5.0
「あるがまま」の、その先に
「サイドA」と「サイドB」があるが、要するに「1巻」「2巻」なので、ご注意を。
自分らしく、とか、飾らずに、とか、あるがままで、とか、ありのままに、とか、何でもいいのだけれど、全部同じで、本当に苦しみ抜いている人間には、そんな言葉、何の役にも立たないと私は思う。
そして、自分として生きるということは、そんな二束三文のキャッチ・フレーズで何とかなるほど単純なものではないとも思う。
でも、そういうメッセージはとにかくキャッチーでリーズナブルだから、いとも容易く社会に溢れかえる。
そんな時代に、だ。
この漫画が放ったメッセージは、真逆だ、と私は思った。
さんざん「自分らしさ」を追い求めながら、この作品が辿り着いた境地というのは、「自分らしく生きるばかりが能じゃないぜ」という地点だったのではないか、と私は受け取った。
そして、誰かのために微笑みながら自分らしさを捨てられるような場所に行き着いたとき、逆説的ではあるけれど、そこに、また別の「自分らしさ」みたいなものが紡がれるのではないか、と思った。
そういう全て、この漫画を読まなければ、考えなかったことかもしれない。
出会えて、本当によかった。
- 11