話が出てきますが肉じゃがとじゃがいもの煮っころがしを比較し、食材自体に男と女、食べ方にも男と女を暗喩的に使った表現がうまいと思いました。
正社員とパートの時給や待遇の話が出てきて、ひでえ会社だなぁという印象ですが、この時代最低賃金が600〜700円台でしたよね?最低賃金が1000円にもとどく今の時代、果たしてこの会社はどうなっているのか。