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作品レビュー
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221 - 230件目/全499件

  1. 評価:4.000 4.0

    尖った細部

    引っ越した家に座敷わらしが三人(?)住んでいて、それと同居することになったミステリ作家の話。

    話としては、倫理観を微塵も持たない残虐な座敷わらしたちとのドタバタコメディ、という感じで、それ自体もなかなか面白かったのだが、本作の尖ったところは、むしろ細部にあると思う。

    まず、タイトルである。
    B級ホラー映画(というかB級以下なのだが)に通じた読者ならピントときたかと思うが、「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」や「アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ」あたりを意識したものと思われる。
    しかしまあ、ザシキチルドレンときたか。
    このセンス。

    他にも、作中、主人公がやっているソシャゲのガチャのレアキャラが「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスだったり、第一話の冒頭で出てくる引越社の名前が「人間椅子引越社」だったりと、作者は完全に「その筋」の人と思われる。

    いずれも、「そんなの普通、読者に伝わらないだろ」というネタを恐れることなくねじ込む、その心意気やよし。
    ただ、個人的には、もっと「そっち系」で突っ走ってほしかった気もする。

    • 6
  2. 評価:2.000 2.0

    悪女の違和感

    従妹にたちの悪い女を持ってしまった主人公の話。
    たちの悪い、というのは、主人公の恋人を奪い、悪びれることもなくその男といる場に主人公を呼ぶような女である。
    そして、主人公についてきた男友達に露骨に色目を使うような女である。
    おいおい。

    いわゆる「悪女」モノだが、何やらしっくりこなかった。
    悪女の定義みたいなものは人それぞれあるにせよ、その条件というのは、可愛くて、強かで、賢くて、怖い、そして、「可愛い」以外の要素を外には見せない、ということではなかろうか。

    その点、この漫画の従妹は、まずもって頭が悪すぎる。
    馬鹿な女のフリが出来るのが悪女なのであって、本当の馬鹿では悪女の魅力にも迫力にも欠ける。
    怖さはまあ、ないこともないが、それはチャーミングな笑みを浮かべて平気で背後から刺すような怖さではなく、デーモン閣下みたいなのが「グハハハハハ」と笑うような類の怖さなのである。
    読んだ人には、何となく伝わるんじゃないかと思う。
    このあたりはまあ、正直、漫画としての表現の稚拙さもある。

    また、主人公のキャラクター設定も甚だ疑問で、お人好しにも限度があるだろう。
    ここまで間抜けだと、はっきり言って同情の余地がない。
    ときどき、詐欺被害に遭った人に対して「騙される方も悪い」という残酷な攻撃がなされるが、私は主人公に対して、それと似たような感情しか抱けなかった。

    主人公を応援できない、かといって悪女の側にも魅力はない。
    それだともう、作品についてゆくことは難しい。

    • 8
  3. 評価:2.000 2.0

    何だそのピュアさは

    ネタバレ レビューを表示する

    家族に取り入り、家族を乗っ取ろうとする男の話。
    とだけ書くと、現実にありそうだが、実際には猛烈な嘘臭さが漂う。

    例えば悪名高い北九州の事件なんかは、ある種の家族乗っ取り事件だが、当然、本来の目的は、金だ。
    そこに、サディズムとか過剰なコントロールへの欲求とか、異常な要素は絡むとしても、極めて現実的な目的がある。
    また、仮にだが、家族を崩壊させることが目的だ、というのも、現実にそんな事件があるかは別として、まだギリギリ理解できる。

    しかし、本作の主人公(?)は、全く違う。
    自身は恵まれない家庭に育ち、幸せな家庭を築くために、他の家族を乗っ取ろう、というのである。

    そんなタコな。

    何だ、そのピュアさは。
    それだけの目的なら、普通に自分の家族を一から作った方が早いだろ。
    他の家族を乗っ取るために、まずターゲットを探し、その隣人になり(そのために家族向けのアパートの一室を借り)、身分を偽り、家族の問題や秘密を把握し、周辺でトラブルを起こし(あるいは助長し)、次にそれを解決し信頼を得て…とかもう、気が遠くなる。
    そのコストとバイタリティーを、婚活に使えよ婚活に。

    まあ、色々書いたが、仮に非現実的な人物像であっても、漫画においては、強引に面白くすることは可能である。
    それがフィクションの強みだ。
    だが本作は、悲しいほどに盛り上がらない。
    それはやはり、漫画としての表現の拙さが最大の理由という他にない。

    • 8
  4. 評価:4.000 4.0

    ストーカーに揺られて

    交通事故で記憶を失った男。
    その男のストーカーである女性が、恋人になりすます、というストーリー。

    個人的には、「ストーキング」と「一途で情熱的な恋」の境界なんて、結構曖昧なんじゃないの、と思っている。
    そんなもの、相手側の都合でいかようにも変わり得る。

    男性の皆さん、想像して下さい。
    職場から家までの帰り道、あなたの後ろをそっとついてくる女性がいます。
    彼女は通勤電車であなたに一目惚れしたのですが、内気なせいで、なかなか声をかけられないのです。
    古風な一面もあって、女性の方から声をかけるなんて、と恥じらってもいるのです。
    しかし、彼女は感じています。
    あなたのこそが、運命の人なのだと。
    ちなみに彼女は全盛期のスカーレット・ヨハンソンのような美貌とプロポーションを持ち合わせています。
    どうですか?
    彼女の一途な秘めた想いが胸に響きませんか?
    ついでに美貌とプロポーションも響きませんか?

    ほら見ろ!
    簡単に騙されやがって!
    そいつはストーカーだ!

    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、「ストーカーに愛なんてない」というのは、いささか極論に過ぎると思う。
    適切でない愛し方を全て「愛ではない」と決めつけるのが、私は好きではない。

    だから、本作の主人公のストーカー女性を、私は応援していた。
    やり方はフェアではないが、真っ直ぐだし、可愛らしいし、ひとつの愛情の形として認めてあげたかった。
    というふうに、この漫画に誘導された。
    が、そのあたりで、不意に狂気の描写が来る。
    ここが、本作の巧みなところである。
    怖い。
    やっぱさっきのなし、真っ直ぐどころか三回転半くらい捻ってる。
    ヤバい、この女はやめとけ。
    でもなあ…というふうに、ストーカーに対する非常に微妙な感情を煽られる漫画。
    それはつまり、何をどこまで愛として認めるか、という永遠の問いを、読者に投げかけることに他ならない。
    そういう意味では、なかなか奥行きのある作品だと思った。

    • 6
  5. 評価:5.000 5.0

    死者と踊るダンスポップ

    人の死が一日前に「見えて」しまう少女のストーリー。

    以前、この作者の「死にあるき」という漫画のレビューで、私は「主人公の朱鷺子は他のどの漫画のキャラクターとも明確に違う、そのキャラクターの完成度は突出しているが、漫画としての表現が追いついていないように思う」という意味のことを偉そうに書いた。
    本作で、作者は、飛んだ。
    それは、ほとんど驚愕を覚えるほどの飛翔だった。

    まず、画力の著しい向上。
    何と言っても、これに尽きる。
    最初、私は同じ作者の漫画だとわからなかった。
    読んでいくうちに、死を巡る表現に既視感を覚えて、もしや、と思って確認して、「死にあるき」の人だ、とやっとわかった。

    主人公の造形も、全く違う。
    皐月は、朱鷺子ほど強くなれないし、冷たくもなれない。
    朱鷺子のように圧倒的にぶれない軸もないし、達観もしていない。
    私たちの多くと同じように、傷つき、迷い、それでも目の前の誰かを死なせまいと、死の影にまみれながら、懸命に生きようとしている、その健気さと、可愛らしさ。
    朱鷺子は、絶対的に孤独だった。
    しかし本作は、本来誰にも理解されないはずの皐月を、決して独りにはしなかった。
    その選択は、正解だったのではないかと私は思う。

    「死にあるき」が、ただ死を見つめ、死者の中を闊歩する少女の物語だったとすれば、本作は、死者のど真ん中で、ただ死を見つめることなんか出来ないと心に決めている少女の物語である。

    「死にあるき」は、絵としても、作品のトーンとしても、どちらかと言えば陰鬱で、そこはかとなくカルト作品の雰囲気を漂わせていた。
    だが、本作は、考えられないくらいポップな地平で展開される。
    徹底的に死を扱いながら、これほどまでにポップな作品なんて、他にコナン君くらいのものではなかろうか。
    それでいて、死を巡る切れ味鋭い作品の展開は、バリバリに健在である。

    そこには、賛否あるだろうと思う。
    よくも悪くも、「死にあるき」の朱鷺子、あの「寄らば斬る」とでもいうような尖った魅力があるかと言えば、ノーである。
    ゴリゴリのパンクロッカーが、ダンスポップをやり出したような違和感も、ちょっとある。
    だが、そのダンスポップの中には、パンクロックの精神が、確かに生きている。
    私はそう思うから、この素晴らしいポップソングを、心の底から称賛する。

    • 5
  6. 評価:3.000 3.0

    シリアルキラーの都合

    社会的に裁かれない悪人に、残忍な方法で私刑を加えるサイコ警察官を主人公にしたサスペンス。

    グロテスクな表現が多いが、作画は綺麗で、安定感がある。

    ただ、悪人を始末するサイコキラーという設定は、どうにも都合がよすぎる気がして、イマイチ入り込めなかった。

    あとは、スピンオフと知らずに、元の作品を読む前に読んでしまったので、主人公のキャラクターが余計にわかりにくかったことはあるかもしれない。

    • 7
  7. 評価:5.000 5.0

    異形の傑作

    作品を支えるバックグラウンドの知識量、情報量が圧倒的である。
    考古学、民俗学、宗教学、あと何なのか知らないが、漫画としてはほとんど常軌を逸したレベルだと思う。

    正直、あまりに情報量が多すぎるゆえ、どうしても「文字」に頼った説明が過多になっている感はあり、「漫画」としてはどうなんだ、と感じるところもあった。
    そういう点で言えば、例えば「ギャラリーフェイク」という漫画なんかは、確かな含蓄がありながら、マニアックに走りすぎないバランス感覚があった。
    本作は、違う。
    ひたすらマニアックに、振り切っている。
    しかし、ここまで徹底されると、一種の敬意を込めて、「あり」と認めるしかないとも思った。

    絵の表現は、決してわかりやすい上手さではないが、有無を言わさぬ妙な迫力と説得力があり、作品のトーンには、非常によくマッチしていると思う。

    ずば抜けた含蓄に裏打ちされて、もはや漫画ではない別の何かであるかのような妖気の漂う、異形の傑作。

    • 5
  8. 評価:5.000 5.0

    マサルの純真、ジャガーの悪意

    「マサルさん」と「ジャガー」の違いは、と考えると、それは「悪意」の所在なのではないかと思う。

    花中島マサルは、いわば「天然」系の主人公だった。
    というか、「マサルさん」の登場人物は、誰も彼も天然みたいなものだった。
    あれは、誰にも悪意のない、誰も傷つかない、実に優しいギャグ漫画だった。
    そういう意味でも、他人を貶して笑いに変えることがまかり通るこの世の中で、「マサルさん」は偉大な作品だったと思う。

    しかし、ジャガーさんは全く違う。
    彼は、悪意に満ちている。
    ジャガーさんどころか、ハマーにも、ロボットのハミィにすら、悪意がある。
    「ジャガー」は、「マサルさん」に比べて、かなりの毒を含む漫画であると思う。

    しかし、その悪意や毒を、読者に全く「毒」とは感じさせない。
    ジャガーさんがどれほど悪意に満ちた悪行をはたらこうとも、あくまでそれは、漫画の中では、優しく、マニアックでありながら妙にポップで、爽やかですらあるギャグへと昇華されている。
    このあたりが、うすた京介の稀有な才能なのではないかと思う。

    • 5
  9. 評価:4.000 4.0

    覚悟のグロテスク

    昔は結構、夢中で読んだ。
    今となっては、なぜそんなに夢中になれたかピンとこないのが残念だが、多分、当時は、漫画の表現として、それだけ新鮮だったのだろう。
    思えば、漫画としてこういう方向性のグロテスク表現を、ポップでスタイリッシュなレベルまで押し上げたのは、この作品が最初だったのではないかと思う。

    そして、そのグロテスクには、確かな覚悟があった。
    単なるショッキングな「客寄せ」としてグロを描くのではなく、「徹底してグロを描かなければ、表現したい世界を構築できない。そのためには、どんな非難も受けて立つ」という、覚悟である。
    この一点は、素晴らしい。
    それは、本作以降、雨後の筍のごとく乱立された、信念なきグロとは、根本的に違っていた。
    単行本の一巻を読めば、それはわかる。
    だからこそ、この漫画のグロテスクには、比類なき美しさがあった。

    しかし、残念ながら、作品トータルで見ると、面白かったのは序盤だけだった気がする。
    後半はもう、大風呂敷を広げすぎて、何がしたいのかさっぱりわからなくなってしまった。
    おそらく、それは作者サイドも同じだったのではなかろうか。

    • 6
  10. 評価:4.000 4.0

    死者を抱えて

    子どもの頃、従姉の家に大量にあった、今はなきホラー漫画雑誌で読んだ。
    当時、私は何となく、この漫画が苦手だった。
    この漫画の持つ、何となくもの悲しい空気が、ホラーとは別の意味合いで、怖かったのだと思う。

    大人になって読み返してみて、この漫画で描かれている悲しみというのは、死者を抱えて生きることの悲しみではないか、と思った。
    そして、その悲しみは、この漫画の主人公のように、霊を見ることの出来る人間だけが背負う悲しみではない。
    私たちの誰しもが、いずれは、死者を抱えて生きるしかないからだ。
    そういう意味では、特殊な能力を持つ人間を主人公にしながら、とても普遍的なことを描いた漫画である、と言えるかもしれない。

    幼い私には、いつかは自分も死者を抱えて生きてゆかなくてはならないのだ、という真実は、いささか重すぎたのかもしれない。

    • 6
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