3.0
民俗学と爽やかさ
民俗学の研究者が、地方の様々な葬送の慣習から事件の謎を紐解く、というミステリ。
といっても、本格ミステリではなく、民俗学を題材にしたライトなミステリと思ってもらえばいいかと思う。
民俗学そのものの扱いも、それほど掘り下げられてはおらず、よく言えばポップだが、物足りなくもある。
私は大学の専攻で民俗学に近いことをやっていたのもあり、題材としては好きであった。
ただ、私の勝手な希望だが、ミステリとして民俗学を扱うならば、やはりそこには、人間のグロテスクな情念や、共同体の無自覚な残酷さ、みたいなものを期待してしまう。
が、よくも悪くも本作のトーンは穏やかで爽やかで、ドロドロしたものがない。
このあたり、好みの問題と言ってしまえばそれまでなのだけれど、この国の忌みや穢れにまつわる風習が、そんなに爽やかであってたまるか、という思いは、引っかかりとして残った。
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