4.0
カルトを巡るあれこれ
この世で最も嫌いなもののひとつがカルト宗教である。
だからもう、主人公がそれに立ち向かうという設定だけで、私は全力で応援してしまう。
妻をカルト教団から取り戻すなんてもう、感情移入の度合いが激しくなりすぎてヤバい。
本作の主人公は、一見すると何かイマイチやる気のない感じが、逆にリアリティーがあってよかった。
たぎるほどの正義感とか、燃え盛る妻への愛とか、そういうものをストレートには描いておらず、かなり抑制した描き方をしながら、その根っこには譲れないものがちゃんとあるのだ、ということが伝わる。
私はそういう表現というのが好きだし、特に「大人」に向けての作品は、そうであるべきだとつくづく思う。
カルト教団の造形も、まあ、いくぶん漫画的な誇張というか、「いくら何でもそりゃないだろ」というところはあるにせよ、その薄気味悪さ、躍動的な嫌悪感を撒き散らす様は、なかなか面白かった。
余談だが、最近「カルト・オブ・ザ・ラム」という「カルト教団の教祖になる」というゲームをやって、これがたいそう面白かった。
カルト宗教大嫌い、なのに、カルト教団の教祖になるゲームは嬉々として遊べる。
人間の(私の)こういう柔軟性というかいい加減さというか、実に興味深いし、恐ろしい。
「自分だけは大丈夫」なんて思わずに、肝に銘じて生きていかないとね。
いや、マジな話。
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