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作品レビュー
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1 - 10件目/全145件

  1. 評価:4.000 4.0

    消えた風景を

    爆笑するような種類の面白さではなく、懐かしさに心暖まる、という感じのエッセイ漫画。
    若い読者が読んでもいいが、描かれている時代(昭和)からすると、本来の対象年齢はかなり高い(ドンピシャなのは四十代後半くらいか)。
    イメージとしては「ちびまる子ちゃん」に通じるものがあるが、男性読者は、本作の方が共感ポイントは多いかもしれない。

    すごいな、と思うのは、風景の再現度だ。
    これには、二重の意味がある。

    ひとつは、昭和という時代の風景の再現。
    当たり前だが、昭和の風景というのは、今はもう、消えたものだ。
    家屋や町並みや生活用品という意味合いでの風景もそうだし、人間の姿という意味でもそうだ。
    それを、漫画作品のフォーマットの中に的確な精度で落とし込むのは、なかなか出来ることではない。

    もうひとつは、「あの頃の僕ら」という風景の再現度である。
    誰にでも子ども時代はあるし、誰にでも思い出はあるが、特別なイベントではなく、「あの頃」の普通の日々について語ることで、それを作品として成立させるなんてね、無理よ。
    それを可能にするには、普通の日々を普通ではない角度から見つめられる目がなければならない。
    それが遠い過去のものとなれば、単なる記憶力とは別の、子ども時代の記憶を自ら再構築する才覚がなければならない。

    長閑でノスタルジックなエッセイ漫画として、失われた風景を描出することに成功した良作だと思う。

    • 2
  2. 評価:4.000 4.0

    どうかと思うけど

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    「闇金ウシジマくん」本編ではウシジマくんの宿敵と言うべきポジションにいた、滑皮を主人公に据えたスピンオフ作品。
    ラーメンが題材にはなっているけれど、本格的なグルメ漫画というわけではなく、あくまで滑皮のキャラを逆手にとった裏社会コメディみたいなのが基本線で、ラーメンはそれこそ軽い「味つけ」という位置づけ。
    まあ、それはいいのだが。

    ちょっとどうかと思うのは、本作において付与された滑皮というキャラのイメージである。
    というのも、私は「ウシジマくん」本編で、滑皮という人間が嫌いだった。
    理由は単純で、ウシジマくんにひどいことをするからである。
    あの漫画は、主人公のウシジマくん自身が決して「善人」ではないわけで、どこに「悪役」をもってくるのか、というのは難しい問題だったはずだが、それをいとも容易くクリアして見せた滑皮という男は、まさに出色の悪役であった。
    それが、どうだろう。
    このスピンオフで、ちょっと好感度が上がってしまうような気がする。
    感じ方に個人差はあるにせよ、滑皮という男のキャラの変貌ぶりは、いかがなものか、と。

    ただ、そのような難点はあるものの、スピンオフとして原作ファンに嬉しいサービスもあった。
    それは、本編で登場した(往々にして悲惨な末路を辿った)キャラたちの「その後」が描かれている点である。
    暴走族の愛沢、情報商材詐欺師の天生、オサレエンペラーのG10(お前生きてたんかい!)など、原作ファンがニヤリとする出演の数々、こういうのがスピンオフの醍醐味だろう。
    特に風俗嬢の瑞樹の登場は、本編では「ちょっと気の毒すぎないか」と思っていただけに、何だかほっとした。
    天生ハイパーメソッドで一山当ててラーメン屋で成功した愛沢が、店に来た滑皮にラーメンのアピールとか、もう面白すぎる。

    というわけで、根本のところでは難点もありつつ、脇の部分ではなかなか楽しいスピンオフであった。

    • 1
  3. 評価:4.000 4.0

    ナウでお洒落な推理ギャグ

    真っ当な推理漫画であり、真っ当なギャグ漫画である。
    これは、新しい。

    例えば「金田一少年」にだってギャグ的な部分はあるが、それはあくまでシリアスなミステリという本筋の緊張緩和の役割を果たしているだけ(ときにはそこに伏線があったりもするが)であって、基本、ギャグとしては寒い。
    「コナン君で爆笑した」とかないし、そんなの誰も求めていない。
    本作のように、推理とギャグをきちんと両立させた漫画というのは、稀有な例ではなかろうか。

    ギャグ漫画としての本作の基本線はシンプルで、典型的なボケとツッコミ、漫画内におけるある種の漫才なのだが、絶妙なリズムとテンポによって支えられており、真似できないセンスを感じさせる。
    美麗な作画も相まって、現代的で洒落た推理ギャグに仕上がっていると思う。

    星をひとつ引いたのは、話が進んでからの「VS巨悪」みたいな文脈があまり嗜好に合わなかったためだが、そんなのは些事の範疇に過ぎない。

    • 2
  4. 評価:4.000 4.0

    醜い大人、美しい覚悟

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    漫画として好きになれたわけではなかった。
    だが、いじめを題材にした中で、これほど誠実な作品には出会ったことがなかった。

    いじめが漫画の中で扱われる場合、誤解を恐れずに言えば、それは基本的にエンタメの道具である。
    過酷ないじめからの苛烈な復讐からのカタルシス。
    まあ、それはそれでいい。
    いじめをエンタメだなんて、不謹慎な!というポリコレ派の怒号が聞こえてきそうだが、そんなこと言ったら、ほとんどのミステリは殺_人エンタメだっつーの。

    この漫画は、そういう作品群とは決定的に袂を分かつ。
    本作は作品の中でほとんど何も解決しないし、いじめの被害者と加害者、どちらの味方もしない。
    「いじめられる側の味方」にならなければ、エンタメとしてのいじめ作品は描けない。

    加害者の親、被害者の親、どちらもムカつく、という非難はよくわかる。
    加害者の母親は自身がいじめられた過去から娘への嫌悪感を抑えられず、娘と向き合えない。
    被害者の母親は娘が不登校になったことから加害者への恨みを募らせ、歪んだ復讐心から暴走していく。
    父親たちはどちらも役に立たない。
    教師はもっと役に立たない。
    おいおい大人たち、しっかりしろや、と。
    それは、そうなんだけど。
    いじめを外から眺めている限りにおいて立派なことが言える大人たちも、自分の子どもが被害者に、あるいは加害者になったとき、それほど立派ではいられないのではなかろうか?
    本作が示したかったのは、いじめに直面したときに多くの大人たちが持ち得る弱さであり、醜さなのだと思う。
    その中で、被害者の母親が最後に辿り着く「自分の子どもが絶対に加害者にならないと言い切れるのか?」という気づきは、とても残酷で、でも、素晴らしい。

    犯罪を巡る論議になる度に、必ず見る意見がある。
    「自分の家族が被害者になっても、同じことが言えるのか!」というやつである。
    これ以上ない正論だが、私はその意見が嫌いだ。
    わかりやすいし、破壊力があるが、想像力を停止して反論を封じるだけのずるい意見だと思うからだ。

    悲観的な物言いになるが、いじめがなくなることは多分ない。
    悲しいことに、解決策もないのかもしれない。
    だだ少なくとも、被害者を、そして加害者を、真摯に見つめることによってしか何かが始まることはないのだと、本作から感じたのはそんな覚悟だったし、その覚悟を、私はとても美しいと思った。

    • 4
  5. 評価:4.000 4.0

    気軽に読める京極堂

    京極堂が「京極堂」になる以前、教師をしていた頃の話。
    本家のようなヘビーなテイストではなく、もう少し平和な類の謎を、中禅寺先生が解き明かす筋立て。

    この作者が漫画化した京極夏彦の作品はいくつか読んだのだが、ストーリーといい作品の雰囲気といい、原作の再現度が素晴らしく、「鉄鼠の檻」のレビューでは、原作小説にとってこれほど幸福な漫画化はそうないと思う、ということを私は書いた。
    本作は原作者に京極夏彦の名前はあるけれど、どうやら小説の漫画化ではなく、漫画オリジナルの話らしい。
    それにどこまで京極夏彦が関わっているのかはわからないが、こんなものを出すあたり、京極夏彦自身、この漫画家をよほど評価しているのだろうと想像される。

    京極夏彦の小説の難点として(まあそれは魅力と表裏なのだが)、どうしても「気軽には読めない」ということはあると思う。
    よくも悪くも、それが京極夏彦という人間の作家性であるし、京極堂シリーズの特性でもある。
    一見さんお断り、みたいなノリであり、それはまんま、京都のノリでもある。
    その点、本作は随分とハードルが低く、気軽に、手軽に読める京極堂、という作風を実現している。
    当然、それによって損なわれている部分もあるにはあるが、「ライトな京極堂」というのが本作のコンセプトなんじゃないかと思うし、それは成功していると言ってよいかと思う。

    • 7
  6. 評価:4.000 4.0

    ゾンビmeetsウシジマくん

    掃いて捨てるほどあるゾンビパニック系の作品だが、パリッとオリジナリティーがあって、面白かった。

    まず、時代性に乗っかったフットワークの軽さがいい。
    本作のゾンビウィルスは「噛まれなければ感染しない」というゾンビ界隈の伝統をあっさり破り、飛沫感染あり、とコロナウィルスの影響をもろに打ち出している。
    爆発的な感染によって起こる都市部のパニックもコロナのそれと重なるような作りになっていて、総理や都知事の造形なんかは「よくクレーム来なかったな」というレベルで現実に寄せている。
    ゾンビもので籠城と言えばスーパーマーケット、と相場が決まっているのだが、本作がラブホテルでの籠城、という舞台を選んでいるのも、何かこう、象徴的である。
    この舞台装置がまたなかなか上手く機能しており、キャラクターたちの背景とも相まって、独特の緊迫感を生んでいる。
    あくまで「今」の社会を描くんだ、という気合いは半端ではなく、本作にあっては、ゾンビはほとんどコロナのメタファーみたいな印象すら受けた。

    もうひとつ特筆すべきは、過剰なほどに殺伐とした作品の空気感である。
    「闇金ウシジマくん」の世界観にゾンビを持ち込んだ、と言えば、かなり作品の雰囲気が伝わるかと思う。
    これが実に魅力的で、こけおどしのグロ描写だけに依存するのとは全く別種の、「大人のゾンビ漫画」、と呼ぶに相応しい。
    いささか作り過ぎの感はあるにせよ、誰も彼も一筋縄ではいかないダークサイドを抱えて生きていて、特に病んだ地下アイドルの造形なんかは素晴らしいと思った。
    登場人物たちのバックグラウンドがきちんと描き込まれているだけに、彼らの激情が炸裂するシーンはほとんど感動的ですらあり、前述の地下アイドルの戦闘シーンなんかは「SLAM DUNKの山王戦かいな」と見まがうほどのドラマチックな緊張感とスピード感があって、マジでしびれてしまった。

    ゾンビ漫画の伝統を適度に打ち破りながら、このジャンルの歴史に新たな楔を打ち込んだ、新時代のゾンビ漫画。

    • 23
  7. 評価:4.000 4.0

    流石

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    私はこの作者を結構支持していて、現代における犬木加奈子の再来なんじゃないかと思っている。
    長編でも連作でもない、まるっきりの短編を読んだのは初めてだったのではないかと思うが、流石であった。

    ホラーにおいて、人間、特に子どもの「入れ替わり系」というのはひとつの話のパターンとしてあるのだが、それを綺麗にひっくり返して、狂気の所在を落としどころにもってくるその様は、シンプルながらもパリッとしていて、「これぞホラーの短編」という趣があり、満足であった。

    • 17
  8. 評価:4.000 4.0

    コンセプトアルバムとしての漫画

    個々のストーリーはちょっと小粒な印象を受けるものの、まるで一枚のコンセプトアルバムのような世界観、ポップでキュートな独特のホラーテイストは、なかなか魅力的だった。
    現代的なセンスに溢れる作品だが、センスだけで適当に転がしたような無機質さはなく、この作品世界がきちんと愛情をもって構築されているが感じられて、好感度は高かった。
    アルバムで言ったらボーナストラックでありリードトラックでもある、というような位置づけの「リビングデッド・ベイビー」はやはり頭ひとつ抜きん出ていて、素晴らしい。

    • 3
  9. 評価:4.000 4.0

    キュートでドライで潔い

    私の苦手な女性の殺し屋設定(そんなのいるわけねえじゃん、と思っちゃう)の漫画だが、なかなかどうして、面白かった。

    リアリティー、ない。
    作品の奥行きだとか、深みだとか、そういうことを言いだせば、まあ、正直、ない。
    にも関わらず、スピード感に溢れる美しいアクションと、キュートでドライな殺し屋少女の造形は、実に爽快感と清涼感に溢れていて、いやー、空っぽだけど、とても楽しい時間だった。
    印象としては、何も考えずに見られるスタイリッシュなアクション映画のそれで、「何もないこと」をストレートに楽しめる作品も、やはりいいな、と。
    そういうタイプの作品は、小手先のごまかしがきかない分、絶対的な力量・技量が、如実に作品に表れる。
    その点、お見事である。

    だいたい、タイトルが潔くていいじゃんか。
    大して深いものなんか何もないのに、「何かありそう」なことを標榜する作品が巷に溢れる中、「いや、バイオレンスとアクションしかないっすよ」という堂々たる提示は、賞賛に値する。

    • 9
  10. 評価:4.000 4.0

    錦のように、鳥のように

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    ざっくり言うと、感情と日常生活に関する知識が欠落した超能力少女が、殺し屋をさせられている、という話。
    主人公の少女は自らの左目(普段は眼帯で隠している)を見た相手を精神世界みたいなところに引きずり込む能力を持ち、その世界において無敵である(映画「エルム街の悪夢」とか、ジョジョ第3部の「デス13」みたいな感じをイメージしてもらえるといいかと思う)。

    舞台は1970年代で、話は毎回、主人公が他の子どもたちと昭和の遊びに興じる前半と、精神世界において残酷にターゲットを葬る後半に分かれている(殺し方には、主人公が前半で学んだ遊びの方法が反映されている)。
    正直、読み始めたときはいささか退屈だった。
    ほのぼのとした前半と、シュールで悪夢的な後半のギャップが魅力のひとつなのだが、「それだけでしょ」と思ったのだった。

    だが、読み進めるうちに、印象が変わった。
    登場人物たちが皆、何かしら痛みを背負っていて、その真摯な描き方に優しさを感じた。
    それは、家庭環境の問題であったり、差別の問題であったりするのだが、ここで重要になってくるのが、時代性である。
    1970年代という時代・社会を生きていた人々の、ともすれば現代の我々からは縁遠い種類の傷が、妙にひりひりと刺さる。
    その時代性、そして普遍性の価値。
    私は昔ブルース・スプリングスティーンが好きで、今でもときどき聴くのだけれど、傷ついた人々に静かに寄り添うこの漫画の立ち位置は、何だかブルース・スプリングスティーンの歌を思い起こさせた。

    ちょっと残念だったのは、おそらく打ち切りで、ラストが駆け足になってしまったことだ。
    ただ、そんな中でも、決して雑にならない終幕と、何よりも、おそらく作者がこの漫画の中で一番描きたかったのであろう台詞、「私の心は私のものよ」という主人公の台詞には、シンプルだけれど、やはりグッときた。

    ぼろは着てても心は錦、なんて言葉がある。
    その言葉の是非はともかく、どれほど困難な世界において、どれほど過酷に生きているのであれ、心だけは、自由であることが出来る。
    だから、心は素晴らしいのだ。
    私はそう思うから、この漫画を全面的に支持する。

    • 4
全ての内容:★★★★☆ 1 - 10件目/全145件

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