4.0
reverse、そしてrebirth
冒頭、意味深な言葉が並ぶパソコンの画面。首の噛み跡と、その上から巻かれている防護カラー。
表紙のコピー「俺がΩだったなら、お前を幸せにできたのに」の、お前と俺とは誰なのか。
陰りのある絵柄や意味ありげなセリフばかりでとにかくずーっと暗いし、過去と現在が交錯して描かれるのでいつの話なのか一瞬わからないしと、読み進めるのに少し努力がいるので読む人を選びますが、ストーリー重視の方ならこんなオメガバースもあるんだ!と興味深く読めると思います。
吐木幸村(はばき ゆきむら)、28歳。α、警官。体調が不安定な番のケアをするために、捜査一課への抜擢辞令を2回も断り所轄にとどまっている。新しい配属先でΩ殺○事件を担当することになる。
吐木の番であり幼なじみの化野円(あだしの えん)。賞への応募作の下読みや他の作家にプロットを提供するゴーストライター。高校生で小説家としてデビューし高く評価されたが、なぜかもう創作活動はしないという。
吐木という番がいるのに番以外にもフェロモンが有効であるばかりか、抑制剤も効かないという特殊な体質のΩ…のふりをしている。
事件の捜査の進展と、ふたりの過去が平行して描かれる。
犯人の目的は。犯人像は。
円が吐木に頑なな態度をとり続ける理由は。書いている手記はなんなのか。
孤独だった円にとっての吐木の存在の意味や、吐木を救うために捨て身でしたこと、そしてその選択にずっとさいなまれていることがわかると、もう胸が痛すぎて。
円の嘘の大きさにちょっと圧倒されるけど、期間限定かもしれなくても吐木のΩになれるという理由も潜在的にあったのかもなぁ。
誰にも言えなかった円の苦しさ、つらさがすべて終わる24話から最終話26話のカタルシスがハンパない。
描き下ろしでようやく幸せそうなふたりを見て、本当にホッとした。
吐木は一課に異動し、円はまた小説を書き始めたようだし。
とにかくハッピーエンドでよかった!!
タイトルは過去を後悔しずっと巻き戻したい(reverse)と思っていた円が生まれ変わる(rebirth)という二重の意味かな。
図形の「円」や歩行者専用の標識を見て円がふと孤独を感じるところや、吐木がバース性の人口比グラフを説明するシーンなど作者の考えにハッとさせられることも多く、何度も読み返して、その都度考えさせられる作品です。
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