5.0
コーヒー・ライフ・ゴーズ・オン
缶コーヒーを中心アイテムに据えた短編集。
素晴らしいと思った。
読み終えてしまうのがただただ惜しくて、最後の二話をしばらくとっておいた。
漫画で、どんな短編集が読みたいか、と言われたら、私は、こんなの、と答えるだろう。
私たちの日常を、人生の一場面を、まさしく「切り取った」漫画だと思った。
全然「泣かせにきている」タイプの漫画ではないのだけれど、その切り取り方があまりに正確で、また誠実で、そのことに多分、ちょっと涙ぐんだりした。
どのエピソードにも、明確な「オチ」と呼べるようなものがない。
この漫画は、勇気を持って、オチらしいオチを拒絶しているように思った。
全てのエピソードが、「終わり」ではなく、「続き」を感じさせる。
そこにあるのは、漫画として綺麗に片づけられた「おしまい」の様式ではなく、これからも続いてゆくしかない、誰かの、そして私たちの、人生の形なのだと思う。
ハッピーエンドもバッドエンドもなく、私たちの人生は続く。
多分明日も、同じ缶コーヒーを飲んだりしながら。
「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張れよ」
そんな「メッセージ」を、この漫画は一言も発していない。
そういう意味では、とても控えめで、寡黙な作品だ。
それなのに、読者の側には、その感情が残るのだ。
「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張るか」と。
まあ、私は、コーヒーが飲めないんだけれども。
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