梶裕貴インタビュー(後編):主人公に美学を感じる!声優を志した梶さんが勇気をもらった漫画や大好きな浅野いにお作品を語る!

梶裕貴インタビュー(後編):主人公に美学を感じる!声優を志した梶さんが勇気をもらった漫画や大好きな浅野いにお作品を語る!

更新日:2018/08/23 10:00

数々のアニメで引っ張りだこの声優・梶裕貴さんに直撃インタビュー!声をあてた「進撃の巨人」の主人公・エレンとの共通点や人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の世界を描いた何度も読み返している少年漫画、好きな漫画家、声優としての夢について語ってもらいました!

主人公・アルスの“勇者の美学”に心打たれた

――小さいころはどんな子どもでしたか?

ごっこ遊びをよくやっていました。今思えば、なにかキャラクターを演じるのが好きだったんだと思います。そのときはまだお芝居をしている意識は全くないですけど、そんなごっこ遊びの延長線上に、声優としての自分があるのかな、と思っています。

特に戦隊ヒーローが好きで、みんなでヒーローごっこをしていたんですけど、レッド役は絶対に譲りませんでしたね。一番熱くて正義感があって、みんなをまとめていて、かっこいいじゃないですか!「いくぞ!」「オー」の「いくぞ!」の部分がすごく憧れで、言いたくてたまらなかったんです。

梶裕貴

梶裕貴

――漫画でもヒーローが活躍するものをよく読んでいたんですか?

ヒーローというか…主人公に美学を感じるタイプだと思います。漫画を読んでも、主人公に感情移入したり共感したりすることが多くて…。

その中でも、小学生のときに初めて読んだ「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」(作画:藤原カムイ/脚本:小柳順治/設定:川又千秋/スクウェア・エニックス)の主人公・アルスはかっこよくて憧れでした。

たった一人で敵地に赴くアルス

たった一人で敵地に赴くアルス

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版
(c) Kamui Fujiwara (c)Junji Koyanagi (c) 1991-1997,2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

自分の危険を顧みず正義感を貫くなんて、普通はなかなかできないことですよね。あと、最初からすごく強いわけじゃなくて、出会いや別れなど、いろんなことを乗り越えながら少しずつ強くなっていくのも勇者の魅力。武力はもちろん、心の強さがあるんです。だから、周りの人が“強いからついていこう”じゃなくて、“力を貸したいからついていこう”と思ってくれるんだろうなと思います。

梶裕貴

梶裕貴

――特に印象深いシーンはありますか?

一番ぐっときたのは、アルスたちが伝説の勇者・ロトの故郷、アリアハンを訪れるところ。そこで獣王グノンとの戦いがあるんですけど、“アルスを差し出せば町を襲わないでいてやる”とグノンに吹き込まれた住民たちが、アルスを追い出そうとするんです。

グノンの言葉を信じ、アルスを追い出そうとする住民たち

グノンの言葉を信じ、アルスを追い出そうとする住民たち

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版
(c) Kamui Fujiwara (c)Junji Koyanagi (c) 1991-1997,2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

住民に石を投げられて追い立てられたうえ、敵の大軍勢にボロボロにされながら、それでも町を守るために剣一本で戦っている姿に胸を打たれました。

一人で大勢の敵の相手をするアルス

一人で大勢の敵の相手をするアルス

ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版
(c) Kamui Fujiwara (c)Junji Koyanagi (c) 1991-1997,2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.
少年漫画 ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 完全版
藤原カムイ/川又千秋/小柳順治
評価:4.2 4.2 (104件)
  • 完結
  • ファンタジー
  • バトル

あの頃の熱き想いが甦る!!カラー原稿の完全再現に、描き下ろしを多数収録!また未掲載の原稿を収録...

助けたい人たちに蔑まれて、しかもこのまま戦ったら死んでしまうだろうと分かっていても、最後の最後まであきらめない姿勢は、普通の人にはとてもじゃないけど真似できない。

離脱していた仲間がついに合流してアルスを助けてくれたり、そんな彼らが命を張って頑張る姿に住民の心も動かされて救援に加わったり…いろいろな奇跡が重なってなんとか敵を倒せたんです。本当にドラマチックで、まさに勇者のお話だな、と子どもながらにすごくしびれたのを覚えています。声優を志してから改めて読んだ時には、アルスのような役を演じられるような声優になりたいな、と思いました。子ども時代からの、いろいろな思い出が詰まった大切な作品です。

梶裕貴

梶裕貴

まるで心を丸裸にされたような生々しさが、浅野いにお作品には描かれている

――他にも好きな作品に「ソラニン」 (浅野いにお/小学館) を挙げていただいていますね。

ソラニン」 (浅野いにお/小学館) は、浅野いにお先生の作品で初めて触れたタイトル。ちょうど主人公たちと同じくらいの年齢のときに読んだというのもあって、すごく刺さりました。

梶裕貴

梶裕貴

――印象的なシーンはありますか?

主人公・井上芽衣子(いのうえ めいこ)と同棲している種田成男(たねだ なるお)が連絡もなしに家を出てしまって、ようやく電話がつながったと思ったら…という急展開。もちろん、種田にもいろいろな思いがあっての行動だったんでしょうけど…正直その急展開はショックでした。芽衣子がそれをどう受け止めて、どう自分の人生と向き合っていくのかというのは、そのときの年齢もあってかすごく印象に残りました。

音信不通から5日目でようやく種田と連絡が取れる芽衣子

音信不通から5日目でようやく種田と連絡が取れる芽衣子

ソラニン
(c) 浅野いにお/小学館

ソラニン」 (浅野いにお/小学館) は、そのタイトルも秀逸ですよね。おいしい食材も放っておくと毒の芽が出てきて、もう食べられなくなっちゃうとか…誰もが持つ人の脆いところや汚いところを、漫画という形で表現されている。それがすごく身近に生々しく感じられるのは、浅野いにお先生の作品全般に共通している点だと思います。

自分の生き方に悩む種田

自分の生き方に悩む種田

ソラニン
(c) 浅野いにお/小学館
自分の生き方に悩む種田

自分の生き方に悩む種田

ソラニン
(c) 浅野いにお/小学館

――確かに浅野いにお先生の作品は、どこかリアルな世界観で描かれていますよね。

「こいつ嫌なやつだな」と思っても、よく考えれば自分にもそういう部分あるかも…と気づいて恥ずかしくなることってあるじゃないですか。

かつて憧れていたバンドマンに再会する種田

かつて憧れていたバンドマンに再会する種田

ソラニン
(c) 浅野いにお/小学館
かつて憧れていたバンドマンに再会する種田

かつて憧れていたバンドマンに再会する種田

ソラニン
(c) 浅野いにお/小学館
青年漫画 ソラニン
浅野いにお
評価:4.3 4.3 (40件)
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種田の言葉に勇気を与えられ、会社を辞めた芽衣子。そして、そんな芽衣子の言葉に突き動かされ、本気...

浅野いにお先生の作品ではそう感じることがすごく多くて、なんだか心を丸裸にされてしまったような気になるんです。人間は複雑で繊細でめんどくさい生き物だけど、その中にいいところもちゃんとあって、意外と捨てたもんじゃないなと思える。役者としても、こういう人間臭い世界観で演じてみたいと思える、そんな作品ばかりですね。

声という武器ひとつで勝負していく

――声優になろうと思ったきっかけを教えてください。

小さい頃から、いろいろな夢を持つのが好きな子どもでした。でもすごく極端で、サッカー選手になりたいと思ったら、ボールしか蹴りたくない!とか、漫画家になりたいと思ったら、絵しか描きたくない!みたいな…飽きっぽいというより、どんどん他の新しいものに興味が湧いてしまうという感じでしたね。でも、中学2年生のときに「声優という職業は、どんな努力も全部自分の力になって帰ってくる職業だよ」という言葉を聞いて、「自分にぴったりな職業じゃん!」と思ったんです。今まで夢中になって頑張ってきたものが無駄じゃないし、どんなことも仕事につながるなら、これからも好奇心旺盛な自分でいられる。そこからは、もうずっとまっしぐらに声優を目指して今に至ります。

――声優としてお仕事をするようになって、何か変わったことはありましたか。

「忍たま乱太郎」や「名探偵コナン」など、昔から見ていたアニメの現場に行くと「この声、テレビで聞いていた声だ!」という大先輩の役者の皆さんが目の前にいらっしゃって、一緒に仕事をしている状況が、いまだにすごく不思議な気持ちになります(笑)。だって、自分が子どもの頃に見ていたキャラクターと、自分が声をあてているキャラクターが同じ場所にいるなんて、想像もできないじゃないですか。後日、オンエアを客観的に見たりすると、またその思いが強くなったりしますね。

でもいつかは、自分が演じたキャラクターの声が、今の子どもたちにとって“テレビで聞いていた声”になっていくわけで…そこからまた次の時代へとつながっていくことには、なにものにも代えがたい喜びを感じますし、その分とても大きな責任も感じます。

――今後、どんな声優になっていきたいですか。

時代が進むにつれて声優の仕事の幅はどんどん広がっています。いろいろとやらせていただけるのは、もちろんありがたいことで、学べることも山ほどあるんですけど…それでも僕はやっぱり声を使ってお芝居をする役者でありたいです。

声という武器ひとつで、心の機微を表現する。そんな技術を持っているのが“声優”なんだということを、また声優って面白いんだな、すごいんだな、ということをより多くの人に伝えられるような役者になっていければと思っています。

梶裕貴

梶裕貴

少年漫画 進撃の巨人
諫山創
評価:4.2 4.2 (4304件)
  • 完結
  • メディア化
  • 殿堂入り

手足をもがれ、餌と成り果てようと、人類は巨人に挑む!! 巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と...

梶裕貴サイン色紙

お仕事に対して真摯に向き合っていることがわかる、とても素敵な方でした。梶さんが演じたキャラクターが子どもたちに夢を与え、次世代へとその夢をつなげていくのが楽しみですね。

写真:佐藤登志雄
ヘアメイク:中山芽美(エミュー)

プロフィール

梶裕貴(かじ ゆうき)

東京都出身。「進撃の巨人」(2013-)、「マギ」(2012-)、「七つの大罪」(2014-)など数々の話題のアニメ作品で主演を務める大人気声優。アニメやゲームだけでなくラジオや舞台への出演、歌手活動など幅広く活躍しており、2013年・2014年の2年連続で声優アワード主演男優賞を受賞した。2018年5月には声優を目指した14歳当時のエピソードから、下積み時代の苦悩などを綴った「いつかすべてが君の力になる」(河出書房新社)を発売。

◆TVアニメ「進撃の巨人」Season 3 公式サイト

https://shingeki.tv/season3/

◆ヴィムス 梶裕貴 公式プロフィール

http://vims.co.jp/talent_profile_detail.php?id=7

◆梶裕貴 スタッフ公式Twitter

https://twitter.com/kaji_staff

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作者

ヘルシー鮫

ヘルシー鮫

漫画と猫と今川焼きが好きなゆるいオタク。テニプリは青春にしてホーム。永遠に千石清純に恋してる。
【twitter】@herusamecochan

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