4.0
荒波続きの運命
人は皆、長く人生が続いたとしても、たぶんそれが終わる時、あっという間に感じるんじゃないだろうかと、想像してみたりします。
この作品も長編ですが、読後はその長さを感じさせないものでした。
どんな航海も2人で乗り越えて欲しいと、父が名づけた美しい双子姉妹の真帆と澪の、戦後から初老までの波乱を描いています。
姉妹を大切に思えばこその行動で2人の明暗が分かれ、苦しく長い年月を重ねます。
お互いの様々な心情から、疎遠になっていきますが、同じ男性を愛し、その男性もどちらも手離さないから、姉は愛人の向こうに、妹は夫の向こうに、常に存在を感じ苦悩します。
自分の分身の様な大切な双子だからこその葛藤が丁寧に表現されています。
それにしても本当、美人双子姉妹を翻弄させるこの男性は酷い。
どちらか1人だけでも贅沢やろ!と。
津雲先生お得意の駄目男の中でもトップクラスです。
主要人物が和服関係を生業とするので、綺麗なお着物がたくさん出てきます。
この悲しいお話の、ささやかな癒しです。
津雲先生も生前、和服を愛用されてたらしいのでご本人も楽しく描かれたそうです。
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