5.0
心地悪い心地好さ
性を肯定する、愛を肯定する、自分を肯定する、正しい筈の事なのに、それらはなんて難しいことなんだろう。主人公達の抱える葛藤がとても深いもので、重苦しさ一辺倒になりそうなストーリーを、さらりと描ききってある。安直なハッピーエンドに繋げて終わらせない所も寧ろ好感が持てる。読後のスッキリ感はなくとも、掘り下げればとても奥深いであろうテーマを、ふわっと投げかけられる感は決して不快ではなく。心地悪さが心地好い。
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性を肯定する、愛を肯定する、自分を肯定する、正しい筈の事なのに、それらはなんて難しいことなんだろう。主人公達の抱える葛藤がとても深いもので、重苦しさ一辺倒になりそうなストーリーを、さらりと描ききってある。安直なハッピーエンドに繋げて終わらせない所も寧ろ好感が持てる。読後のスッキリ感はなくとも、掘り下げればとても奥深いであろうテーマを、ふわっと投げかけられる感は決して不快ではなく。心地悪さが心地好い。
嗜虐的なエロ描写が散りばめられてはいるものの、サスペンス要素の強いシリアスな物語性の方が印象的。人身売買という社会的暗部に潜入する主人公の任務が、次第に過激さを増していくことや、彼自身を含め、幼くして過酷な運命を背負う者のエピソードなど、フィクションとはいえ、若干陰鬱な気持ちにもさせられる。主人公が感情を抹殺しながら生きている人間という設定ゆえに、終盤において、そんな彼が少しずつ感情を取り戻し、人間らしさを獲得しようとしていく姿に、何がしらの救いを感じる。光と闇、搾取する者と搾取される者が対立する世界の中で足掻こうとする人間として。
構成が実に素晴らしいと思う。速いテンポで展開していくストーリー、次第に解き明かされていく哀しくも切ない過去、浮かび上がる主人公達の苦悩と葛藤に心を締め付けられながら迎えるクライマックス。思わず嘆息してしまうようなラストシーンに至るまで、印象的な画や台詞に満ちた場面展開は、まるで一本の映画作品を見終わったかのような充足感。色、がキーワードになっているだけに、モノクロの画の中に自然と色彩を意識させられたり。無駄なくこの長さで物語を綺麗にまとめあげているのも凄いと思う。救済という名の愛を描いた上質なドラマ。救われたい、救いたい、愛されたい、愛したい。主人公達三人が救われることを祈らずにはいられない。
中世ヨーロッパ風世界観はもはやファンタジーの王道とも呼べるくらいありきたりなのに、
高い画力を持った作家に描かれると、やはり引き込まれずにはいられない魅惑の世界だなとつくづく思う。
憧憬を抱き続ける何か、というのは個人的により異世界に近いほど、なのかも。
背景から衣装小物は勿論、美麗キャラ満載は眼福の一言に尽きる。
非現実的だけれども絶妙なバランスの頭身や、中性的だが女性的ではない身体描写等、
美貌表現の理想値、好みの中央値のようなものを設けるとしたら、
作家の造形センスはそれに近いような安定感というか安心感を感じる。
綺麗、可愛い、エロい…ただ直感的に、視覚的に捉えるままに愉しめる作品。