5.0
全ての先達を過去にする
凄すぎる。
どんな賛辞も追いつかないくらい、凄すぎる。
まず、冒頭のシーンから思った。
「これ、映画だ」と。
カット(漫画で言えばコマ、ということになるが)のひとつひとつが端正で美しく、それにいたく感心した。
物語の内容以前にこのカットの飛び抜けた技術が、作品を根本で支えている。
ストーリーの骨子は、タイムリープと「寄生獣」的な入れ替わり、いずれも決して目新しいものではないのだが、圧倒的な完成度が、全ての類似作品を単なる過去にしている。
「ループものは腐るほどあったかもしれないけど、これより面白いループもの、あった?」とでも言わんばかりの勢いである。
こちらとしては、「いいえ、ありませんでした、すみませんでした!」と言うしかない。
とにかく巧妙に計算され尽くした作品で、ループの設定ひとつとっても、抜群に上手い。
「ループもの」の弱点のひとつは、主人公(たち)が死んでも「どうせループしたら生き返りますんやろ」という緊張感の欠如なのだが、「ループして戻る地点の時間が徐々に遅くなる」というシンプルな仕掛けで、ループものの宿命を完璧に回避しつつ、見事な緊迫感を生んでいる。
こんなのは一例に過ぎず、全編に渡って、魅力的なギミックが満ち溢れている。
ストーリーの作り込みの緻密さも尋常ではなく、マジで作者の頭の中どうなってんだ、というレベルである。
ただ、謎があまりに重層的であるが故に、読者としては「わからない」という状態がかなり長く続く。
作品に隠された真意やメッセージがわからない、ということではなく、真相や黒幕がわからない、ということですらなく、ただただ、今何が起きているのかが、圧倒的にわからない。
何が凄いって、「わからないのに滅法面白い」ということだ。
張り巡らされた膨大な伏線を綺麗に回収し、ちゃんと「わかる」ところに着地させるのも大したものだが、むしろ「わからない」道中において圧倒的に楽しませてしまう技量、力量に舌を巻いた。
ストーリー的にも、画としても、毎回毎回見せ場がある、というか後半なんてもう、見せ場しかない。
これ、連載で読まなくてよかったー。
一週間待ちきれなくて、多大なストレスになっていたと思う。
いやー参った。
本当に参った。
こんなに凄い漫画、そうあるものではない。
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