4.0
生きてゆく者たちのホラー
正直、今どき「ホラー漫画」のネタなんて、あらかた出尽くしているんじゃないかと思う。
そもそもホラーなんて、幽霊が怖がらせるか、化け物が怖がらせるか、異常な人間が怖がらせるか、ざっくり言えばその三択で、時代がこれだけ進んでしまえば、その中のバリエーションだって新鮮なものは減ってゆく。
これはもう、仕方がない。
私はホラーが大好きだから、このジャンルには頑張ってほしいのだけれど、難しいよな、とも思う。
それでも作品として何とか刺激を生もうとするから、ホラーの表現は、どんどん過激になってゆく。
これももう、仕方がない。
しかし、「過激であること」で勝負しようとするホラーの多さに、ちょっと食傷気味ではないだろうか。
ホラーファンは、特にだ。
そんな時代の中にあって、本作は、とても爽やかで、優しいホラー漫画だと感じた。
「いかに怖い死者を描くか」ではなくて、「死者に向き合う生者をどう描くか」という漫画だと思った。
それは、誤解を恐れずに言えば、少年漫画の立ち位置として、とても正しいと思う。
冷たく聞こえるかもしれないが、死者は、死んで、終わりだ。
けれど生きている人間は、死を乗り越えていかなくてはならない。
どんなに辛くても悲しくても、いつか死者たちに手を引かれる日が来るまでは、今日を、明日を、行進していかなくてはならない。
オカルトホラーでありながら、これはあくまで生きてゆく者たちの物語なのだと、タイトルからそれを堂々と表明したこの漫画が提示した、ホラー漫画らしからぬ温かさや優しさが、私はわりに好きであった。
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