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1 - 10件目/全145件

  1. 評価:4.000 4.0

    ひっくり返すテンプレート

    ネタバレ レビューを表示する

    いわゆる「モラハラ夫」を扱った漫画が昨今、ちょっと辟易するほど多い。
    そういう作品を読んでいて、往々にして感じるのは、何か薄っぺらいなあ、ということだ。
    「またこのテンプレだよ」としょっちゅう思う。
    夫なり妻なりを漫画の悪役にしてつるし上げるのは好きにしたらいいけど、夫婦ってそんなに単純なものなのだろうか、と。

    本作はそういうテンプレートを綺麗にひっくり返した良作である。

    展開として、サプライズはあり得るけれど、それは「モラハラ夫と見せかけて、実は…」というサスペンス的な文脈での「どんでん返し」ではない。
    この漫画の描いたひとつの本質というのは多分、「家族の本当の姿なんて、そんなに単純じゃないのよ」ということなのではなかろうか。
    少なくとも、はたから傍観しているだけの他人が、その是非や幸・不幸を判断できるようなものじゃないのよ、と。
    その家族観みたいなものは、実に好感を持てるものだった。

    もうひとつは、「毒親」問題である。
    これも最近、本当に漫画で描かれることが多い。
    で、主人公が親をやり込める(ないしもっと苛烈な復讐をする)までがテンプレである。
    この点も、本作は、違う。
    主人公は、「何となく」母親を許す。
    このあたり、賛否あるのはわかる。
    特に、個人的な経験として親との軋轢がある読者は、「そんなに簡単にいくか」と感じるのも理解できる。
    何を何となく許してんねん、と。
    でも、私はこの「何となく」が好きだった。
    人が人を許すのに、ましてや子が親を許すのに、それほど確固たる根拠が必要なのだろうか。
    親を許せない人がいてもよい。
    親を切り捨てる人がいてもよい。
    親に縛られて人生を送る必要などない。
    私は心の底からそう思う。
    しかし、許せなかったつもりでも、何となく、どさくさのうちに許し合ってしまうようなことが出来るも、また、人間の美徳ではなかろうか。

    そういうわけで、現代漫画の二つのテンプレートを極めて自然にひっくり返した、なかなか見事な作品だと思う。

    • 298
  2. 評価:4.000 4.0

    情報として

    正直なところ、「漫画」としての面白味というのは、それほど感じなかった。
    クセのある設定の主人公弁護士のキャラクターにも、あまり魅力を覚えなかった。
    ただ、漫画であれ何であれ、書物というものを「情報」として評価する場合、なかなか優れた作品になっているとも思った。

    SNSでの誹謗中傷の被害やそれを巡る法制度、訴訟、裁判、被害者サイドが法的措置に踏み切ることのメリット(現実的にはあまりに乏しいが)とリスク、その選択の意義と、金銭的なプラマイでははかれない価値。
    そういった実情を、私たちは本当のところ、あまり知らない。
    これだけ豊富な情報量を、漫画として一定のポップさを保持したまま、きちんと整理して提示することは、なかなか出来ることではない。

    気に入ったのは、主人公の弁護士が、選択肢を明確に提示した上で、きちんと依頼人に選ばせようとしているところだった。
    「ものを教える」という側面を持つ職業の人間にとって、これは重要な職業倫理であると私は思う。
    つまり、教えることや導くことよりも、選択肢の提示こそが、まずもって重要な仕事である、ということだ。
    こちらの道を選べばこういう危険があるし、あちらの道を行けばこういう痛みを伴う、どちらを選ぶかを決めるのは、あなたですよ、と。
    これは、全く違う作品だけれど、「九条の大罪」にあった「法律の世話はできるが、人生の面倒は見られない」という台詞にも通じるかと思う。

    極めて現代的な情報力を持った、なかなか有意義な作品。
    私は普段、SNSとは縁遠いところにいるけれど、SNSが生活の一部である、というような読者は特に、一読の価値はあるかと思う。

    • 590
  3. 評価:4.000 4.0

    設定を殺して

    新鮮なのは、「元極道のコンビニ店員」という設定そのものではなく、むしろその設定の「殺し方」みたいなところにあるのではないかと思った。
    本作は、いい意味で、とても慎重に設定を殺している。
    もう少し誤解を避けて言えば、設定から想起されるありがちな展開を、実に巧妙に回避している。

    私が何となく予想していたのは、次のようなストーリーだった。
    元極道のコンビニ店員である島さんは、普段はおとなしく仕事をしている。
    そこに何らかのトラブルが起きる。
    例えば、悪質なクレーマーが来るとか。
    そこに温厚そうな島さんが出ていって、クレーマーは「何だてめえは?」とかすごむけど、何かの拍子に刺青が見えてしまうとか、島さんが尋常でない殺気を放つとかして、クレーマーは「すみませんでしたー!」となる。
    みたいな。
    そういう漫画かと思っていた。

    違う。

    島さんは、元極道的なパワーを全く使わずに、あくまで温厚なままであって、その実直さや誠実さ、気配りや思いやり、洞察力、といったありふれた(?)人間的スキルでもって、コンビニの日常の諸問題を解決に導いてゆく。
    それを、一種の人情話として描いた漫画である。
    「ありがちな展開には絶対にしないぜ」という作者の気概が伝わるようで、その心意気や、よし。

    ただ、こう書くと、「あれ?元極道って設定、要らなくね?」と思われるかもしれないが、そうでもない。
    作中に流れるのは、すねに傷を持つ者が放つ独特の説得力と、「この設定がこの先で活きてくるんだろうな」という期待感だからだ。
    そういう意味では、かなり緻密に組み立てられた漫画だと思うし、それはこの先の話で、実証されるのではないかと思う。

    あとは、枝葉の部分になるが、作中、背中の刺青のワンカットで、島さんが元極道なのだ、ということをさりげなく提示するところなんかは、何ともセンスがあって、好感を持った。

    • 986
  4. 評価:4.000 4.0

    好感のもてる丁寧さ

    社内の様々な問題を調査し、適切な人事変更でもって対処する人事部の「社内探偵」を主人公にした作品。

    まず、人事部の活動が作品の中心、という設定が、個人的には新鮮に感じた。
    話の内容としては、職場あるあるというか、会社で働いている読者は特に、この漫画ほど極端にではないにせよ、似たような種類のイライラを抱えている可能性はあり、結構スカッとするのではないかと思う。

    特筆すべきは、その「スカッと」に至るまでの過程の丁寧さではないかな、と思う。
    昨今、「あなたのイライラ、スカッとさせます!」と言わんばかりの漫画が多いような気がするが、いかんせん過程が性急に過ぎて、逆にモヤっとする、というような作品が往々にしてある。
    しかし本作は、とても丁寧に過程を積み上げており、その点には好感を持った。
    そのぶん、テンポというか、進みの遅さは気になる読者がいるかもしれないが。

    • 290
  5. 評価:4.000 4.0

    優しすぎる寓話

    絵柄はヒトを選ぶだろうし、わたしは決して好みではないのだけれど、童話のような物語の雰囲気と世界観にはマッチしている。
    上手い・下手はともかく、絵柄が漫画に「合う・合わない」はとても大切なことだと思うので、そういう意味では、いいと思った。

    絵も、筋立ても、シンプルだけれど、描かれているものはなかなか奥深い。
    それは、ちょっと雑に言うと、善人も悪人も、懸命に生きているんだ、ということなのではないかと思った。

    本作は、寓話的な印象の漫画だ。
    しかし、実のところ、大体の寓話よりも遥かに優しい。
    昔話だって何だって、多くの場合、問答無用の「悪者」が出てくる。
    それは、略奪を繰り返す鬼ヶ島の鬼だったり、カニを騙した猿だったり、雀の舌を切る老婆だったり、豚を狙う狼だったり、シンデレラを苛む継母だったりするのだが、彼らはあくまで「悪者」であって、物語の中で、ある意味都合よく、やっつけられたり、不幸になったりする。
    私たちは、それを「当然」として読む。
    でも、本当にそうだろうか、と。
    鬼には鬼の、狼には狼の人生があって、彼らもまた、必死に生きようとしているのではないか、と。
    そんな、漫画だと思った。

    それは、作品として甘すぎる、という見方もあるだろうし、私みたいに汚れた人間には、やはり、「綺麗すぎる」と映った。
    しかし、誰一人として単純な「悪者」にはしないぞ、ただ悪いだけの悪者なんか、この世にいやしないんだ、というこの漫画の志みたいなものは、とても美しいと思った。

    • 284
  6. 評価:4.000 4.0

    生きてゆく者たちのホラー

    正直、今どき「ホラー漫画」のネタなんて、あらかた出尽くしているんじゃないかと思う。
    そもそもホラーなんて、幽霊が怖がらせるか、化け物が怖がらせるか、異常な人間が怖がらせるか、ざっくり言えばその三択で、時代がこれだけ進んでしまえば、その中のバリエーションだって新鮮なものは減ってゆく。
    これはもう、仕方がない。
    私はホラーが大好きだから、このジャンルには頑張ってほしいのだけれど、難しいよな、とも思う。

    それでも作品として何とか刺激を生もうとするから、ホラーの表現は、どんどん過激になってゆく。
    これももう、仕方がない。
    しかし、「過激であること」で勝負しようとするホラーの多さに、ちょっと食傷気味ではないだろうか。
    ホラーファンは、特にだ。

    そんな時代の中にあって、本作は、とても爽やかで、優しいホラー漫画だと感じた。
    「いかに怖い死者を描くか」ではなくて、「死者に向き合う生者をどう描くか」という漫画だと思った。
    それは、誤解を恐れずに言えば、少年漫画の立ち位置として、とても正しいと思う。

    冷たく聞こえるかもしれないが、死者は、死んで、終わりだ。
    けれど生きている人間は、死を乗り越えていかなくてはならない。
    どんなに辛くても悲しくても、いつか死者たちに手を引かれる日が来るまでは、今日を、明日を、行進していかなくてはならない。

    オカルトホラーでありながら、これはあくまで生きてゆく者たちの物語なのだと、タイトルからそれを堂々と表明したこの漫画が提示した、ホラー漫画らしからぬ温かさや優しさが、私はわりに好きであった。

    • 446
  7. 評価:4.000 4.0

    稀なリアリティー

    「現実」の問題を題材にした漫画は多くあるけれど、そのほとんどは、読みながらどこかで「結局、漫画だよな」という感想がつきまとう。
    それは仕方のない話で、漫画としてエンターテイメントをやる以上、何かしらの脚色や誇張が入るのは、当然といえば当然だ。

    しかしこの漫画は、そういう漫画としての演出を、ゼロとは言わないが、限りなくゼロに近づけているのではないか、と感じた。
    それによって獲得された稀なリアリティーが、漫画としてどこまで魅力的かは難しい。
    ただ、ある意味でエンターテイメントを拒絶したその勇気は、賞賛されるべきかもしれない。

    • 114
  8. 評価:4.000 4.0

    ぶれる善悪

    ひょんなことから殺_人者になってしまった父親のストーリー。
    漫画の中では「ヒーロー」だが、やっていることは結構エグい。
    ただ、「普通の父親がそこまで出来るか?」という突っ込みどころを、「推理小説マニア」という設定で上手くかわしたところが巧妙である。

    マンションの風呂場で死体を解体して…なんていう事件は、実際、数年前にあった。
    そのニュースを見たときの苛立ちと嫌悪感を、私は覚えている。
    行為としては、この父親がやっていることも、同じだ。
    しかしおそらく、私を含めた多くの読者が、この父親サイドについて、応援したはずである。
    そういう「ぶれ」を、私たちの善悪の意識は含んでいる。
    「許せない」とか感じたはずの行為を、「娘のため」というちっぽけな(と言っていいかは難しいが)「理由」や「事情」や「大義」さえあれば、あっさり許して応援すらしてしまう、というような、ぶれ。
    それを、計算ずくで提示しているような漫画だと思った。
    そういう意味では何とも底意地の悪い、怖い漫画である。

    私は、善悪のぶれを、全否定するつもりはない。
    それが、人間らしさというものかもしれない。
    ただ、思うのは、自分たちの善悪の基準なんて非常に曖昧なものだ、という事実に対して無自覚なのは、とても危険なことだ。
    私たちはいつの間にか、適当に誰かの「行為」を取り上げて、むやみに断罪してはいないだろうか。
    そこにあったかもしれない、「理由」や「事情」や「大義」を無視して。

    日馬富士の引退会見を見ながら、私はこの漫画を思い出して、そんなことを考えていた。

    • 156
  9. 評価:4.000 4.0

    見所の多いサバイバル

    映画でも漫画でも、サバイバル系は、「メインの敵」以外に焦点があると面白い。
    そういう意味で、この漫画は成功している。

    その1…VS猿。
    これがもちろんメインだが、「本当に猿なのか?」という謎もあり、一筋縄ではない。

    その2…内部の人間の裏切り。
    自分が生き残るために、仲間を売る奴らとの攻防。

    その3…内部犯の可能性。
    何と内部の人間に猿の仲間がいる可能性あり。
    敵が人間ならともかく、猿の仲間??
    謎めいた展開。
    上手く回収してほしいけど。

    その4…「山」の脅威。
    舞台が険しい山なので、猿の他に、自然との戦い、という側面もある。

    その5…疑心暗鬼からの仲間割れ。
    誰も信じられなくなり、登場人物たちが正気を失ってゆく、という王道パターンだが、生命維持に不可欠な「水」の問題を絡めることで、この展開に説得力を与えている。

    ということで、なかなか見所の多いサバイバルホラーになっていると思う。

    • 94
  10. 評価:4.000 4.0

    リアリティーと霊感と

    最初は、主人公の「霊感持ち」という設定はどうなんだろう、と思った。
    こういうエッセイ系の漫画は、かなりの部分、リアリティーが勝負なわけで、真偽はともかく、読者が「ホンマかいな」と感じる可能性がある設定は、ちょっと不利なんじゃないか、と。
    しかし、特殊清掃の仕事のリアリティーを描くのと同じタッチで、心霊現象についても淡々と描かれており、不思議と違和感はなかった。

    霊感が本当にあるのかもしれないし、穿った見方をすれば、主人公が抱える妄想か、この仕事に伴う精神疾患の可能性だってある。
    それはわからないが、主人公にとっては「霊」が「現実」なのであって、それを含めて、特殊清掃という仕事のリアリティーとして提示する、という描き方は、これはこれでありかな、と思った。

    • 71
全ての内容:★★★★☆ 1 - 10件目/全145件

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