4.0
切れた糸
おぞましい世界観は非常に丁寧に作り込まれていた。
不穏でおどろおどろしい土着的な日本の「村」の舞台を、ダークファンタジーのフォーマットに綺麗に落とし込んでいると感じた。
それだけに、終盤の失速と唐突な閉幕はひどく残念だ。
伏線も回収されぬまま、いくつもの謎を残したまま。
作品は途端に力を失い、地面に崩れ落ちてしまった。
まるで、糸の切れた操り人形のように。
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おぞましい世界観は非常に丁寧に作り込まれていた。
不穏でおどろおどろしい土着的な日本の「村」の舞台を、ダークファンタジーのフォーマットに綺麗に落とし込んでいると感じた。
それだけに、終盤の失速と唐突な閉幕はひどく残念だ。
伏線も回収されぬまま、いくつもの謎を残したまま。
作品は途端に力を失い、地面に崩れ落ちてしまった。
まるで、糸の切れた操り人形のように。
ジョジョはみんな好きだが、中でも四部が一番好きだ。
まず、圧倒的に「敵」の規模が小さい。
吉良吉影は、ディオやプッチ神父のような世界を変えかねない存在ではなく、「静かに暮らしたい」だけの変態である。
このスケールの小ささがいい。
仗助君たちのやることも実に呑気で、ネズミを狩るわ、イタリア料理店に行くわ、チンチロリンでイカサマをやるわ、ジャンケンに命をかけるわ、という有り様である。
この平和さがいい。
ジョジョの奇妙な「大冒険」もいいが、小さな日常の冒険が詰まったような四部が、私は好きだ。
余談だが、学生時代、いつか子どもが生まれたら、「仗助」と名づけようと半ば本気で思っていた。
死の予言から逃れようとする若者たちのサスペンス。
「件」とは一体何なのか?
運命を変える術はあるのか?
というのがストーリーの基本線だが、死に直面した登場人物たちの生き様や、交錯する思惑も見もので、「みんなで協力して運命に立ち向かう」という単純な構図とは一線を画している。
時系列を錯綜させる構成や、一種の群像劇的な見せ方も、技術の高さが半端ではない。
「モンタージュ」にしてもそうだが、この作者は作中で時系列を操作するのが上手い。
そしてまあ、信じられないくらいに物語は動きに動く。
本当に、動きすぎて困った。
この過剰な「動き」を受け入れられるかどうかが、評価の分かれ目になると思う。
個人的には、大満足。
どちらかと言えば、ジリジリ迫りくる死の恐怖を、牛のように単調な動きのスローなストーリーで見せるのが似合いそうな題材なのに、繰り広げられるのはジェットコースターもびっくりの怒涛の展開。
あまりにもスピーディーで、あまりにもサスペンスフルな傑作。
学生時代はとても楽しく読んだし、今読んでも好きなエピソードはある。
子どもでもついていける明るいトーンでありながら、時々、ギクッとするくらい人間のダークサイドや運命の残酷さに切り込んでくる、妙なバランス感覚が好きだ。
「金田一少年」のように「復讐」に偏った犯人像ではなく、保身、金銭欲、誤解、奇妙なこだわりなど、動機が多岐にわたるのも見所がある。
ときには「これ、コナン君だよな?」と思うような哀愁や切なさが犯人に滲む回があり、それが大好きだった。
個人的には、「クモ屋敷」のエピソードがイチオシ。
何より、殺/人事件という、一般に健全とは見なされがたいモチーフを、漫画の一ジャンルとして、あり得ないほどポップな地平に押し上げたその功績は、もう「殿堂入り」と言って然るべきではないだろうか。
レビューの件数からすると、あまり知られていないのだろうか。
「贋作」をモチーフにした、心踊るミステリである。
基本的に一話が短く、どんどん読めるし、やめどきが難しいくらい引き込まれる。
作品のキモはディテールで、古今東西の美術にまつわる作者の丁寧なリサーチには頭が下がる。
それでいて、一般読者がついていけないようなマニアックな次元まで走ることはない、そのバランス感覚も絶妙だ。
また、実在の美術品をアイテムに使いながら、事実を上手に広げたり膨らませたりしてエンターテイメントとして成立させる手腕には脱帽する。
まるで秘匿された美術品そのもののような、隠れた名作。
是非、多くの人に読んでほしい。
「何をやったら死ぬかわからない」というシンプルなルールだが、どこに地雷が埋まっているかわからない面白さはある。
ただ、その設定の面白さを活かしきれていない気もする。
「そうきたか!」という感動が薄い。
また、登場人物たちにいまいち共感できないのもマイナス。
最近、「犯人」サイドが同情に値するせいで、「主人公」サイドに乗っかって応援しにくい、という漫画が多くないか?
もうデスゲーム系に飽き飽きしていることもあって、少なくとも「ゲームそのもの」に魅力があるか、「ゲームをする人間」に魅力があるか、どちらかはないと、辟易してしまう。
個人的には、どちらにも光るものを見いだせなかった。
善人が破滅しようが子どもが犠牲になろうが首が飛ぼうが内臓が散ろうが、大抵の内容は「漫画の中のこと」として許容できるつもりだったが、これは駄目だ、気持ち悪すぎる。
直接的な描写や囚人たちの造形の話ではない(だったらもっと気持ち悪い漫画は腐るほどある)。
こんな形で子どもという存在を「使って」しまえる製作者サイドの神経が、気持ち悪いのだ。
申し訳ないが、そこまでして漫画にしがみつきたいのか?と嫌味のひとつでも言いたくなる。
高校のときは夢中で読んだ。
今読むとそこまで入り込めないが、少年のための少年漫画としては、いいと思う。
画力の高さもさすがだが、この人の描く不良は、いつも可愛い。
そこには、若者たちに対する作者の優しい視線が反映されているような気がする。
今回は「ゴッドファーザー」を下敷きにしたマフィアもの。
「いつものジョジョ」の楽しさももちろんあるが、舞台であるイタリアに対する荒木飛呂彦の徹底したリサーチぶりが素晴らしい。
その姿勢、やはり、荒木飛呂彦は岸辺露伴だよな、と思った。
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