此岸と彼岸の間のお役所仕事!? 『死役所』のユニークな魅力&あらすじ紹介

此岸と彼岸の間のお役所仕事!? 『死役所』のユニークな魅力&あらすじ紹介

更新日:2017/02/06 10:00

死んだらどこへ行くのか――。

誰しも一度は考えたことがあるであろう疑問です。生きとし生けるものすべてに等しくやってくる死は、生者にとっては完全に未知です。死について考えて恐ろしくなり、夜眠れなくなってしまったという方は多いかもしれません。その怖さゆえか、人類は天国や地獄、涅槃、来世、極楽浄土といった概念をたくさん生み出してきました。

死役所」 (あずみきし/新潮社) も、そんな死後の世界を描いた作品です。ただし、正確に言うならば、この役所が存在するのは此岸と彼岸の間です。仕事内容は、端的に言えば死者を天国か地獄に振り分けること。しかも、「市役所」のもじりなだけあって、職員たちはみなお役所対応というなかなかヘンテコな話となっています。

今回は、ハートウォーミングというわけでもなければ、暗すぎるわけでも重すぎるわけでもないこの作品のユニークな魅力をじっくりご紹介いたします。

死役所」 (あずみきし/新潮社) は、新潮社が発行している月刊漫画雑誌『月刊コミック@バンチ』で連載中の作品で、コミックスは2016年末に発売された最新刊を含め7巻まで出ています(2017年1月現在)。ストーリーは一話完結形式で、作者は漫画家のあずみきし先生です。

それではあらすじと主要登場人物紹介に移りましょう。

いつでもマニュアル笑顔の「シ村さん」

人物紹介といっても、ほぼすべての話に登場するのは一人だけです。その人の名はシ村といい、「死役所」の総合案内を務めており、かなり変わったキャラクターとなっています。

総合案内シ村さんご登場
死役所
(c) あずみきし/新潮社

こちらがそのシ村さん。実際に市役所などでも、いつも笑顔でこういう風貌の職員さんがいそうですよね。いかにもお役人といった感じ。

自殺した少年・鹿野くん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

今日シ村さんが案内するのは、いじめを苦にマンションから飛び降り自殺した男子中学生・鹿野太一(かの たいち)くん、12歳。

お役所といえば書類
死役所
(c) あずみきし/新潮社

「自殺課」に通された鹿野くんは、さっそく「自殺申請書」という書類を書かされます。自殺した日、場所、方法……。ところが、自殺した理由を書いていて、いじめられていた時の不快な記憶がフラッシュバックし、「何でこんなこと書かなきゃいけないんですかっ!?」と怒り出します。

「お気持ち大変よくわかります」
死役所
(c) あずみきし/新潮社

鹿野くんの言うことはごもっともなのですが、シ村さんはこの反応。マニュアル対応というか、いかにもなお役所対応です。

シ村さんののらりくらりとした対応は続きます。鹿野くんは、自殺したときに日記を残しており、これさえあればいじめてきた奴らを殺人犯にできると考えていました。しかしシ村さんはこう言ってのけます。

あっさり言ってしまうシ村さん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

……別に悪気があって言っているわけではないのですが、ちょっとひどいです。

鹿野くんはショックを受けて、何も言わずに立ち去ってしまいます。

通常運転だったシ村さん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

こちらの女性は同じく死役所職員のニシ川さん。「やっぱり」ということは、今までもこんな対応で来た人を困惑させてきたのでしょう。

それから時が経ち、鹿野くんの書類申請の締切が迫ります。

彼のことを覚えていたニシ川さんは、シ村さんに彼はどうしたか質問します。

「聞かれませんでしたので」
死役所
(c) あずみきし/新潮社

聞かれなかったから言わなかったって、それもちょっと……。

ちなみに「冥土の道」とは、死亡日から49日間以内に「成仏」の手続きを行わなかった場合に死者が向かう場所のこと。天国でも地獄でもない、何にもないところです。

ニシ川さんに怒られ、鹿野くんを探しにいったシ村さんは、彼がいじめっ子に絡まれているところを発見します。なんといじめっ子は、鹿野くんのお義父さんに轢き殺されて死役所にやってきてしまったのでした。

「なるべくお静かに願えますかねぇ」
死役所
(c) あずみきし/新潮社

怒りのあまり鹿野くんを殺そうと暴行するいじめっ子に対し、シ村さんはこのご忠告。付け加えておくと、死役所にいる人々はみな死者なので、殺人は不可能となっています。

さて自殺課に戻ってきた鹿野くん。最初は「成仏しません」と言っていた彼ですが、現世で自分に対して無関心だった義父が自分のために殺人を犯したと知って、なんとか義父に会いたいと考えます。

お義父さんに会いたい
死役所
(c) あずみきし/新潮社

しかし、現世への帰還は条例で不可能となっており、生まれ変わりも天国へ行った人しか出来ないとのこと。このあたり、条例が相当しっかり整備されているようです。

仕方なく、シ村さんにお願いをすることにしました。

「お義父さんともっといろんな話がしたかった」

お義父さんが死んでここにきたときにそう伝えてほしい――と。

伝言を頼まれて
死役所
(c) あずみきし/新潮社

「お客様は仏様ですから」

いつもどおりの笑顔で、シ村さんはこう答えます。このセリフ、シ村さんの口癖みたいなもので、このあとも頻繁に出てきます。

そうして、書類を手に、鹿野くんは死役所を去っていきました。

生きているときの鹿野くん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

そしてこれは鹿野くんの存命時のポートレート集。本作は、話の終わりごとに、その話の死者にまつわる写真や新聞記事などがこうして掲示されます。これが、泣けるとも無念とも言い難い、不思議な余韻を呼ぶのです……。

さまざまな死に方をしてきた人々

人によって死に方はまちまちですから、死役所には様々な課が設置されています。

頭半分が損壊した女性
死役所
(c) あずみきし/新潮社

こちらの女性は上杉涼子(うえすぎ りょうこ)といい、「人為災害死課(じんいさいがいしか)」に案内されたところ。顔半分が欠損しているのは、落ちてきた鉄骨により激しく損壊したためです。

彼女の顔に驚きもせずいつも通りに対応するシ村さん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

彼女は勤め先の工場でお世話になっていた社長を守るため挺身(ていしん)し、死亡したのでした。やや込み入った死に方ですが、ちゃんと書類や課が用意されているようです。

「あしたのわたし」という絵本と一緒に死んだ女の子
死役所
(c) あずみきし/新潮社

この幼い女の子は小野田凛(おのだ りん)という名前で、「他殺課」にやってきたところ。

この子は母親から日常的な虐待を受けており、ある時真冬の夜のベランダに放置され衰弱死したのでした。というかはっきり言って虐待死です。

泣き出してしまうイシ間さん
死役所
(c) あずみきし/新潮社

殺されたにもかかわらず、女の子がまだ母親を想っていることを知り、思わず泣いてしまう他殺課のイシ間さん。女の子のエピソードも胸にくるものがありますが、このイシ間さんもまたなにやら複雑な事情がありそうです。

誰相手でも平等
死役所
(c) あずみきし/新潮社

これだから子どもの相手は苦手だと愚痴るイシ間さんに対して、「老衰課」や「死産課」への異動を提案するシ村さん。死という、どうしても重いドラマがつきまとう事象に対して、いつでも変わらない対応をするシ村さんはこの役所が天職かもしれません。

さてここである疑問がわきます。死役所の職員にはどうやってなるのか?

答えはこうです。

職員はみな死刑になった人
死役所
(c) あずみきし/新潮社

シ村さんの謎

「死刑にならないとここの職員にはなれない」

そう、ここまで紹介してきた職員も、続巻で登場する職員もみな元死刑囚なのです。死刑で死んだ人は「死刑課」という特殊な課に通され、成仏という選択肢はなく、死役所の採用試験を受けることになるのです。

殺した人数を自慢する男
死役所
(c) あずみきし/新潮社

これは、ここの職員がみな死刑になって働いていることを知り、シ村さんが何をやったのかを聞き出そうとする男性。名前は江越伸行(えごし のぶゆき)

この男は、死刑囚となれば働かずに済むと知って、通学中の子供の列に車で突っ込み、5人を殺害、12人に怪我を負わせるというとんでもなく非道な人間。とにかく働きたくないため、死役所の採用試験も拒否するほど。こうやって書くだけでも胸糞悪いです。

自分の殺害数を自慢して、自惚れる男。すると、後ろからいつもと違うシ村さんの声が響きます。「武勇伝のおつもりですか?」

豹変
死役所
(c) あずみきし/新潮社

男が振り返ると、能面のように冷え切った表情を浮かべるシ村。

吐き捨てるシ村
死役所
(c) あずみきし/新潮社

「屑が 永久に彷徨ってろ」

その言葉を聞くとともに、冥土の道へと堕ちる男。先ほども説明したとおり、冥土の道は本当に何もない、すなわち無の空間。こんなクズにはうってつけなのです。

それにしても気になるのは、職員たちが死刑となった理由です。特にシ村さん。お役所対応とはいえ、いつでも笑顔で、総合案内という面倒な仕事をきっちりこなす彼が抱えている過去とはいったいどんなものなのでしょうか……?

先が気になるところですが、あまり考察や感想を書くとネタバレとなってしまうので、今回はこのへんで紹介は止めておきます。最後は、他ならぬ自分自身が死役所のお客様となったときのため、シ村さんのこの名言で締めさせていただきたいと思います。

「お客様は仏様ですから」
死役所
(c) あずみきし/新潮社

『死役所』、いかがでしたでしょうか。今回は死者たちの死に際のエピソードを割愛しましたが、本作の読みどころはここです。死が決してハッピーエンドとはならないように、一つ一つの話も、救われる結末もあれば、後味悪い結末があったり、知らぬが花の真実が明かされる結末があったりと、多種多様で、ひじょうに面白いのです。陰惨なストーリーも多いですが、うまく割り切れない感動や感情に身を委ねてみたい方は、ぜひお手に取ってみて下さい。

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作者

にしのともき

にしのともき

1992年生まれ、長野県出身のフリーライター。活字を読むことが生きがいの中毒患者。小説、漫画、映画すべて楽しみ尽くしたいと手当たり次第むさぼる日々。好きな漫画は『寄生獣』。だいたい自宅か神保町にいます。

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