5.0
みんな、自分勝手。でもすごく人間らしい。
作者様の作品はいくつか読んでいて『灰かぶりコンプレックス』等、好きな作品もあるのですが、『1番印象に残る作品は?』と聞かれたら、この作品が真っ先に思い浮かぶと思います。
高校生である有岡は、初めて本気で好きになった高校教師・三島を抱いた。
自分には見向きもしない、そして他にずっと密かに想いを寄せている親友がいると知り、苦しくて悔しくて、夢中で自身の想いをぶつけた。
それが無理矢理な行為である事に気付いたのは、事後に力なく横たわり、怒りをあらわにする三島を目の当たりにしてからだった…。
有岡は後悔し、反省して、三島を諦めようとする。
三島は有岡に対して怒りの感情を覚えるが、自身の親友への実らない恋心を重ね、同情の様な複雑な気持ちから全てを拒絶する事が出来ないでいた…。
自分の想いをぶつけて到底許されるはずのない行為に及んだ有岡も、有岡を拒絶する言葉を吐きつつ、次第に同情とは違う感情に変化する事に戸惑う三島も…
そして三島の親友であり想い人である津田も、三島の友達の蓮も…
他者を思いやるようでいて、みんな少しずつ自分勝手で…それがとても人間らしく、綺麗事だけではない事にリアルさも感じて、私にとっては感情が激しく揺れ動く作品でした。
『綺麗事だけではない恋心』に切なくて苦しくて…でも最後には、温かい気持ちにもなれる今作。
印象強く心に残る作品として、未読の方には是非お勧めしたいです。
- 5