3.0
当事者になったとき
「犯罪を論じるときは、自らが被害者になる可能性だけではなく、加害者になる可能性も考えなければならない」と何かの本で読んだ。
私はその主張に完全に同意したわけではないが、その言葉は、ずっと私の中に引っかかっていた。
傍観者でも部外者でもなく、自らが当事者になったとき、私たちは不意に処刑台に立たされる。
処刑人を務めるのは、ときには法律であり、ときには世間であり、そしてときには、過去を含めた自分の価値観や倫理観でもある。
そんな追いつめられ方をした人間の苦しみを、弱さを、醜さを、愚かさを、描こうとした漫画ではないかと思った。
私たちは(一部の例外を除き)聖人君子ではないので、「あんなこと、絶対にするものか」と思っていたはずのことに、いつの間にか手を染めてしまうことがある。
例えば私にとって、それは喫煙だった。
この漫画の主人公にとって、それは不倫だった。
「絶対しない」と私たちは思う。
でもこの世に、本当の絶対はあまりない。
絶対にないと思いたい。
でもあなたの絶対は、本当に絶対か?
そんな具合に問いかけるような、なかなか意地の悪い漫画だと思う。
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