色々と詰めが甘い
未成年を伝統や繁栄のために…って今時あるんですかね?まぁこれがなければストーリーが成り立たないし設定自体はいいと思います。
でもその割に登場人物たちの服装持ち物、街中の風景なんかは普通だし、婚儀とか上京とか、色々と準備があるだろうことも一瞬で済んで背景描写ほぼ無し…
もっとスポットを当てて描けること、あったと思うんですよね。
嫁未定のまま婚礼時期が迫り、準備だけが着々と進む様子に焦燥感を募らせる当事者や街の人の心情とか。
天鬼家が名家なら、姉妹の実家もそれなりのお家でしょうが、1人が嫁ぎ、もう1人が街を離れるのなら誰が継ぐ筈だったのか、1人が事故ってこの先どうなるのかとか。
親の視点では、晴れ姿を見る筈だった日に娘が姿を消し、自分の電話でもう1人の娘が死にかける悲劇が起きたその苦しみとか。
第三者視点では「妹じゃなくて良かった」と言うシーンがありましたが、雨の中を花嫁衣装のまま消えて、自分を探しにきた姉が死にかけてるのに自分は予定通り結婚するわけですよね。そんな旧時代的な土地なら花嫁を叩く人の1人や2人、噂話の1つもあるんでは?とか。
主人公の彼女は「妹を苦しめ、人を騙す良心の呵責」に加えて「姉を死なせかけても周りから愛される妹花嫁」を演じつつ、「死にかかっても周りから悲しまれない姉の自分と、姉を死なせかけても愛され結婚を祝福される妹」を目の当たりにしてる筈。なのにその苦悩や葛藤に苦しむシーンがすごくあっさり。結末も取ってつけたような呆気なさ。え、それだけ???って消化不良です。
あの形のラストにするにしても、相手や妹の心情はきちんと深く描くべきだと思います。
主人公の言うように「素直で優しい妹」なら、姉に彼を奪らないでと言ってしまった彼女にだってきっと後悔や苦悩があっただろうに、手紙とも呼べない紙切れ一枚で終わり。姉妹で本音を語り合うシーンが最後まで描かれなかったのも残念です。
死にかけの妹に成り代わり好きな人と結婚して、妹が目覚めたら身を引いて自分の人生に戻るってオオゴトなのに、まるで簡単で軽いことのように見えてしまう。
深掘りせず切ない恋心の話をサラッと読みたいだけの人には良いかもしれませんが、画は綺麗だしストーリーの大筋は面白く、楽しんで読み進めたので、色々な設定や描写が甘いのが勿体ないです。
- 18
3.0