5.0
悲しい行き止まり
三十代になってから初めて読んだ。
十代の頃に読みたかった気もするし、読まなくてよかった気もする。
陰鬱な純文学のようでありながら、例えば化け物の描写なんかは「漫画」にしか出来ないことをちゃんとやっていて、素晴らしい。
「僕たちがやりました」という漫画で、主人公のトビオは、「普通でいい」という価値観を持って生きる中で、その難しさを知っていった。
「ヒミズ」の住田君は、初めから知っていた。
「普通に生きる」ことが、自分にとって、どれほど難しいことなのかを。
「普通でいい」なんて呑気な「価値観」じゃなかった。
「どうか普通でいられますように」という悲しいくらいに切実な願いであり、希求だった。
それだけなのに。
ただ、普通に生きたかっただけなのに。
それだけのことがどうしても出来なかった絶望感と、寂寥感に、胸がつまる。
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