5.0
妄想と、帰る場所
現代版「漂流教室」。
ただ、結末は決定的に違う。
このラストが、とても押見修造らしいと思った。
「惡の華」もそうだが、この作者は、すこぶる妄想に走りつつも、最後には日常に帰ることを受け入れるというか、日常というありふれた退屈を生き抜くことの価値や美しさを描いているように感じた。
私たちは、想像する。
人間は想像する生き物だという。
その度が過ぎると、「妄想」になる。
想像力は高く評価されることもあるが、妄想にあまりその機会はない。
妄想は、嘲笑や、軽蔑や、危険視の対象にすらなり得る。
でも、なぜだろう。
私たちが妄想するのは、なぜだろう。
この漫画を読んで、妄想は日常から逃れるためのものであると同時に、日常を生き延びるためのものでもあるのかな、と思った。
そんなことを感じたのは初めてで、私はこの漫画を忘れないだろうと思った。
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