5.0
こんなホラーにはきっと二度と逢えない
金が必要な二人の女子が様々な裏バイトに手を出すのだが、毎回そのバイトがホラーである、という漫画。
あまりに凄い作品で、脳が何かしらのダメージを受けたような気さえした。
これ以上のホラー漫画というのを、ちょっと思いつけない。
恐怖の題材とその語り口も、また、恐怖描写そのものも、オリジナリティーとバリエーションが突出している。
ホラー漫画は結構読んできたが、どこでも見たことがない、というホラー表現をこれだけ連発された記憶がない。
それでいて、グロ描写には全く依存していない。
本作はホラーを「気持ち悪い」にも「痛い」にもすり替えない。
ただただ、愚直なまでに、あるいは崇高なまでに、「怖い」で勝負しようとし、そして、圧勝している。
恐怖に殉ずる。
その気高さと、圧倒的な自信と、技術。
主人公二人のゆるい雰囲気と、硬質なホラー描写の絶妙なバランスといい、はっきり言ってセンスの塊のような漫画だし、あまりに完成されすぎていて、ホラーとは別の意味で、何だか怖い。
読む者すら拒絶するような完璧さを感じてしまう。
この世に、まだ私の知らなかったホラー表現がこれほど豊富にあったことに、そして、それがたった一人の人間によって生み出されているという事実に、私はホラーファンとして、心の底から感動した。
ホラー漫画が本当に怖かったのなんて、子どもの頃だけだ。
もうあの気持ちは永遠に戻らない。
それは、ずっとわかっていた。
わかっていて、それでも私は、惰性のような愛着だか愛情だかを捨てきれずに、ホラー漫画を読み続けてきた。
この漫画に感動できたのは、数多のホラーを読み漁ってきたからこそだ。
これが初めて読んだホラー漫画だったなら、私はここまで深く何かを感じることは出来なかった。
幼い頃のような恐怖は味わえなくても、何度飽きても失望しても、ホラーを読むのをやめなくて、本当によかったと思った。
ホラー漫画を読んでそんなことを感じたのは初めてだし、二度とないだろう。
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